Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
是非学びたい気になるテーマについて学んでいきます。

大人の女性の取扱説明書

シリーズ第3回目は「エスコート」

日本生まれの日本育ち、海外留学経験もない私は、本場仕込みのレディファースト、エスコートに関して、自分の経験からは語れません。そこ で、以前通っていたフィニッシング・スクールで学んだことと、これまで日本の素敵な紳士達から受けたエスコートを思い出しながら、今回のお話を進めていき たいと思います。「エスコート」と聞くと「スマートに女性を案内しなきゃ!」と肩に力が入ってしまう男子もいるかもしれませんが、ここは日本なのでエス コートも日本流で良いと思います! 私が考える「エスコート」とは、つまるところ「思いやり」。目の前の女性を大切に扱うだけで良いと思うのです。マナー もそうだけど、「こういう場面ではこうするのがしきたり、正解!」と頭でっかちになって動くよりも、臨機応変な対応力がある方が紳士的に見えますよ♡

ところで、「フィニッシング・スクール」とは上流階級の子女が結婚前に礼儀作法や話し方などを学ぶ、いわば「花嫁学校」のこと。私が通った 学校は紀尾井町の某ホテルの中にあり、“花嫁”としてだけでなく、オフィスでのキャリア・アップや事業の成功にも役立つ授業を行っていました。本校は米国 にあり、卒業生にはジャックリーヌ・ケネディ・オナシスや、グレース・ケリーをはじめ、さまざまなトップ・レディやスターたちが名を列ねています。日本で もミスコンのファイナリストやモデル達が立ち居振る舞いを学ぶために通うことでも知られている学校です。国際的なマナーを身につけたり、スピーチで自己ア ピールをしたり、パーティーの開き方や招待状の書き方、テーブルコーディネートの基本、自分に似合う魅力的な服装やメイクなどを学んでいく中で、当然エス コートについての授業もありました。そこで私が新しく学んだことは下記の4つ。

①エスカレーターで上がるときは女性が前で男性は後ろに立つ
②エスカレーターで下るときは男性が前で女性が後ろ
③お店でワインやシャンパンを飲むとき、女性はお酌をしないこと
④建物の扉に関しては、男性が開けてくれるのが望ましいが、男性の両手が荷物で塞がっているときは、女性が開けてあげても良い

エスカレーターで上がるとき男性が後ろなのは、万が一何かあったとき彼女を受け止めてあげられるように。下るときに男性が先に乗って前に立 つのも同じ理由からです。ワインやシャンパンに関しては、「注ぐのはソムリエの仕事だから」、というのと、「一説でそういった行為は娼婦だと思われかねな いので気をつけるように」とのことからでした。

よく言われる「道路を歩くとき、女性は建物側、男性が車道側を歩く」ということからも分かるように、エスコートとは女性を危険から守ろうと いう騎士道精神のようなもの。そして、真の大人の女性は、男性が騎士でいられるように自ら淑女となり、男性を立てることができるものです。つまり、男性に 恥をかかせるようなことはしない。公の場で「この男、エスコートの仕方も知らないのか」なーんて思わせるようなことはしないのです。

———ですので、男子専科流「大人の女性の取扱説明書」としては、エスコートに関して「男子は頑張らなくて大丈夫!」というのを推奨しま す! 本当に必要なエスコートは、そうするように女性の方から仕向けますから! 大船に乗ったつもりでデートを楽しんでください☆ お互いが思いやりを 持っていれば、男性も恥もかかずにすみますし、女性も快適なデートを堪能できる、たったそれだけのシンプルなことなのです。

ちなみに、私は男性に甘えたいときは自ら車道側を歩き、「危ないよ」なんて腰を抱き寄せてもらえるように仕向けたり、階段を上るときは自分 から後ろに立って手を握ってエスコートしてもらってる風に演出したり、階段を降りるときは彼に先に立ってもらって自分手を彼の肩に添えたりします。守って 欲しくて車道側に立っているのに、それに気付かず立ち位置がそのままの男子もよく居ます。女性は目の前の男性がどのくらいエスコートに長けているのか、そ ういうところでも判断するので気を付けた方が良いかもしれませんね。

更に、男性はかかとの高い靴を履かないので理解できないかもしれませんが、ハイヒールの女性は足下が不安定。お洒落なお店が並んでいるよう なボコボコした路地や石畳はヨロヨロしがちですので、階段同様手を差し伸べていただけると助かります。それ以外だと、やっぱり女性は非力ですから、重い荷 物を持っているときは手を貸してもらえると嬉しいです。駅の階段や新幹線、飛行機で荷物を上げるときなど、特に痛感いたします。

冒頭でもお伝えしたように、エスコートに必要なのは「思いやり」。目の前の女性を大切に扱っているのが行動に表れていれば良いのです。そし て、洞察力と想像力があれば、目の前の女性が今必要としている助けがわかるはず。女性が「こうして欲しい」と感じるよりも先にあなたが先回りして手を差し 伸べれば、あなたは「できる男」として彼女の脳にインプットされるでしょう。それが、つまり「スマートなエスコート」なのです。

最後に、レストランでのエスコートについて。お店のかたが席まで案内してくれるようなレストランでは、是非彼女を先に歩かせてください。ド レスアップした素敵な彼女が歩くたびに周りの視線を集めていく様を後ろから眺めることができるのは、パートナーであるあなただけに許された特権。これは、 一度味わうと相当気持ち良くて快感がクセになると思います♡ お店のかたの案内がないレストランでは、あなたが先に立ち、彼女をエスコートしてあげてくだ さいね。

それでは、素敵なデートを楽しんでください☆

日向 琴子

漫画家、モデル、WEBテレビ局社長、ラブホテル評論家。

ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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