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紳士のたしなみ

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紳士のためのエンターテイメント

心躍る「クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ」展

迎 春 今年もよろしくお願いします。

さて、新年、最初の記事は「クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ」展。東京都現代美術館で12月21日から始まりました。この記事を書いているいま思い出すだけでも、その世界に戻りたい。何度も行きたくなる展覧会です。

パリ装飾芸術美術館、ロンドン、ニューヨーク、上海、ドーハなど世界を巡回して、満を持して、ようやく日本にやってきました。とても大規模で見ごたえがあります。キュレーションはファッション歴史学者フローランス・ミュラー、セットデザインはOMA・NY事務所でパートナーを務める建築家重松象平、撮りおろし写真は高木由利子、日本庭園の藤をイメージした切り絵アーティスト柴田あゆみ、ほか多くの才能が集まりました。

この日本展のために設けられたコーナーで、ディオールと日本との関係も知ることができます。子供のころ住んでいた邸宅の一階に歌麿と北斎の浮世絵を模したパネルがあり、幼いころから日本の美に興味を持っていたと紹介されています。

そして、1953年の春夏オートクチュールコレクションには、桜の樹に鳥がとまったモチーフのプリントを使った「ジャルダンジャポネ」ドレスを創作。その翌年には龍村美術織物の生地を使った「ウタマロ」というアンサンブルを発表しています。そしてそのころ、欧米のブランドとして初めて日本に進出しました。1958年には美智子さまのウエディングドレスを3着デザインしています。

パリでブランドを立ち上げ最初のコレクションは1947年。「ニュールック」を発表し、世間を席巻しました。第二次世界大戦が終わってまだ2年、エレガントなシルエットが、当時の女性たちを夢中にさせました。

歴代のクリエイティブ・ディレクターの作品が並ぶコーナーでは、時代の変遷とともに、あふれる個性が見られます。ディオールが亡くなったのは、ブランドを立ち上げてわずか12年後のことです。その後を継いだのは、ディオールのもとで才能を発揮していた21歳のイヴ・サンローラン

サンローランがブランドを離れた後、デザイナーになったのはマルク・ボアン。28年間主任デザイナーとして活躍。

イタリアのアクセサリーデザイナーとして活躍していたジャン・フランコ・フェレは自分のブランドがありましたが、1989年にディオールの主任デザイナーに就任。

そして1995年までジバンシーのデザイナーだったジョン・ガリアーノは1996年から15年間、務めました。創造性にあふれる作品です。

その後、ジル・サンダーにいたラフ・シモンズが就任し、現在のマリア・グラツィア・キウリは、メゾンで初の女性クリエイティブ・ディレクターです。

「衣服には感情がある」と語るのは、写真家・高木由利子。映像では、撮影の様子と高木のインタビューが流れ、壁面には写真作品が並びます。そして圧巻なのは、この記事の冒頭にある写真「ディオールの夜会」。盛大なパーティにはえるゴージャスなドレスの数々は、どれを見てもため息が出ます。

ディオールはことのほか庭を愛していましたが、日本庭園のコーナーは、柴田あゆみの切り絵で表現されています。つい先日まで西武池袋百貨店で「かみがみの森」という展覧会が開かれていて、私は見てきたばかりです。すべて手切りで制作されたアートの中に、ドレスが配置されています。

ほかにも見どころは数々あり、伝統と革新で75年間を歩み続けたメゾンディオールの世界を堪能できます。

以前、記事に書いた映画『オートクチュール』映画「オートクチュール」 3月25日から(岩崎由美) | 紳士のためのエンターテイメント | 紳士のたしなみ | 男子専科 (danshi-senka.jp)や、主任デザイナーに抜擢されたラフ・シモンズの初仕事に密着したドキュメンタリー映画『ディオールと私』もあわせてみると、より世界が広がるでしょう。

クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ」展 東京都現代美術館 12月21日~5月28日 オンライン予約優先チケット(日時指定券)がありますので、詳細はこちらの展覧会ページをご覧ください。https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/Christian_Dior/

*2023年1月2日現在の情報です。*記事・写真の無断転載を禁じます。

 

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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