Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
是非学びたい気になるテーマについて学んでいきます。

紳士のためのエンターテイメント

国立劇場5月文楽公演『夏祭浪花鑑』(5月11日~30日まで)

歌舞伎の演目としてもよく知られる『夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)』。コクーン歌舞伎や中村座でも、たびたび上演され、海外でも人気の演目です。江戸時代の大阪を舞台に、たくさんの登場人物が、乱れ乱れて凄惨な殺戮の場面へとなだれこみます。そこには、義理人情があり、男気があり、体面があり、どうしようもない状況に追い詰められていく様が描かれます。

物語の主人公、団七九郎兵衛は義侠心に熱い男。恩ある主人の子息、磯之丞を命に代えても守ると誓っています。団七は、磯之丞が、恋人である傾城・琴浦との仲を引き裂かれようとしているのを知り、助けようとするのですが、金に強欲な義理の父、義平次は金儲けのチャンスととらえます。夏祭りの夜、義平次と団七の2人の間に何が起こるのか・・・。

住吉鳥居前の段 提供:国立劇場 撮影:二階堂健

見どころは「長町裏の段」。通称「泥場」と言われています。

高津神社の夏祭り宵宮の日に、団七の義父、義平次が、磯之丞の恋仲の琴浦を、横恋慕する男に売り渡そうと連れ去ります。それに気づいた団七は、義平次に大金を渡すと言って、琴浦を帰させます。ところが団七は大金など持っていません。騙されたことに気づいた義平次は、団七をなじり、さげすみ、殺せ殺せと挑発します。なだめようとするのですが、誤ってけがをさせてしまうと、義平次は「人殺し、人殺し」と騒ぎ立てます。団七は覚悟を決め、義父を殺め、池に捨て、祭囃子の神輿の人波に紛れて逃げていきます。

長町裏の段 (左)団七九郎兵衛:桐竹勘十郎 (右)三河屋義平次:吉田和生 提供:国立劇場 撮影:二階堂健

夏祭のだんじり囃子や、威勢のいい掛け声、魚売りの売り声、大阪の町の活気が伝わってきます。その明るさと裏腹の修羅場です。桐竹勘十郎がつかう団七人形は大きく、全身に彫りものが施されています。吉田和生のつかう義平次との戦いは息をもつかせず、目が離せません。人間国宝の2人が演じます。

さらに、団七の竹本織太夫、義平次の豊竹藤太夫の義太夫の迫真のかけあいが、会場中の人をその場に連れて行き、目の前で見せているような緊迫感を生みます。織太夫さんへのインタビューで「竹本座の黄金期の演目。ぜひ見てほしい」というコメントを頂いた場面です。

前回の『女殺油地獄』にしても、今回にしても、殺しの場の凄惨さは、人間の演技を超えるすさまじさが、舞台の上で渦巻きます。

 

次の公演は、9月。通し狂言『菅原伝授手習鑑』の後半と、『曽根崎心中』です。

*2023年5月27日現在の情報です。*記事・写真の無断転載を禁じます。

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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