Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
是非学びたい気になるテーマについて学んでいきます。

ギター紳士の独り言

Vol.5 大地の鼓動 石牟礼道子に捧ぐ <前編>

サムライ

ながらく憧れていた詩人、石牟礼道子。そう、詩人であり文学者。
石牟礼道子を読めば読むほど、その世界観に魅了されていく。

しかし、私にはある一つの大きな疑問があった。
石牟礼道子文学の、あどけなき子供の素朴さと、構成の精密さの共生。共に生きている姿。
本来なら同居するはずのない相互異物を同時に居座らせている。

彼女の特異なる感性の源は…なんだろう…何処にあるんだろう…と、考え続けていた。
その答えを得る旅は、予期せぬ遭遇から始まった。

SAMURAI.jpという会合への出席からであった。
RODORODO(ロドロドーー小川紗綾佳との魂の音楽ユニットーー) 2014年の関西ツアー最終日、
兵庫県三ノ宮の資産家の自宅でのコンサート終了後の打ち上げで、

「あなたこそサムライだ!」

私たちの演奏を聴いていたく感動され、「あなたはサムライだ!」と、連呼する人がいた。

「まあ、まあ、、」

そう言われた時は私にサムライの自覚は無いが、悪い気はしない。
ふと湧き出ずる困惑、
サムライって、なんだろう

「サムライ?」

そのわだかまりを抱えながらその方の繋がりで、
田川清美さんが代表を務めるSAMURAI.jpに出席した。
恵比寿アカデミー。そこでの、衝撃的な出会い。

職人・金刺潤平(日本の伝統工芸 紙漉きの匠、畳の素材 井草の匠)

そして潤平の生き様との出会い。そして畳と井草の壁、大地のおおらかさをそのまま感ずる井草の壁。
都会の中のコンクリートの建造物のアカデミーの壁を井草に・・・?
…とてつもない。

その井草の空間に遭遇した時、母の無償の愛にしだかれているような感覚。
生き物の生まれた瞬間のような…人類の発生の瞬間のような…。
井草の醸す空気に包まれた瞬間、大地の鼓動を感じた。私の魂が震えた。
直様、琴を演奏した。
まさしく「のさる」 (九州の方言で、憑依ーー表現する上で、神がかる状態)

井草の空間と私の魂、そう【音】の同期。

潤平の魂と私の魂の同期。
地鳴りのように湧いてきた発想。
「この大地を感じさせる井草を弦にして弾いてみたい」
この想いがフツフツと湧いてきた。
そして、潤平との魂の付き合いが始まった。
井草の弦の楽器を作ることが決まり、熊本 水俣での行事《生きるを喰らう》への出演が決まり、
粛々と準備を重ね、コンサートの前日、
思いもかけず、石牟礼道子と会う機会が得られた。

体調を崩されて入院されていた。

病院の一階、ピアノがある。
小川紗綾佳作曲『精霊たちの浜辺』を彼女が歌い、私が朗読。
練りに練って創り上げた楽曲の演奏、初めて奏上した石牟礼道子。

しとやかな姿態と品格のある一挙手一投足に、威圧された。まさしく、威圧だ。
この人こそ、サムライではないか。

純粋性を鋭い迄に曝け出した、剥き出しの魂。
素朴さが虜になる、石牟礼道子の魂。
大地の鼓動だ。
大地の鼓動そのものだ。
我々の演奏、歌、朗読を、聴いている姿が生き仏。
生きとし生けるものに、息吹を吹きかけ、生命を紡ぐ人。
こんな出会いがあっていいのか。
聴いておられる姿勢に投射されて、演奏の必然性が、地球規模に変換される。

この対面によって、私からほとばしる、内面の息吹。
どうしても、言わざるを得ない純真な言葉の嵐。
石牟礼道子の言葉との出会いは、神との出会い。

まさしく、大地の鼓動。

石牟礼 道子 ありがとう。

高谷秀司(タカタニ ヒデシ)
日本を代表するブルース ギタリスト
渡米後、ラリー・カールトン、デューク・ジョーダンらと共演。
人間国宝 山本邦山とのユニット「大吟醸」やデビッド・マシューズとのアルバム「G2 NewYork Recordings」など幅広く活動。
2015年、邦山の意志を継承し、日本古来の美を表現したユニット「How Zan」を結成。

ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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