Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
是非学びたい気になるテーマについて学んでいきます。

紳士のためのエンターテイメント

ドキュメンタリー映画「新章パリ・オペラ座 ~特別なシーズンのはじまり」

コロナ禍、世界三大劇場の一つパリ・オペラ座もほかの劇場と同様閉鎖していました。その間、パリ・オペラ座バレエ団のダンサーたちは何を考え、どう過ごしていたのでしょうか。

「一日休めば自分が気づき、2日休めば教師が気づく。3日休めば観客が気づく」と話すダンサーたち。それまでは一日6時間~10時間踊っていたのに、突然ぱたりと踊れなくなったのです。

2022年3月から3か月の自宅待機の間、いくら自主練習をしていたとはいえ大きな動きができるわけではありません。久しぶりのレッスンで、おそるおそる跳ぶ彼ら。

登場するのは、華やかな舞台姿を普段見ている、マチュー・ガニオ、ユーゴ・マルシャン、ジェルマン・ルーヴェ、アマンディーヌ・アルビッソン、そして芸術監督のオレリー・デユポンたちです。彼らの不安そうな顔が、胸に迫ります。

© Ex Nihilo – Opéra national de Paris – Fondation Rudolf Noureev – 2021

休み明けの踊り出し、ダンサーたちは自分の身体が思い通りに動くのか、ちゃんとリフトができるのか、困惑が隠せません。喜び以上に、体力も取り戻さなくてはならない。その様子を見ていると、日頃どれほど過酷なレッスンをしているのかがわかります。

バレエ団の契約は42歳までと決まっています。「ダンサーのキャリアは短い。長期間踊れないなんて、ピークが台無しになってしまう」と焦る気持ちが切々と伝わってきます。「踊りたい」「もっと踊りたい」。彼らにとって踊ることは、アイデンティティであり、自己表現なのです。そして、彼らは、舞台で踊れなくなって初めて自分にとってどれほどダンスが大切なものだったかに気づきます。

再開が決まった、最初の演目は、ルドルフ・ヌレエフ振付の「ラ・バヤデール」。難しい作品を作り上げていくのですが、再び閉館に追い込まれ、無観客配信となります。しかし、そうした状況下でも、最高位のエトワールに任命されるダンサーがいて、それが、仲間たちの喜びとなり、希望となり励みになりました。

© Ex Nihilo – Opéra national de Paris – Fondation Rudolf Noureev – 2021

観客がいることがいかに幸せなことか。万雷の拍手を受ける喜びは、代えがたいものでしょう。劇場と一体になって、観客の「波動やエネルギーに踊りが共鳴して、舞台に魔法がかけられる」と語ります。

閉鎖してほぼ1年半後、ようやく観客を入れての再開となった演目は、「ロミオとジュリエット」。プロコフィエフの有名な旋律が生の舞台の感動を掻き立てます。芸術監督のオレリー・デユポンの「私たちは決して止まってはいない」という決意が感じられました。

© Ex Nihilo – Opéra national de Paris – Fondation Rudolf Noureev – 2021

監督は、音楽やダンスの数々のドキュメンタリー映画を作ってきた、プリシラ・ピザート。世界最古で、最高峰のバレエの殿堂、パリ・オペラ座バレエ団への愛にあふれています。

秋には、日本のアーティゾン美術館で「パリ・オペラ座 響き合う芸術の殿堂」展も開かれますので、そちらもお楽しみに。

日本の新国立劇場バレエ団の吉田都芸術監督は、就任直後からコロナ禍でした。「ダンサーたちのモチベーションを落とさないために苦心した」と以前、記者会見で語っていましたが、生の舞台を作り上げていく方たちの情熱を改めて感じました。

2022年8月19日(金)Bunkamuraル・シネマほか全国順次公開   HP:https://gaga.ne.jp/parisopera_unusual/

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

https://cross-over.sakura.ne.jp/

ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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