Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
是非学びたい気になるテーマについて学んでいきます。

できる紳士のスーツの知識

第1回 ワードローブ 前編(ネイビー&グレー・スーツ)

① ネイビー・スーツ=ビジネス編

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かつて「背広は紺に始まり紺に終わる」と言われたように、ネイビーブルー(濃紺)系のスーツは、定番中の定番、それこそ鉄板アイテムです。男服の着こなしのすべては、ここから始まると言ってよいでしょう。

信頼感を生むとされるネイビー・スーツ。まずはカラダによくフィット(適合)した一着を選んで、真っ当に着ることです。最低限、肩のフィット感がぴったりくることが選び方の決め手となります。

英国調だのイタリア調だのアメリカン・トラッド調だなどというのは、あなたのこれまでの好みにおまかせします。
これを伝統的な作法にしたがって、ごく自然な感覚で、正しく着ることが大切です。着こなしとしては、シンプルに装うことがポイントで、すっきりと装うこと によって、スーツの良さが生かされるのです。凝ってやろうとか洒落のめしてやろうなどと考えても、たかが知れています。

コーディネートのコツは、合わせるアイテムにできるだけ上質のものを選ぶことです。ぺらぺらした安っぽいものは、決してあなたをリッチに見せてはくれません。
シーアイランド・コットン(海島綿)やエジプト綿、スーピマ綿などの上質な白のドレスシャツ、オールシルクのソリッド・ネクタイ、上等の黒革レースアップシューズといったアイテムは、あなたを紳士に見せるための好適な選択となることでしょう。

ここで肝心なのは、あまりにファッショナブルなタイプを選ばないということです。細すぎるネクタイ、凝りすぎの変形ボタンダウンカラーシャツ、尖りすぎたイタリア調茶靴など若者好みのコーディネートは、痛々しいイメージを与えるだけの結果になりかねません。
紳士はいたずらにファッション・トレンドを追いかけないもの。合わせるアイテムには上質のものを選び、毅然たる態度で着こなしてください。「飾るより剥ぎ取れ!」というのが、ここでの教訓となることでしょう。

スーツの着こなしにおいて、何よりも目につくのはVゾーンの構成。すなわち、胸元のラペルとネクタイとシャツの取り合わせにあります。ここをのっぺりとした平板な印象に陥らせないのが、着こなし巧者のワザなのです。
とくにネクタイがただ結んだだけだと、何の印象も残りません。ノット(結び目)の下には必ずディンプルを作り、ふんわりと立体的に見せることが肝要です。 それとともにシャツ襟のデザインともうまくマッチさせてください。これがアンバランスだと、まことに妙ちきりんと言わざるをえません。

Vゾーンの配色には、落ち着いた印象を与えるハーモニーカラー・コーディネーションと、活動的な印象を生むコントラストカラー・コーディ ネーションの2方法がありますが、現在はネイビーブルーを中心に、そのグラデーション(階調)による統一感を表現するのが新しいとされています。

こうした着こなしが、必ずや大人な男の雰囲気をかもし出してくれるに違いありません。

② グレー・スーツ=ビジネス編

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ブルー、ブラウンと並んで、男服の3原色のひとつとされるグレー系のスーツは、ネイビー・スーツと同じく、基本的なビジネス・スーツのひとつとされます。

グレーと言っても、ほとんど黒に近いチャコール・グレーから、最も明度の高いライトグレーまで、その色調の幅は広く、それぞれにさまざまな 表情が生まれますが、もともとがモノトーン(無彩色)なだけに、配色もしやすく、無難な性格もあって、ビジネス・スーツとして重宝されるのが特長となって おります。

したがって、ネイビー・スーツよりも自由に扱うことができますが、着こなしの基本は同じです。すなわち、妙に崩さないで正しく装うこと。コーディネートには安物を合わせないで、上質のアイテムを持ってくるが、大切なポイントとなります。

グレーにはどんな色も違和感なくマッチしますので、配色に迷うことは少ないのですが、といってビジネスにそぐわないカラフルなコーディネートは避けるべきでしょう。
たとえば、シャツには白を基本として、薄いグレーやブルーまたベージュなど淡色系のものが合いますが、ちょっと洒落るときは、ほのかなピンクやイエローなんかのシャツも粋なものです。

ネクタイは、落ち着いた印象に仕上げるならブルーから紫にいたる寒色系のもの、活発な印象にしたいのなら華やかな暖色系のものを選ぶのが原則となりますが、グリーン系のネクタイや黒のニットタイなどもことのほか似合いますから、一度試してみてください。

シューズは、ネイビー・スーツのときと同じように、黒のレースアップシュー(紐結び式)を一番とすべきで、なかでもそうしたストレートチッ プやプレーントウがベストの選択となります。茶靴もグレー・スーツにはよく合いますが、大人の男にはときに遊びっぽく映ることもありますので、ビジネス シーンには注意を要します。

さらにベルトはバックルの金具が目立たない、靴と同じ色の革のものを選び、ソックスは黒のロングホーズを選びます。ビジネスタイムの着こな しにおいて、目立つ行為は絶対禁物になるのです。したがって、原則的にポケットチーフやネクタイホルダーの類いも不必要なのは言うまでもないでしょう。

いずれにしても、まずはボディによくフィットしたスーツを選んで着こなすことです。フィットしていないスーツは、着こなしのすべてをぶちこわしにしてしまうのです。
立っているときは必ずスーツの前ボタンを作法にしたがって正しく留め、きちんと着てください。スラックスもウエスト位置を決め、ヒップをきっちりと包むように正しく穿くことです。

ノームコア(究極の普通)が叫ばれる現代のファッション状況。そのなかにあって、スーツの着こなしももう一度、美しかったセビロの原点に戻って、見直される時代が訪れているようです。

③ ネイビー・スーツ=プライベート編

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基本的にビジネス用スーツはオンデューティな性格を持っていますので、オフデューティなプライベート用には向きません。それを承知の上で、 オンからオフへ変身させることを考えてみましょう。つまり、同じスーツでも、着こなし方によっては雰囲気がガラリと変わることが可能なのです。

そのひとつは、ネクタイやドレスシャツを用いないノータイ・スタイルで、オンからオフに切り替える方法。これには、まずニットアイテムとの組み合わせが考えられます。

いちばん簡単なのはタートルネック・セーターとのコーディネートで、オーソドックスなところに白のケーブル編みバルキーセーターのそれを 持ってきます。ほとんど白に近い生成りのタートルネック・セーターでもよく、これはちょっとしたマリン・ルックのイメージができあがるでしょう。しかし、 現在では黒や紺のリブ編みのそれやボルドー(ワインレッド)などのプレーンなタートルニットのほうがファッショナブルかもしれません。

同じようにクルーネックやVネックのセーターを合わせる手もあります。これにはカジュアルなシャツをかましてもよろしい。

もうひとつは、単純にシャツと組み合わせるだけで、クールビズのような雰囲気ができあがります。太めのストライプ柄シャツやカジュアルな チェック柄シャツ、また同色系のダンガリーシャツやデニムシャツを持ってくる方法も考えられます。白のドレスシャツにアスコットスカーフをあしらうという のも、レトロで正統的なネイビー・スーツのオフ向きコーディネーションとなることでしょう。

これらとはまったく別の考え方で、ネイビー・スーツをプライベートなパーティー・ドレスアップ向きに変身させるという方法があります。
もともとネイビーという色はフォーマル向きで、ネイビー・ブレザーや海軍の制服はそのままでフォーマルウエアにもなりうるのです。

ネイビー・スーツを端正に装って、パーティーに出向くというのも一法ですが、ここではプライベートらしく、思い切り華やかにドレスアップさ せるのです。たとえば、ふだんは着ることのない白のシルクシャツにボウタイを合わせ、ファンシーベストを着込み、タキシード風に着こなしてみる。ポケット チーフもふだんのTVフォールドではなく、ペタルトリートメント(クラッシュトスタイル)にあしらって、華やかに演出させる。シャツの袖口にカフリンクス を飾るのも一興でしょう。

おしまいに、シューズを履き替えるだけで、気分が変わり、オフのお洒落を楽しめるということも覚えておきたいものです。
たとえば、いつもの黒オックスフォード・シューズではなく、チャッカブーツに替えてみる。スーツにブーツの組み合わせというのは、意外なほど新鮮な感覚を 生んでくれるものです。ここでは、茶色の靴を合わせる今風イタリアンのアズーロ・エ・マローネ(青と茶)のコーディネートももちろんOKです。

④ グレー・スーツ=プライベート編

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グレー・スーツも、ネイビー・スーツと同じように代表的なビジネス・スーツの一種ですから、カジュアル向きに着こなすには無理があります。が、ネイビー・スーツのところで紹介したように、これも着こなし次第でオンからオフへの切り替えが可能となるのです。

とくに明るい色調のグレー・スーツにはカジュアルな感覚もあり、ネイビー・スーツよりははるかに楽な調子で、カジュアルに変身させることができるでしょう。
まずはそうしたミディアムグレーからライトグレーにかけてのグレー・スーツを例にとって、これらをカジュアルな感覚で、プライベートに用いることを考えてみましょう。

基本はネイビー・スーツの場合と同じで、ニットウエアとの組み合わせを第一にします。タートルネック・セーターを持ってくるのがその一番で、とくに黒のリブ編みセーターとの相性は抜群となります。

そのほかにポロ襟のセーターやシャツなどのポロニット、あるいはスキッパーシャツとの組み合わせもよろしい。また、バルキーなカーディガン やニットベストとのコーディネートも面白い効果を発揮するもので、これらにシャツをかませてレイヤード・ルックに仕上げる方法も楽しんでください。グ レー・スーツは無彩色ですから、色柄の選択にもそんなに困ることはないでしょう。

このほかビジネスシーンとは異なる色のカラードシャツや派手目のチェックシャツ、プリントシャツの類いもOKです。お洒落上級者になら、イ ンナーにTシャツやVネックTシャツ1枚着込むだけのコーディネーションもすすめておきます。もっとも、これを成功させるには、ボディをかなり鍛えておく 必要がありそうですが……。

そして、チャコール・グレーなどダークグレー・スーツのオフ向き着こなしを最後にひとつ。
こうしたスーツは限りなくドレッシーな表情が強く、とてもカジュアルに着こなすというわけにはまいりません。
となると、ネイビー・スーツのところでアドバイスしたように、これまたプライベートなドレスアップ用に変身させるべきでしょう。
といって、がちがちのタキシード風などに仕上げるのは能がないので、ちょっと遊びの気分を採り入れたフォーマルなスタイルにするのが、ここでは面白いかもしれません。

たとえば、クレリックシャツの活用。ビジネスシーンではなかなか容認されにくいシャツですが、プライベートシーンなら何を着ても大丈夫。これにふだんは合わせないような明るめのペイズリープリントなどのネクタイを合わせて、ダンディーを気取ってみるのです。

同じように、ボールドストライプのドレスシャツを合わせたり、ファンシーカラー(変形襟。スタンドカラーも含む)のシャツをコーディネートして変身を楽しむ方法もあります。
同じグレー・スーツが、昼と夜でガラリと表情を変えるのを実感するのは、実に楽しい着こなし体験となることでしょう。

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1959年、百貨店初のプライベートブランドスーツとして誕生したトロージャンが生まれ変わります。
誕生から時を経て、今改めて本当に日本人にフィットするスーツとは・・・
体型はもちろん、時代と共に変化してきた働き方や価値観を反映し、今という時代に心地よくなじむ、男の仕事服へ。
肩書きやブランドではなく、世代を超えて自分らしさを纏うひとへ。
2015年 春。トロージャン、リ・デビュー。

取扱い店舗:
[大 丸] 心斎橋店・梅田店・京都店・神戸店・東京店・札幌店
[松坂屋] 名古屋店・上野店

ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

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