Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
是非学びたい気になるテーマについて学んでいきます。

紳士のためのエンターテイメント

東京藝術大学大学美術館 特別展「日本美術をひも解く―皇室、美の玉手箱」後期展示は9月25日まで。

8月に始まったこの展覧会も後期展示に変わり、伊藤若冲の国宝《動植綵絵》10幅が登場しています。

宮内庁三の丸尚蔵館は、皇室に代々伝わる約9800点もの美術品類を収蔵し、日本の宝を大切に守っています。このたび、その数々の名品と、東京藝術大学のコレクションをあわせて82件が展示されています。

何と言っても若冲人気が高く、かなり人が入っていました。後半になるにしたがって混んできますので、なるべく早目のお出かけをお勧めします。私は、前回の若冲展のときにもじっくり観ましたが、そうは言っても何度でも観たい。さらに、前期展示の酒井抱一の《花鳥十二ヶ月図》(8月28日で展示終了)も観たかったですね。

入り口入ってすぐの《菊蒔絵螺鈿棚》は通期展示です。明治天皇から東京美術学校(現 東京藝術大学)にご依頼があり制作されました。デザインは学内でコンペを行い、当時学生で後に教授になる六角紫水が図案に2年かけ、蒔絵は川之邊一朝たちが、金具は海野勝珉が手がけました。金粉は佐渡の御料金山のもので、螺鈿は沖縄の夜光貝を用いています。できあがるまでに合計11年かかりました。

東京藝術大学の前身である東京美術学校で岡倉天心が講義をした時の『日本美術史』講義ノートは、その研究価値はもちろんのこと、何と美しいのでしょう。講義録を筆記したもので、岡倉天心の言葉が詰まっています。「自分たちがやらなくてはいけないのは、美術品の保護と新しいものを作ること。未来の美術を作るためには、古くからの歴史を勉強して新しいものを作り出す必要がある」といった珠玉の言葉が並び、日本美術史が体系的にまとめられています。じっくり読んでみたいものです。

今回私が惹かれたのは、蒔絵のほどこされた硯箱や文台などの工芸品。また、彫金師の海野勝珉が金属を自在に操って作った《太平楽置物》は、1900年のパリ万博に出品されたものです。舞楽を踊る甲冑姿の舞人は、当時の日本の彫金の最高傑作です。

さらに金属工芸技術の高さに驚嘆します。質感を金属で表現することにこだわったということですが、流れるひだや甲冑の硬さが感じられ、色金を組み合わせて色彩が表現されています。多彩な金工技法を併用して、最高の技術でつくりあげていったのでしょう。

同じくパリ万博に出された並河靖之の《七宝四季花鳥図花瓶》は、焼き物なのに絵画のようです。どうして、七宝でこのようなことができるのでしょうか。

そのほかにも国宝の《蒙古襲来絵詞》(通期展示<9月6日からは後巻を展示>)や、谷文晁、円山応挙の作品など、見ごたえのあるものばかり。あぁ、前期展示も行きたかったなぁ。

 

特別展「日本美術をひも解く―皇室、美の玉手箱」

2022年8月6日(土)~9月25日(日)

9月の金・土曜日は午後7時30分まで開館(入館は午後7時まで)

東京藝術大学大学美術館 HP:https://tsumugu.yomiuri.co.jp/tamatebako2022/

 

*2022年9月12日現在の情報です*記事・写真の無断転載を禁じます

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

https://cross-over.sakura.ne.jp/

ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

おすすめのたしなみ