ギター紳士の独り言
Vol.4 ヨーロピアンマフィアの正体
さて、
ヨーロピアンマフィアの正体は!
というわけで、
前号に引き続き、バルセロナのBAR
大盛り上がりで打ち上げ、乾杯の嵐。嵐。
こんなに気持ちのいい打ち上がりがあるのか・・・。
ヨーロピアンマフィアだと思っていた二人。
実は、バリバリのミュージッシャン。
スペイン語、カタロニア語、英語をとりまぜて話してみると、
正真正銘のミュージッシャンで有る事が判明。
フラメンコのギタリストとカンテ(歌い手)だ。
ギター談義で、盛り上がる。
私のギターに、随分興味を示してくれた。
ギターは、ギブソンCL45。
一人が、
「ギター、ひかせて」
「喜んで」
ギターを貸す。
ミュージッシャン、リレーションの誕生。
フラメンコのギタリストだから、スティールの弦に慣れていないはずの彼ら。
しかし、さすがの腕前。
見事な右腕の捌きに、鳥肌がたつ。
何というリズムの打ち出し。
ワルツでもなく、四拍子でもない。
でも、その両方でもある。
3×4=12
3拍子を4回まわすところと、4拍子を3回まわすところで、頭が揃う。
ワルツも4拍子も、実は、同じ拍子であったことに気づかされる。
これぞ、スパニッシュの真髄。
魂の鼓動に突き刺さる生命の躍動感。
途轍もないギタリスト。
と、BARのママが、
「もう音出すのやめてね」
「はーい」
とりあえず返事はしたものの、我々のギター談義は終わらない。
かえって勢いを増している。
ママの声なんか気にしないで、弾き続けると
「いい加減にやめな!!」
さっきの優しい口調から一変して強い語気。激しい唸り。
ママが、何を怒っているのかわからなかった。
近所迷惑だからどうとかこうとか、
そんなレベルの事ではなかった。
それでも音を出していると
ママはいきなり店の電源をおとした。
真っ暗だ。
ママは身の毛のよだつほど怒りに震えている。
暗闇の中でもママの憤りが、ママの魂から着炎しているのが見える。
流石に我々も怖れをなして、ギターを仕舞ってBARの外へ出た。
そこであらためて、ヨーロピアンマフィア…
いや、アミーゴ(真の友人)に事情を聞いてみた。
「元々、俺たちは、この店に出たかった。
でもフランス人のママは、相手にしてくれなかった。
何度も何度もお願いしたが、取りつく島もなかった」
わたしは、アミーゴに聞いた。
「どうして、そうなるの?」
「俺たちがジプシーだから、ママが頭から拒絶した」
「俺たちが、ここまで頼んでも、出してくれない店に、アジアのミュージッシャンが来る。
それも東洋人、日本人、と聞いて、無性に腹が立つ。
悔しくて悔しくて、邪魔してやろうとまで思った。
だから、お手並み拝見で、一番前に陣取ったんだ。
G2us お前らは、本当に素晴らしい。
掛け値なしに見事だ。音楽に命懸けだ」
彼らの気持ちは、痛いほどわかる。
これは、立派な、民族差別だ。
彼らの心の痛みが、理解できて本当の付き合いが、始まった。
彼らの縞へ、連れてってくれた。
次の日も同じBARで演奏であった。
アミーゴたちは、沢山の人を連れて来てくれた。
まさしく、バルセロナ、スペインとG2us 日本の魂と魂の触れ合いの出発点だ。
世界中には色々な事情がある。
しかし、そこにかっことして存在しているのは、人と人の心。
音楽は、人の心と魂を浄化する。
きっと、明日も晴れる。
高谷秀司(タカタニ ヒデシ)
日本を代表するブルース ギタリスト
渡米後、ラリー・カールトン、デューク・ジョーダンらと共演。
人間国宝 山本邦山とのユニット「大吟醸」やデビッド・マシューズとのアルバム「G2 NewYork Recordings」など幅広く活動。
2015年、邦山の意志を継承し、日本古来の美を表現したユニット「How Zan」を結成。