Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
是非学びたい気になるテーマについて学んでいきます。

紳士のためのエンターテイメント

映画『ブラックバード 家族が家族であるうちに』6月11日公開

美しい自然の中で繰り広げられる、重い、重い作品です。

© 2019 BLACK BIRD PRODUCTIONS, INC

主人公リリー(スーザン・サランドン)は、身体の筋肉が動かなくなる病気を患い、寝たきりになる日がもう目前まで迫っている。海辺の邸宅に医師の夫ポール(サム・ニール)と暮らす仲の良い夫婦の朝から物語は静かに始まる。ある週末、家族が集められた。長女ジェニファー(ケイト・ウィンスレット)とその家族、次女のアンナ(ミア・ワシコウスカ)とパートナー、そして昔からの大親友リリー(リンゼイ・ダンカン)。彼らにはすでに自分の意志を話し、リリーは安楽死という最後の日を迎えようとしていた。

強く正しくあれと育てられてきた長女は、生真面目で、正しさのあまり周りを息苦しくさせる。次女は母親の思い通りにはなれないと、寂しさのあまり母の決断を覆そうとする。最後の日を前に、家族で普段通りに楽しく過ごそうと食卓を囲むのだが、それぞれが抱える心の中が吐露されていく。

人は誰もが死ぬ。そして一人ひとり懸命に生きている。

以前NHKスペシャルの「彼女は安楽死を選んだ」というドキュメンタリー番組を見た。難病を患っている日本人女性がスイスで安楽死を選ぶというもので、あまりにショッキングな内容に衝撃を受けた。自分で死を選べるのか。選んでもいいのか。周りが納得できるのか。愛する人たちはどう心の整理をつけるのか。

© 2019 BLACK BIRD PRODUCTIONS, INC

自発呼吸もできず管につながれた長い時間がやってくるのがわかっていて、それを拒否するという本人の決断を家族は止めることができるのだろうか。もし自分だったら、何を考えるだろう。家族が辛い時間を耐えなくてはならないことがわかったときに、果たしてそれを止めることができるだろうか。自分は何を考えるか。様々な気持ちが去来する。自分がその立場だったらどうするか。それを選択することができるのか。そういう自分を家族に受け入れてもらう勇気があるか。あるいは、もし自分の家族がそう決意したときに、受け入れることができるのか。

© 2019 BLACK BIRD PRODUCTIONS, INC

以前、臨終の床にいる父に「もういいだろう」と言われた時のことを思い出した。よほど身体が辛いのだなと思ったのだが、けっして「もういいよ」とは言えなかった。どんな状態でも生きていてほしいと思うのは、家族のわがままなのだろうか。本人の気持ちを尊重すべきなのだろうか。いまだに考え続けている。

時折映しだされる雄大で美しい景色が、「生」を受けたことに対する喜びをきらめかせる。

リリーを演じるスーザン・サランドンは『デッドマン・ウォーキング』でアカデミー賞主演女優賞を受賞し、長女役のケイト・ウィンスレットは『愛を読む人』でアカデミー賞主演女優賞を受賞した2大女優の共演だ。

6/11(金)TOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー HPはコチラ

*記事・写真の無断転載を禁じます。*2021年6月5日現在の情報です。

 

 

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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