Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

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「ブランクーシ 本質を象(かたど)る」展から、真の意味に迫る

明るい陽射しが差し込む東京・京橋のアーティゾン美術館で、シンプルで研ぎ澄まされ、本質を訴えかけてくるブランクーシの作品群に身をゆだねたい。彫刻家ブランクーシの展覧会「ブランクーシ 本質を象(かたどる)」がアーティゾン美術館で開催中です。彫刻作品23点に加えて、絵画、素描、写真や映像など合計約90点を見ることができる日本初の展覧会となっています。

今回企画したアーティゾン美術館の島本英明学芸員は、「余計な注釈を入れず、そのまま感じていただきたい」と語ります。

《接吻》1907-10年 石橋財団アーティゾン美術館蔵

20世紀彫刻の先駆者と言われたブランクーシは、ピカソの5歳年上。ルーマニアからパリに出て、才能が認められてロダンのアトリエで下彫り工として働いていましたが、1か月ほどで辞めてしまいます。彫刻世界の王様のような存在だったロダンの影響力から逃れるためで「大樹の下では何も育たない」と語っています。ロダンの工房は分業体制でドラマチックな人物像を作り出していましたが、ブランクーシは独自の道を歩み始めました。

ブランクーシは、石や木の塊からフォルムを掘り出す「直彫り」の技法を始めます。素材と向き合い、フォルムを追求するそれまでになかったスタイルです。その頃誕生した最初の作品の一つが、私たちになじみのある石橋財団アーティゾン美術館蔵の「接吻」です。これは石の作品をもとに石膏で創作されたもの。素朴でシンプルでありながら、腕を回して抱き合う2人から愛情があふれ出しています。

代表作の一つ、ころんとした頭部「眠れるミューズ」の可愛らしさは、頬をなでたいようです。研ぎ澄まされた形の頭部がそっと置かれています。大理石で制作され、その後、石膏やブロンズで数々作られています。穏やかに眠っている姿だとみてとれます。

《眠れるミューズ》1910-11年頃 大阪中之島美術館蔵 展示は5月12日まで

空間の鳥」と言う作品は、素材や形、サイズを変えながら取り組んでいます。流線形のものが立ち上がり、純粋だけど美しい姿は心を打ちます。ブランクーシは語ります「単純さとは美術における目標ではない。対象の真の意味に迫ろうとすることで単純さに到達するのである」。

《空間の鳥》1926年(1982年鋳造)ブロンズ、円筒形の台座は大理石、十字形台座は石灰岩 横浜美術館蔵 ジグザク形台座は石灰岩(こちらは展示用のレプリカ)

モンパルナスのアトリエで独自に創作に取り組んだブランクーシ。そこは天窓から自然光が取り込まれ、あらゆるものが白に統一されたスペースに作品が飾られ、売らずに手を加え続けていました。人は、そのアトリエを訪れたためフランスでは個展が開かれず、存命中の大きな展覧会はアメリカでのみ開催されていました。

心を開放し、本質に触れてみたいと思います。

 

アーティゾン美術館
「ブランクーシ 本質を象(かたど)る」2024年3月30日(土)〜7月7日(日) HPはコチラ

*2024年5月4日現在の情報です*記事・写真の無断転載を禁じます*写真はマスコミ向け内覧会で撮影したものです

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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