紳士が知るべき日本の逸品
【水府堤灯】
ロウソクが灯ったようなゆらぎを再現した「ミックシリーズ」の雲(左)とつぼみ(右)とみかづき(手前)。
灯りと形で安らぎも倍増。コンパクトに畳めるので海外でも評判だ。
<暮らしをモダンに灯す、伝統と革新の技>
岐阜と八女(九州)に並ぶ三大提灯の産地、水戸(別称、水府)。
一本ずつ輪にした竹ひごを並べ、縦に糸をからめてつなぎ合わせたところに、
水戸藩奨励の丈夫な西の内和紙を張って仕上げた提灯は、堅牢さで定評がある。
慶応元年( 1865 )に創業した、七代目が仕切る、製造から販売まで一貫して行う鈴木茂兵衛商店(すずも提灯)は今年、150年を迎える老舗だ。
時代が変わり、生活が変わると灯りも変わる。
神社仏閣や祭り、盆に使う提灯等、伝統的な提灯はまだ残っているが、
すずも提灯では未来を見据えた現代版の提灯開発にも注力。
その先頭に立つのが、製造開発担当の由元君平氏だ。
理学部で隕石を学んでいたというが、すずも提灯でのアルバイトをきっかけに、
本腰を入れてもの作りに携わっている。
瓶型の提灯を皮切りに、オリジナルの提灯を作る使命を担う由元氏。
新しい形はCAD(コン ピュータによる設計)を使うが、提灯の形を左右する型は、
ただ 型を作ればいいというものではない。
和紙を貼った後に分解して外す必要があるのだから。
自らも、一から提灯を作る職人でもあるからこそできる仕事。
提灯にできない形もあるが、パズルを作るように試作を重ね、
付加価値のある提灯を生み出す。
(左)8枚のステンレス型の側面にある溝に、スルスルと一掛けで骨となるPET樹脂線を巻きつけていく。
(右)均等な張りが命。糊で和紙を貼るときは、細い線に糊のつけ過ぎやはみ出しは厳禁。
和紙同士が重なるのは2mm足らず。
カミソリをふんわりと当て、カーブに添うように切っていく。
すべて貼り終えたら十分に乾 かした後、型を1枚1枚丁寧に外し、
下の穴から取り出す。
鈴木茂兵衛商店
〒310-0055 茨城県水戸市袴塚1-7-5
Tel 029-221-3966
http://www.suzumo.com
■茨城編
「山海の幸に恵まれ、人々は満ち足り、まるで理想郷である常世の国のようだ」という内容が、奈良時代編纂の『常陸国風土記』に書かれていた茨城県。
今もなお、その特徴は変わっていない。
冬の味覚アンコウや、全国シェア80%近くも出荷するハマグリ等の海産物。
収穫量日本一のメロンや栗、蓮根等をはじめとする数々の農作物が現在も、県内外の胃袋を満たしている。
過ぎたことは引きずらない、というポジティブな県民性は、各所に広がる原風 景や、由緒正しい神社仏閣、海川等の自然と対峙する賜物かもしれない。
県内には水戸をはじめとする城下町や小京都が多く、古くからの技術伝承や教 えを守る老舗も少なくない。
結城紬に粋な桐下駄。癒しの堤灯等、茨城で出合った匠の技と、”男を上げる”粋な逸品をご紹介。