Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
是非学びたい気になるテーマについて学んでいきます。

紳士が知るべきブランドストーリー

Vol.2 ビジネスのパートナーとしての高級サルーン 「フライング・スパー」

■「ベントレーを選ぶ」ということの意味

ロンドンのなかでも、随一の高級なエリアとして知られるメイフェア。
その一角に、世界最古のベントレー・ディーラーであり、今も世界の名だたる顧客に愛されるジャック・バークレイがある。
1927年からずっと”Bentley”の看板を掲げており、創業者は、かのW.O.ベントレー氏とも親交が深かった。
名高い”ベントレー・ボーイズ”の一員として、過酷なことで知られるル・マン24時間耐久レースに参戦し、1923年の初戦から1930年までの間に5回もの総合優勝を果たした。

page1image4048当時のレースの様子

輝かしい戦績はもちろんだが、当時のレースは今と比べ物にならないほど危険で、命がけだったからこそ、富裕層の子息である”ジェントルマン・ドライバー”があえて冒険に挑む姿に人々は惜しみない賞賛を与えたのだ。

page2image5601924年ル・マン24時間耐久レース初優勝の様子

そんな歴史に思いを馳せながら、老舗に足を踏み入れると、店内には個性的な内外装のモデルが所狭しと並んでいる。

page2image2928店内の様子

ロンドンのど真ん中でこれほど贅沢な空間の使い方が許されるのかと思うほど、余裕のある店内を進んでいくと、奥まった場所に静かなスペースが設けられており、顧客との丁寧な対話、つまり”ビスポーク”のためのスペースが設けられている。
革だけでも目移りしそうなくらいバリエーションに富むが、さらになめし方による質感や風合いの違いがあり、ウッドやアルミパネルなどの素材選びも加わる。

page3image376ビスポークスペース

 ベントレーを選ぶことは、数えきれない組み合わせの中から自分の好みにあったものを選べる贅沢でもあるのだ。
クルマのシロモノ化が叫ばれる昨今だが、ここではまだクルマが限られた人のためのものだった時代の古き良き伝統が連綿と受け継がれている。

 さらに階下に歩を進めると、この店の歴史が詰め込まれた一室がある。
執務室の壁に飾られたベントレー・ボーイズたちの過日の栄光を讃える写真が、栄光に彩られた日々を鮮明に思い起こさせてくれる。
ほのかに明るい光に照らされた顧客台帳を垣間見ると、そこには誰もが知るVIPの名前が並んでいる。
公言しないとの約束であるが、もし一人ずつ名前をあげていたら、それだけで紙幅が尽きそうだ。

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1924年 W.O.ベントレー(中央)とル・マンで優勝した3リッター

 ■都会で機能的なサルーン

 長きに渡って、”ジェントルマン・ドライバー”たちが望む質感とパフォーマンスを高いレベルで提供してきたブランドだけに、真新しい新型車にもその精神は連綿と受け継がれている。
フルモデルチェンジを受けたのを機にコンチネンタルの名が消えた「フライング・スパー」は、ドライバーズ・カーとしての歴史を受け継ぎながらも、4ドア・サルーンに期待される後席の快適性を備えている。

 2ドア・クーペの「コンチネンタル」とはまた微妙に異なる上品な顔立ちに加えて、上下に狭められたグラスエリアがスポーティな横顔を演出している。
サルーンというより、4ドア・クーペのようなスタイリングである。

page5image400フライング・スパー

しかしながら、キャビン内の快適性は、ラグジュアリー・サルーンに求められる要件を充分に満たしている。
元々、フロントに搭載されるツインターボW12エンジンは全長が短く、V型と比べて居住空間が確保しやすく、キャビン空間の設えには定評があった。
さらに今回のフルモデルチェンジでは、運転席の快適性はそのままに、後席の快適性、静粛性、実用性が向上した。

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左 運転席
右 後部座席

 とはいえ、ベントレーを名乗る以上、欠かせないのがドライバーズ・カーとしての走行性能だ。
アクセルペダルを踏み込むと、ツインターボ付きV8エンジンのモダーンな息吹を感じる。
4Lという限られた排気量ながら、最高出力507ps/6000rpm、最大トルク660Nm/1700rpmを発揮し、8速ATを介して、4輪に確実にトルクを伝えていく。
0-100km/h加速を5.2秒でこなし、最高速は295km/hに達する。

 5315☓1985☓1490mmのボディサイズゆえに都会での取り回しを案じるかもしれないが、それも杞憂に過ぎなかった。
例えば、高速道路への合流では、1700rpmという低い回転域から660Nmもの最大トルクを発揮して4輪に伝えることで、このクルマを扱いやすく感じさせる。
流れに乗ろうとフルスロットルを踏んだときの加速感は、強大なトルクで身体がシートに押し付けられるようではあるが、暴力的なところはなく、あくまでスムーズだ。
インフォメーションが豊かなステアリング・フィールとアクセル操作への応答性の高さが相乗して、このクルマをさらに扱いやすく感じさせてくれる。
強大なパワーを必要としなければ、気筒休止機構が機能して、低燃費運転に徹することもできる。

 4段階で可変できる足周りの設定から最もスポーティな仕様を選べば、ロールが抑えられて、路面をしっかりとらえてコーナリングをする。
一方、最もコンフォートな設定を選べば、荒れた路面でも快適さを損なわない。
サポート感が高いスポーティなシートではあるが、質感が高く、かけ心地もいいため、リラックしたシーンにも対応する。
オーディオの音質の高さやエアコンの快適性まで含めて、全方位で余念がなく、ビジネス・サルーンとしての日常の用にも充分な機能を発揮する。


page6image4280■極上の幸せを手に入れる

 これでモノ足りない人がいるのか?とも思うが、2016年モデルでは、新設計のツインターボ付き6LW12気筒が搭載される「フライング・スパーW12」が登場する。
0−100km/h加速を4.6秒でこなし、最高速が320km/hに達する俊足ぶりを発揮しつつ、ひとたび目的の速度に達したあとは、気筒休止機構によって穏やかなクルージングに徹するクレバーさも併せ持つ。

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左 V8エンジン
右 車内の様子

 

 V8エンジン搭載モデルで1945万円、W12モデルで2415万円というプライスタグを掲げるのは、破格といっていいだろう。
  もちろん、誰もが手が届く価格ではないが、最高級サルーンを日々の暮らしで楽しめるという点では、バリューな選択と言えるだろう。
現代的にアップデートされたラグジュアリー・サルーンで快適にドライブしながら、ベントレー・ボーイズが活躍したレースシーンに思いを馳せる。
自らの人生において、そうした日常を手に入れることができるのであれば、極上の幸せに違いない。


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ベントレー

イギリスの高級車・スポーツカーメーカー、ブランド。1919年8月、W.O.がベントレー・モーターズをロンドンのクリックルウッドに設立。その後、1924年-1930年にはベントレーボーイズと呼ばれる大富豪の子孫がドライバーとしてして参戦したル・マン24時間レースで、5回の優勝を飾るなどモータースポーツで名を上げ、高性能スポーツカーメーカーとして世界の富裕層に好んで使用された。最新技術とクラフツマンシップの融合により完成されたドライバーズカーは、グランドツーリングの最高峰として高く評価され愛されている。
 

ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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