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紳士のたしなみ

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大野和士マエストロの魅力炸裂『トゥーランドット」

プッチーニのオペラ『トゥーランドット』が、新制作でこの夏上演されます。東京都と国が共同制作するという画期的な試みで、2019年7月12日東京文化会館を皮切りに、新国立劇場、びわ湖ホール、札幌文化芸術劇場と4つの会場を回ります。

指揮は大野和士マエストロ、演出は日本初のアレックス・オリエ、演奏はバルセロナ交響楽団、合唱は完成度の高いことで定評のある新国立劇場合唱団/藤原歌劇団合唱部/びわ湖ホール声楽アンサンブル。

 その舞台をより楽しんでもらおうと大野マエストロ本人が熱く解説する「大野和士のオペラ玉手箱 with Singers Vol.2『トウーランドット』」が開かれました。2019年6月29日(土)東京・初台の新国立劇場はほぼ満席でスタートしました。

まずは、プッチーニという人がどういう人だったのか。大作曲家で1893年『マノン・レスコー』1896年『ラ・ボエーム』1900年『トスカ』1904年『蝶々夫人』と大成功を収めるものの、1906年に彼が大切にしていた台本作家で詩人のジュゼッペ・ジャコーザが亡くなってしまいます。彼の音楽を活かす「言葉」がなくなってしまって、しばらく不作の時代が続いたあと三部作と呼ばれるオペラの連作が書かれ、そして1924年『トウーランドット』へと至ります。しかしこれを書いている最中にガンが見つかり、2年後に亡くなってしまったため未完成でした。

大野マエストロが、ピアノを弾きながら、体を動かしながら解説していると歌手が登場します。舞台冒頭の「北京の民よ」は、死刑執行人バリトンの森口賢二。不協和音で不吉な感じが出ること、首切りの動作で会場の人たちも一緒に首切り動作をして、まるで演者になったかのように楽しみます。

続いて登場するのは王様ティムール役のバリトン妻屋秀和、王子カラフ役のテノール工藤和真、カラフを慕うリュ―はソプラノ光岡暁恵。リューは、プッチーニの作り上げた女性像で、愛と悲しみに満ちた天使のような存在です。

そして、道化ピン、ポン、パンは、ピンに森口賢二、ポンにテノール糸賀修平、パンにテノール秋谷直之。

リューのアリア「ご主人様、お聞きください!」の、清純で芯が強く情熱的な光岡暁恵の歌声が一気に会場を魅了しブラボーの声が飛びます。

大野マエストロは饒舌で、次々に言葉を繰り出します。プッチーニ制作の背景に迫り、中国の音階や民謡などを徹底的に研究したことや、観客が一度は耳にしたことがある日本の流行歌などもプッチーニの音階に乗せながら、筋書きに沿ってどんどん解説していきます。

さらに、会場に入った時にもらった資料の中に書いてあった譜面が、第2幕の「北京の民よ」の中から抜粋してあり、ほんの少し観客に合唱させてくれる大サービス。オペラ好きな観客だからなのか、会場からの歌声も聞きほれるほど素晴らしい(笑)。

その合唱に乗せて登場するのがトウーランドット役、このためにきてくれたソプラノ、オクサナ・ノザトワ。力強く冷徹な姫を演じます。この姫は、数世紀前に屈辱の死を遂げた王妃の魂が乗り移っているから感情がないのだとか。

姫は3つの謎を王子に投げかけますが、王子はそれを解いてしまいます。謎が解けたら結婚する約束でしたが、姫が自分を彼に渡さないでくれと切々と歌うと、王子はそこまで言うなら明日の朝までに自分の名前を当てたら命を捧げると、そこからあの有名な「誰も寝てはならぬ」につながっていきます。

予定演奏楽曲の中に「誰も寝てはならぬ」が入っておらず、「誰もが聞きたい曲は、本番まで聞かせてくれないのかしら(笑)」と想像していると、やはり歌うことなく次の曲に進みます。

最期にプッチーニが書き上げたのが、リューが歌う「氷に包まれた貴方さま」です。リューが捧げてきたカラフへの愛を姫に渡すと歌い上げます。愛を知らない姫は、アモーレという言葉を知りません。リューの愛を聞き、初めて姫は女性的な声に変わっていく場面です。大野マエストロが観客に心理描写することによって、歌手たちの歌い方も変わっていくのも面白い。

舞台が拍手に包まれたカーテンコールの後、アンコール曲として歌ったのが「誰も寝てはならぬ」。「そうか、アンコールのためにとっておいたのね」とやっと納得です。

 

演奏楽曲は、全部で12曲(アンコール曲は除く)。たっぷりと楽しめました。

実際の公演には、今回登場した、トウーランドット役のオクサナ・ノザトワ、カラフ役の工藤和真、リュー役の光岡暁恵は出演しませんが、他の面々は舞台で見ることができます。 残席僅か。ダブルキャスト、どちらを楽しみますか。

詳細はコチラのHPへ https://www.nntt.jac.go.jp/opera/turandot/

 

 

*2019年7月3日現在の情報です*記事・写真の無断転載を禁じます*写真はすべて新国立劇場提供

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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