Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
是非学びたい気になるテーマについて学んでいきます。

紳士のためのエンターテイメント

東京国際映画祭クロージング作品 映画『ディア・エヴァン・ハンセン』

10月30日から始まる第34回東京国際映画祭。クロージング作品に選ばれたのは『ディア・エヴァン・ハンセン』。トニー賞6部門、グラミー賞、エミー賞を受賞した大ヒットミュージカルの舞台が映画化された。

主役のエヴァン・ハンセンを演じるのは、ブロードウェイ版初代エヴァン役を演じたベン・プラット。彼は6年間この役を演じ続け、身も心もエヴァンになりきった。繊細で傷つきやすく、殻にとじこもる高校生を巧みに演じ、さらに抜群の歌唱力を見せる。

©2021Universal Studios. All Rights Reserved.

楽曲を手掛けたのは『ラ・ラ・ランド』『グレイテスト・ショーマン』の名コンビ、ベンジ・バセックとジャスティン・ポール。これを聞いただけで期待感にあふれる。映画版のために、舞台で使われた曲が削除されたものもあれば、書き下ろされた新曲も2曲ある。人物像を彫り込んだり、変更したりもしている。

監督は『ワンダー 君は太陽』のスティーヴン・チョボスキー。俳優たちの圧倒的な歌唱力で観客を引き込んでいく。映画になったことで、人気の舞台を全世界の人が見られるようになった。

物語は・・・・・・・・・

友達もおらず、自分に自信が持てないエヴァン・ハンセンは、セラピストから治療の一環として自分宛ての手紙を書くように言われていた。

ある日、同級生の嫌われ者コナーにその手紙をとられてしまう。その後、コナーは自分で命を絶ち、ポケットにエヴァンが書いた手紙が入っていたことから、コナーの両親はエヴァンが唯一の友達だと思い込む。コナーの死を悲しむ家族を見て、エヴァンは、思いやりから思わず話を合わせてしまう。エヴァン同様孤独だったコナーとの架空の思い出は、いつしかSNSを通じて世界に広がり、同じように孤独な人たちに勇気を与えていく。エヴァンは、人気者になり皆から注目されるようになったが、真実を打ち明けるかどうか葛藤することになる。

・・・・・

ブロードウェイにもSNSが題材となる日がやって来た。SNSは拡散され、多くの人々の心を救っていく。と同時に一転、根拠のない悪口、誹謗中傷がはびこる。「善」に転べばこれほど影響力のあるものはないが、「悪」に転ぶとこれほど恐ろしいものもない。とはいえ、この作品には不変の物語が紡がれている。

©2021Universal Studios. All Rights Reserved.

孤独な心を抱えている人が、どれほど多いことか。コナーのように心荒ぶ人を救うにはどうしたらよいか。同じ寂しさを抱えながら、エヴァンはおびえながら生き、コナーは荒れている。認められること、見つけてもらえること、見ていてもらえることが人間にとっていかに必要か。高校生であっても大人であってもそれは一緒だ。けっして一人じゃない。それを感じることができれば、きっと元気が出る。一人じゃない。一人じゃないんだと。

誰もが殻に閉じこもらざるをえなくなったコロナ禍で、孤独を感じ、人とのつながりの大切さをさらに実感することになった。社会に孤独感が蔓延している。人を気にかけ、気にかけられているということをちゃんと相手が感じられるような共感力と思いやりを、果たして自分は持てているだろうか。

©2021Universal Studios. All Rights Reserved.

緊急事態宣言下でかかってくる「元気?」という一本の電話、「どうしてる?」といったLINE、「美味しいもの見つけたから食べて」といったプレゼントが届いたりすることが、どれほど心を満たしてくれるか。それがわかったらなおさらだ。彼らの孤独を自分事として感じることができる人間になりたい。

「突然歌い出すからミュージカルは苦手」という人も、こだわらずに観てほしい。歌唱力のパワーと、違和感ない歌詞が物語に没入させてくれるから。とくに、製作のマーク・プラット(主役を演じるベン・プラットの父親)は、現実味と信憑性に心を砕いたと述べている。

公式HP(https://deh-movie.jp/)で主役を演じたベン・プラットの素顔が見られるのでのぞいてみてください(笑)。

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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