Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
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新国立劇場で、菊五郎の「初春歌舞伎公演」を観る

初台の新国立劇場で、国立劇場が主催する初春歌舞伎が上演されています。演目は、17年ぶりの『鏡山旧錦絵(かがみやま こきょうのにしきえ)』の通し狂言。登場するのは、八代目尾上菊五郎に、NHK大河ドラマで一気に知名度があがった坂東彌十郎といった人気の役者たち。私の伺った1月6日(火)は、新国立劇場の中劇場は満席でした。初春恒例、舞台上からの手ぬぐいまきもあるので、気分は上々です。

さてこの『鏡山旧錦絵』は、奥御殿の女ばかりの世界を描いています。鎌倉時代、源頼朝の娘・大姫に仕える中老の尾上(おのえ 中村時蔵)は、大姫から宝の尊像を預かるように言われますが、お局で位が上の岩藤(いわふじ 坂東彌十郎)はおもしろくありません。尾上は町人の出身で、剣術のたしなみがないことを知っている岩藤は、意地悪をして「盗人が来たときに、町人出身の尾上では守れまい」と、言い放ちます。困った尾上を、剣術の心得がある武家出身の召使・初(はつ 尾上菊五郎)が機転を利かせて自分が変わりに竹刀で戦い、岩藤を打ち負かします。

 

許せないのが岩藤。いつか仕返しをしようともくろみます。次のタイミングは、上使の前で香木蘭奢待(らんじゃたい)の箱を開けたときです。尾上が預かる貴重な蘭奢待が入っておらず、中には岩藤の草履が片方入っているだけです。それだけを見ると、いかにも岩藤が犯人のように見受けられますが、そこに「もう片方の草履を尾上の部屋で見つけた」と知らせがやってきます。満座の中で、尾上は泥棒よばわりされ、草履で打ち据えられるという屈辱を受けます。恥をかかされた尾上は、もう自害しかないと腹を決めますが、それに感づいたお初は何とか止めようとします。

まるで、忠臣蔵のようではありませんか。それがこの演目が女忠臣蔵と呼ばれる所以です。お初は、主君の汚名を晴らし仇を討とうと、憎き岩藤のもとへと走るのでした。

八代目菊五郎のお初が、初々しくて健気で応援したくなります。20年前に演じたことがあるそうで、久しぶりのお初です。そして、ひどい恥をかかされる尾上役の中村時蔵は初役。父親である中村万壽が六代目中村歌右衛門に習ったものを教わったそう。歌右衛門を彷彿とさせる女方です。さらに芸を深めていっていただきたい。

同じく初役の坂東彌十郎の憎まれ役が実にはまっています。舞台にのっしのっしと登場した時には、思わず笑ってしまいましたが、通常、立役(男役)が演じる役なので、長身の彌十郎のはまり役になるといいですね。細部にこだわり、繊細に丁寧に憎まれ役としての空気感を存分につくってほしい。『裏表先代萩』の八汐(やしお)にしても、憎ければ憎いほど舞台が決まるというもの。最後に、源頼朝役で7代目菊五郎も登場。元気なお姿にほっとしました。

演目が終わってからのカーテンコールで、舞台から初春を祝い、「国の宝である伝統芸能を守ろう」と、声があげられました。

そう、一つだけ気になったことが。歌舞伎の劇場ではないため、定式幕が思うようにならないのか閉める寸前に、毎回がたがた動いていたのが気になって気になって。早く、国立劇場、つくりましょうよ。借りるホールは使い勝手が悪いのでは。

2026年1月5日(月)~2026年1月27日(火) 午後1時開演(午後4時35分終演予定)
休演日 9日(金)・22日(木) HPはコチラ

*2026年1月8日現在の情報です*写真提供:国立劇場 撮影:田口真佐美 *記事・写真の無断転載を禁じます

 

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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