Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
是非学びたい気になるテーマについて学んでいきます。

紳士のためのエンターテイメント

東京ステーションギャラリー「小早川秋聲 旅する画家の鎮魂歌」展で、父を想う

小早川秋聲代表作國之楯(くにのたて)」は、強烈に心に突き刺さる作品だ。戦地に何度もついた従軍画家の小早川は、目の前の兵士を見て何を思ったか。「戦争は国家として止むに止まれぬ事とは申せ、惨の惨たるもの之あり候」という言葉が残っている。顔にかけられた寄せ書きされた日の丸。お国のために死んでいく多くの軍人たち。彼はさらに浄土真宗の僧侶でもあったのだ。

小早川秋聲《國之楯》1944年 京都霊山護国神社(日南町美術館寄託)

靖国で会おう」といって散っていった兵士たちの心を思うと、職業軍人だった父を思い出さずにはいられない。子供の頃「戦争は悪いことだよね」と私が言った時、父は返事をしなかった。日本を守るために、父は命を懸けたのだ。そして、同胞たちと笑顔で「天皇陛下のために」「日本国を守るために」戦ったのだ。

父にとっては「悪い」などという、簡単な言葉でくくれるものではなかったのだろう。終戦後、南方の島に船で兵士たちを迎えに行く役目を担い、戦った人々の惨状を目の当たりにした父は、最期まで南方の島に足を向けようとしなかった。

父の魂は、いまでも靖国神社を漂っているように感じられる。靖国神社を歩くだけで、なぜか私は涙がこぼれるのだ。

小早川秋聲は、大正から昭和にかけて京都を中心に活躍した日本画家だ。お寺の住職の息子として生まれ、僧籍に入り、その後、画家になることを志した。展覧会で入選を重ね画技を磨き、日本各地、世界を広く旅した。やがて従軍画家となって戦地に赴く。

美しい作品も多い。

小早川秋聲《愷陣》1930年 個人蔵

第11回帝展に出品したこの作品は、戦火を潜り抜けてきた軍馬を花で飾りねぎらったという漢詩から想を得た作品。この作品から帝展の推薦、永久無鑑査となったという。

百余点の作品が見られる大規模回顧展、お見逃しなく。

「小早川秋聲 旅する画家の鎮魂歌」~2021年11月28日まで 日時指定事前購入制 東京ステーションギャラリー HP:https://www.ejrcf.or.jp/gallery/index.asp

*2021年11月10日現在の情報です *写真・記事の無断転載を禁じます

 

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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