Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

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紳士のためのエンターテイメント

映画「ある画家の数奇な運命」で知る、東ドイツ

この映画を観て、俄然、ゲルハルト・リヒターという現代アーティストと、東ドイツに興味がわいた。

「善き人のためのソナタ」でアカデミー賞外国語映画賞を受賞したフロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督の最新作、現代美術の巨匠ゲルハルト・リヒターをモデルに描いた「ある画家の数奇な運命」である。ドイツ激動の時代に数奇な運命を生きた若き芸術家の物語。第91アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされている。

愛の不時着」で北朝鮮の文化を知り、この映画で初めて当時の東ドイツを知ることができた。ベルリンの壁ができる前のことである。

モデルとなったゲルハルト・リヒターは、現代美術界で欠くことができない存在で、オークションにかかる作品はときに数十億円を下らない。ドイツ最高峰の画家の作品は、実は日本にもある。瀬戸内海の豊島に行くと「ゲルハルト・リヒター14枚のガラス/豊島」に出会えるので、ぜひ一度見てみたい。

物語は、ナチ政権下のドイツ。自由で奔放な叔母に可愛がられ、絵の才能を見出される少年クルト。叔母はいつも「真実はすべて美しい」と言い続けていた。ある日、精神のバランスを崩した叔母は、強制的に入院させられ、劣性遺伝子は排除するという政策の下、安楽死させられる。クルトは、戦後、美術学校に進学し、元ナチ高官の娘エリーと恋に落ちる。しかしその父親が叔母を殺した張本人だということは誰も気付かない。ロシア政権下の社会主義リアリズムの絵しか認められない世界から、クルトはベルリンの壁が築かれる直前に西ドイツへ逃げ出す。そこで、クルトの才能は花開くのだった・・。

映像が、どこを切り取っても絵画のように美しい。また、俳優たちが美貌であるばかりか、美しい裸体はいつまでも見ていたい。さらにサスペンスの様相もあり、息をつかせない。

東ドイツの優性思想と、ロシアに統治される共産主義。そうした中で、自分の居場所が見つけられないアーティスト、クルト。西側に出ると今度は、創作のための苦しみを味わうことになる。クルトは、苦しみぬいたあげく、写真を絵でキャンパスにうつしとったのちにわざとぼかして焦点がぶれたように見せていく。そこに不安やあせり、焦燥感などが漂っている独自の画風を生み出していくのだ。

リヒターは監督の映画化の申し出に、1か月の取材を許し、条件として何が真実で何が真実でないかは絶対に明らかにしないことを課した。

リヒターの作品で「エマ(階段を下りる裸婦)」1966や、「女性と子供」1965など、元になった作品ではと思われるものが登場するが、何が真実かを考えるのはやめにしておこう。

 

映画「ある画家の数奇な運命」上映時間、189分。10/2(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー 公式HPneverlookaway-movie.jp

 

 

 

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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