Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

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「生誕120年 棟方志功展 メイキング・オブ・ムナカタ」東京国立近代美術館で開催中

世界のムナカタ」の人生をたどり、人に愛され愛したムナカタのエネルギーが感じられる展覧会です。「生誕120年 棟方志功展 メイキング・オブ・ムナカタ」は、油絵から始まり、版画はもちろんのこと、本の装丁や挿絵、包装紙などのデザインにいたるまで展示されています。

正面の屏風は《二菩薩釈迦十大弟子》1939年 東京国立近代美術館蔵

青森で生まれ、18歳でゴッホの絵と出合い、「自分はゴッホになる」と油彩画家の道を歩み始めました。帝展入選後、上京し、次第に版画へと活動を移します。1928-30年に制作された《星座の花嫁》は、版画家川上澄夫の作品に感動して制作されたもので、このころから次第に自然を模様のように表現し、モチーフを平面上に配置した、独自の世界がつくりあげられています。

1936年民藝運動と出会いました。《大和し美し》(やまとしうるわし)を第11回国画会展に搬入した時のことです。《大和し美し》は、古事記のヤマトタケルの一代記を詠った佐藤英一の長編詩を版画化したもので、絵巻形式でサイズがあるため、決まりのサイズ以上の超過分が陳列拒否になりかけました。その時に、偶然通りかかった工芸部審査員の濱田庄司と柳宗悦に見出され、展示することになりました。棟方志功の作品の魅力に惹きつけられた柳によって、半年後に開館する日本民藝館の収蔵品として買い上げられることになります。

《大和し美わし》1936年 日本民藝館蔵

その後、民藝の同人を中心とした後援会が発足し、大きな転機をもたらすことになります。摺りに耐える強度と絵具のにじみが際立つ薄さを併せ持つ手すき和紙の提供を受けたり、仏教の経典や能についての講義を受けたり、素材、技法、主題、表具など、すべてに渡って民藝的な要素が内包されていきました。また、このころ文学者たちとの交流も盛んで、装飾や挿絵などの本の仕事も多く手がけています。

1945年の終戦間際、富山県福光町の光徳寺の住職に疎開することをすすめられ、疎開します。住職とは河井寛次郎を通じて知り合いました。版木が思うように手に入らず、書や襖絵を筆で描きました。

《慈潤》1945年 日本民藝館蔵

光徳寺の襖絵は松の大樹。裏側はポップでユーモラスな稲電、牡丹、芍薬。裏側は会場でご覧ください。福光で過ごした6年半も充実したものだったようです。

《華厳松》1944年 躅飛山光徳寺

 

1951年に東京に戻ってからは戦後の出版ブームで文学者たちと協働しました。谷崎潤一郎の『鍵』に挿絵を提供し、それが大評判となりました。1952年から数々の国際展覧会で賞を受賞し、56年にはヴェネチア・ビエンナーレで国際版画大賞を受賞。世界に名前をとどろかせました。

アメリカ、ヨーロッパの渡航から戻った彼を待ち受けていたのは、1960年代の公共建築のラッシュです。1960年の《鷺畷(さぎなわて)の柵》は、青森県の知事室に飾られ、1961年に竣工した青森県庁の正面入り口を飾ったのは《花矢の柵》。

大きな額は《鷺畷の柵》1960年 青森県立美術館蔵 

《花矢の柵》1961年 青森県立美術館蔵

棟方志功は、生涯にわたって友人に恵まれました。彼の周りには常に人が集まり、笑顔が溢れ、そこに多くの出会いがあり、刺激を受けた人生でした。彼は「板の、木のもっている生命と合体して自分の思いを発揮する」と言い「身体ごとぶつけていくしかない」と語っています。まさに、神からの啓示をそこに転写しているような、大きな温かさの中に燃え上がるような魂が感じられます。

また、音声ガイド(650円税込)に阿佐ヶ谷姉妹が出演していますよ。ほっこり(笑)。

生誕120年 棟方志功展 メイキング・オブ・ムナカタ」2023年10月6日~12月3日(会期中、一部展示替えあり)9時半~17時(金土は20時まで)入館は閉館の30分前まで。休館は月曜日 東京国立近代美術館1F企画展ギャラリー 公式サイト:https://www.momat.go.jp/exhibitions/553

*2023年10月10日現在情報です*記事・写真の無断転載を禁じます。

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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