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紳士のたしなみ

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2026年2月 国立劇場文楽「絵本太功記」第一部(2026年2月11日~23日)

人形浄瑠璃文楽で、およそ20年ぶりの上演となる通し狂言「絵本太功記」。明智光秀が謀反を起こす13日間を、1日1段で描く戦国物語です。明智光秀(作中:武智光秀)が、織田信長(作中:尾田春長)を本能寺で討ち、羽柴秀吉(作中:真柴久吉)に討伐されるまでの13日間を全13段で描きます。

とくに、有名なのが「尼ヶ崎の段」で、光秀一族が破滅へと向かう10日目で、歌舞伎でもよく上演されるところ。山場だけ見るのもいいですが、発端から見ると、なぜそうなったのか、どうしてそうせねばならなったのか。登場人物たちの苦悩がわかります。

第一部、まずは発端となる「安土城中の段」からスタートです。尾田春長の城、安土城に、日蓮宗「妙国寺」から大蘇鉄が移植されていましたが、夜になると「寺へ返せ」という声が聞こえ、地面が揺るぎます。春長は「法華経の法力に違いない」と、捕らえていた日蓮宗の僧を殺そうとします。何ものをも恐れない所業をいさめる光秀。これが春長を怒らせ、みんなの面前で頭を打ち据え、光秀に恥をかかせます。

二条城配膳の段 (左)武智光秀:吉田玉男 (右)森の蘭丸:吉田玉翔

1日目「二条城配膳の段」。尾田春長の功労を賞し、嫡子、春忠が位を授けられることになり、御所で光秀と森の蘭丸が饗応を任されています。配膳の時間になり、光秀の息子、十次郎が膳を運んでくると蘭丸は、光秀の独断でなされているとなじります。光秀が蘭丸に詰め寄ると、そこに春長登場。光秀をつかんで、蘭丸に打ち据えるように命じます。鉄扇で眉間を割られて辱めを受ける光秀。しかし、そこでも光秀は、春長をいさめます。ところが春長はさらに怒りを増幅させ、光秀親子を追い出してしまいます。

上演はされませんが、このあと光秀は領地が没収され、戦に向かうように出陣命令が下されます。そこでついに光秀は、謀反の決意を固めます。

2日目「本能寺の段」。春長の宿所、京都の本能寺では酒宴が行われ、蘭丸も人目を忍ぶ恋仲の腰元と共に奥に入っていってしまいます。深夜、光秀の謀反に気づきましたがなすすべもありません。春長は、敵に切り込んでいく阿野の局(信長の愛人・濃姫がモデル)に、久吉に「無念の思いを晴らせ」と伝えるように命じます。

 

油断大敵だと周りから言われているにもかかわらず、無用の心配だと退けるのが不思議です。猜疑心が強く、冷酷な割にはどうしてここだけ、ゆるんでしまったのか。そして、奥から出てくる蘭丸の色気が漂い、奮戦する阿野の局の勇ましさが際立ちます。

その頃、春長の命により進められていた、中国平定のための備中高松城の戦いで、高松城に立てこもる清水長左衛門宗治の動静を描く3日の段、4日の段があり、5日目「局注進(つぼねちゅうしん)の段」。

局注進の段 (左)阿野の局:吉田一輔 (右)真柴久吉:桐竹勘十郎

久吉の陣取る館を訪れる長左衛門の妹は、恋仲の山三郎と共に久吉を討ち取る計画でしたが、先に入り込んでいた山三郎がとても討ち取ることなどできない名大将だと討つ気をなくしています。そこに登場する、久吉。山三郎は久吉からの使者として高松城に向かうことに。

そこに駆け込んでくるのが、深手を負った阿野の局。本能寺の変を告げ息絶えます。久吉は、周りの動揺を防ぐために、曲者を切り殺したかのように首を打ち落とします。

舞台が動き「長左衛門切腹の段」。これを立ち聞きしていた、長左衛門の妹と共にやってきた坊主が、郡家(毛利家)に知らせようとするとそれに気づいた久吉に呼び止められ、袈裟まで投げつけられます。それは、かつてこの男が天下を取ると予言して与えた袈裟だったのです。

長左衛門は、切腹の覚悟を決め、約束通り、水攻めから解放される様子を瀕死の状態で石垣の上から眺める姿が涙を誘います。

長左衛門切腹の段 清水長左衛門:吉田玉也

そこに隆景(小早川隆景)が現れ、久吉と和睦を結び、春長の死が告げられここでの戦を終結させます。隆景の協力を取り付けて光秀討伐に向かう久吉。白い馬に勇ましくまたがる姿に魅せられます。

桐竹勘十郎の遣う久吉が、凛とした立ち居振る舞いで、情熱的な竹本千歳太夫の義太夫が物語に引き込み圧巻の最後となります。

 

当時人気だった秀吉の一代記、読本(よみほん)「絵本太閤記」を元につくり、大坂豊竹座で初演されました。人形と太夫、三味線が織りなす人形浄瑠璃の世界は、生身の人間以上の情感を伝え、人々に訴えかけます。このあと、クライマックス「尼ヶ崎の段」が見られる第二部、そして第三部では弁慶が豪快な「飛び六方」で花道を引っ込む場面がある『勧進帳』。見逃せません。

*2026年2月15日現在の情報です*記事・写真の無断転載を禁じます 写真提供:国立劇場 撮影:田口真佐美

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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