Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
是非学びたい気になるテーマについて学んでいきます。

私が出会った紳士

Vol.4 荘厳な建築をつくりあげる紳士 團紀彦氏

海のような山のような勇壮な人である。
祖先は海賊とお聞きしているが、大草原を走る騎馬民族のような感じもする。
建築家・黒川紀章氏を通じて、團紀彦氏にお会いしたのは、もうかれこれ15年ほど前のことだ。
パーティー会場で大きな体を少し前屈みにして、丁寧に人と接していらした。
作曲家の團伊玖磨氏のご子息で、曾祖父はアメリカで鉱山学を学び、三井三池炭鉱の経営を行い成功させ、三井財閥の総帥となった團琢磨氏(男爵)である。
 私の自宅と團氏の建築事務所が近かったり、そののち葉山に買った家と團氏のご実家が同じ丘にあったりと、何かとご縁がありよく友人たちが集い食事をしたり、芸術論や建築論をたたかわせた。

お会いしたばかりのころ「京都の西京極にプールを設計したので見てください」とのことでしたので、出張の折に寄ってみた。
50メートルぐらいの市営プールかと思ったら、京都アクアリーナという大規模な施設だった。
国際大会が開ける設備のメインプールや競技大会にも使用できる飛込プールだけではない。
アイスホッケーやフィギュアスケートなどの競技ができるスケートリンクも併設されていた。
仙田満氏と共同で設計されたものだが、美しい現代の神殿のような建物に私は息を呑んだ。
他にも、台北国際空港、日月潭向山ビジターセンターなど自然と調和した雄大な建築物を設計しつづけている。
近年では、表参道のHUGO BOSSが印象的だ。また日中文化交流協会や国立新美術館、セゾン美術館などの評議員を歴任され、多方面から絶大な信頼を得ている。
昨年は、ドイツ・ハンガリーで展覧会も開かれ大活躍である。

        
京都アクアリーナ                  台北国際空港

表参道HUGO BOSS

團氏はその風貌からは考えられないほど、びっくりするエピソードのたくさんある面白い方である。
釣りと素潜りが得意でよく海に潜って、銛で魚をついていらっしゃる。
友人が落ち込んでいるときは、團氏自ら包丁を持ち手作り料理を次から次へとご馳走したりする情のある方である。
 あるとき、「有紀さん、イタロ・カルビーノの見えない都市を描いてみたら? 」というご提案をいただいた。
「 『見えない都市 – Le cittià invisibli – 』は、マルコ・ポーロが元の皇帝フビライにシルクロードで出会った数々の街を語るという想定のもとにカルヴィーノがさらに記号論的創作を加えて描いた架空の都市の短編集」とのこと。
さっそく読んでみたところ感銘を受けたので、それをテーマに2012年にBunkamura Galleryで『薔薇都市』という個展を開催した。團氏は出来上がった私の作品を見て、「遠近法がない」とあきれていた。「夢想するものを絵にしているからなのか、時間と空間を飛び越えるズームが働いているからなのか? 」とお寄せいただいた文章に書いてある。
確かに私の絵画作品には、遠近法はおろか直線も境界線もない。
それぞれが溶けあって一体になっているような、潜在意識の奥深くを描いている。
團氏がつくっている建築作品とは正反対だ。
つくっているものは、全く違うけれど、なぜかこの方とは話が合う。
私は、團氏が目指しているもの、そのスケールの大きさが好きだ。
面白エピソード満載の茫洋としたキャラクターにはいつも吃驚させられる。
これからまだまだ活躍していただき、ぜひ歴史を変えるような雄大な作品を残してもらいたいと思う。
そしてたくさんお魚を釣ってきていただき、また友人たちといっしょにお酒を飲みたい。
とにかく建築家・團紀彦氏は野生の品格を持った本物の紳士なのである。

 

蜷川有紀 YUKI INNAGAWA  (画家・女優)

1978 年、つかこうへい版『サロメ』にて、3000人の応募者の中から主役に選ばれ女優としてデビュー。1981 年、映画『狂った果実』でヨコハマ映画祭新人賞受賞。以降、出演作多数。2004年には、短編映画「バラメラバ」を監督・脚本・主演。2008 年、Bunkamura Gallery にて絵画展『薔薇めくとき』を開催。同年度情報文化学会・芸術大賞受賞。以降、薔薇をテーマにした大規模な個展を毎年開催。岩絵の具で描き上げた魅惑的な作品が女性たちの圧倒的な支持を得ている。2017年5月末にパークホテル東京にて開催した個展『薔薇の神曲』では、縦3メートル横6メートルの超大作「薔薇のインフェルノ」を発表。イベントとしても異例の成功を収めた。また、日本文化デザインフォーラム幹事 、(財)全国税理士共栄会文化財団 / 芸術活動分野選考委員、InnovativeTechnologies 特別賞選考委員、青森県立美術館アドバーザー等として多くの文化活動にも貢献している。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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