Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
是非学びたい気になるテーマについて学んでいきます。

紳士のためのエンターテイメント

ダークファンタジー・ロック・オペラ 映画『アネット』

ダークファンタジーと聞いてはいたけれど、ここまで奇想天外で、唯一無二の作品は見たことがない。独自の世界観はすべてを超える。

映画「アネット」は、第74回カンヌ国際映画祭のオープニングを飾り、監督賞を受賞している。監督は完璧主義で知られる『ポンヌフの恋人』のレオス・カラックス。兄弟バンド、スパークスの書いたオリジナルストーリーを原案・音楽として、せりふはほとんどが歌である。そこに違和感を感じないのは全体がファンタジーだからか。スパークスの音楽がいいからか。それとも、私がオペラに慣れているからであろうか。

© 2020 CG Cinéma International

主演、製作はアダム・ドライバー。先日公開された「ハウス・オブ・グッチ」のグッチ役で、育ちのいい、世間知らずの御曹司の役だったのを見たばかりだ。今回は、挑発的な人気スタンダップコメディアン。その妻役にフランスの女優マリオン・コティヤール。『エディット・ピアフ~愛の賛歌』のエディット・ピアフ役でアカデミー賞主演女優賞を受賞している実力派である。

歌は、通常だとスタジオで収録するものだが、これは撮影現場でライブ歌っている。アダム・ドライバーは、ジュリアード音楽院で演劇を学んでいるが、音楽のレッスンも受けたのだろうか。コティヤールのオペラシーンのソプラノの歌声は、ソプラノ歌手カトリーヌ・トロットマンの歌声が重ねられている。

ソプラノ歌手アン(マリオン・コティヤール)と、スタンダップコメディアンヘンリー(アダム・ドライバー)は、愛し合い、結婚し、女の子アネット(人形)が誕生する。ヘンリーは嫉妬と猜疑心で徐々に理性を失っていく・・・。

© 2020 CG Cinéma International

何と言っても監督レオス・カラックスの才能に驚愕する。

約20年の間に長編6作と寡作だが、独創的で、どれひとつとして同じ空気感のものはなく、今回は初の英語映画でしかもミュージカルである。毎回、作風が変わり、しかも感覚的で、シニカルで悪夢のおとぎの世界にいるようだ。彼の世界を具現化する撮影、美術、音響などのチームがどれほど彼を理解しているかがわかる。スタジオ内で作り出された特殊なセットで撮影された場面も少なくなく、3DやCGなどは使わない。

関係性を保ちたいのに破壊してしまう衝動というのは、誰の心の中にも潜んでいるのであろうか。恐ろしく、ブラックなのだが、惹きつけられ、また観たくなるという、麻薬のような作品である。

映画『アネット』https://annette-film.com/ 4月1日(金)ユーロスペースほか全国ロードショー

*2022年4月1日現在の情報です*記事・写真の無断転載を禁じます。

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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