Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
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紳士のためのエンターテイメント

列車旅でしか味わえない歓び 『令和阿房(あほう)列車で行こう』乾正人著 飛鳥新社刊 

政治部長でいらした産経新聞の乾正人(いぬいまさと)さん(政治部長、東京本社編集局長、論説委員長を経て、現在上席論説委員兼コラムニスト)。先日、国立劇場でばったり出会い、立ち話をしたら9月7日にご本を出版され、しかもそれが鉄道の旅の本?なんだかわけがわからなくなりました。

どうして旅?と伺うと、とても謙虚に「新聞に書いていたコラムがたまったから」とのたまった。というわけで、さっそく調べてみると、大ヒットコラムだそうで、ツアーを組んだり本になったりというご活躍ぶり。

読んでみたら、これが面白いのなんの。軽妙洒脱で、チャーミング豊富な知識と教養に裏打ちされ、人生を楽しんでいらっしゃる様子がよくわかるではありませんか。申し訳ありませんでした。政治の記事しかお書きにならないと勝手に思い込んでいた私が浅はかでした。もう一つ申し訳ありませんでした。産経新聞をとっていないのでコラムを知りませんでした。

この本は、内田百聞の紀行文『阿房列車』へのオマージュであり、小学生のころからラジオにかじりつくようにして聞いていた小沢昭一の名調子に捧げられています。乾さんが産経新聞に就職するときの面接で尊敬する人を聞かれ「内田百閒先生」と答えたと言いますから、そこから数えたとしても、かなりの年月憧れ続けていた思いを形にしたと言えるかもしれません。列車好きな内田百閒は、とにもかくにも列車に乗りたいと当時の一等車に乗って出かけ、その様子を書きつづりました。もちろん乾さんもグランクラスに乗っての大臣旅行羨ましいにもほどがある

さらに、百閒と同様、列車に乗るのが目的だからと、列車に揺られながら美味しいものを食べたり、飲んだりするけれど名所旧跡はほとんど巡りません。そういうのが、鉄道愛好家の旅なのかと初めて知った次第です。

私は特に鉄道好きなわけではありませんが、自動車の旅はいつも自分が運転手なので、景色は見られない、お酒は飲めない、居眠りできないと三重苦。そこから解放される列車の旅は夢のようです。

ところどころに、懐かしい昭和のギャグも登場するので、その世代の人は、言葉と同時に、当時を思い出して嬉しくて仕方がないはず。もちろん、さすがの辣腕記者歴史に触れ、現代の社会情勢も垣間見えます。JR北海道のすべての列車から車内販売がなくなってしまったことや、引退する列車の数々、ブルートレイン、夜行列車、食堂車、壊される記念碑、古きよきものはどんどん失われていくとユーモアたっぷりに書かれています。

とは言っても乾さん、駅弁を買ったり、地酒を飲んだり、朝からビールを飲んだりし放題。羨ましいじゃぁあ~りませんか(これ、昭和のギャグです)。

大人はこういう旅をしなくちゃね

旅は女、子供だけのモノじゃないぞ!」と声を荒げてしまいそうな私。といっても、私自身は女子旅が大好きなんですけどね。

『令和阿房列車で行こう』乾正人著 飛鳥出版刊 1200円+税

*2023年9月12日現在の情報です*記事・写真の無断転載を禁じます。

 

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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