Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
是非学びたい気になるテーマについて学んでいきます。

紳士のためのエンターテイメント

妖気漂う女性ばかりではありません 「甲斐荘楠音(かいのしょう ただおと)の全貌 絵画、演劇、映画を越境する個性」

東京の美術館では初めての本格的な甲斐荘の回顧展が始まりました。大正から昭和にかけて活躍した日本画家、甲斐荘の代表的な絵画作品だけではなく、彼の才能は映画の世界へも広がり、考証家として手掛けた衣裳が数多く展示してあります。

戦前、画家として高い評価を受ける甲斐荘ですが、1940年ごろから映画業界に転身しました。衣裳・風俗考証家として日本の時代劇の黄金期を支えたのです。この展覧会には、東映京都撮影所に保管されていた甲斐荘が関わった衣裳の数々が展示されています。

時代劇のスター市川右太衛門が主人公・早乙女主水之介を演じる「旗本退屈男」は甲斐荘と共に作り上げました。「旗本退屈男」は1950~60年代の時代劇映画を代表する人気シリーズです。豪華絢爛な衣裳は、場面が変わるごとに替わると言われるほどで、他の人の衣裳予算すべてよりも多かったそうです。東映の重役だった右太衛門は、この衣装群だけは大切にとっておくようにと撮影所のスタッフに指示していたのだとか。

殺陣の達人として名高い右太衛門の衣裳ならではの工夫があり、肩と袖の間に三角形の布地がマチのように挟み込まれています。動かしやすく、激しさに耐えるためでもありました。

 

近年の研究結果で、甲斐荘が携わった映画は東映、松竹、大映合わせて236本あるということがわかりましたが、その中でも一番多く衣裳コーデイネートしたのが市川右太衛門でした。全部で64作あります。

また、溝口健二監督作品は12作あります。『雨月物語』の衣裳はアカデミー賞衣裳デザイン賞にノミネートされています。そういわれてみれば、映画『雨月物語』の世界観は、甲斐荘の妖しく恐ろしい世界とまさにピッタリではありませんか。

時代劇の映像も流れ、そのどれもがかっこよく、どれほど多くの才能がここに集まっていたかがしのばれます。

 

「甲斐荘楠音(かいのしょう ただおと)の全貌 絵画、演劇、映画を越境する個性」
開催会場:東京ステーションギャラリー
開催期間:2023年7月1日(土)〜8月27日(日) 会期中、展示替えをおこないます[前期7/1~7/30、後期8/1~8/27]
詳細はこちらのHPをご覧ください https://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/202307_kainosho.html

*2023年7月4日現在の情報です *記事・写真の無断転載を禁じます。

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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