紳士が知るべき日本の逸品
【甲州ワイン】人と自然の共存から生まれる、くらむぼんワイン
EU向けボトルの「ソルルケト甲州」(右)と、ワイナリーの
目の前の畑で収穫された、芳醇な香りの「カベルネ・ソーヴィ
ニヨン」(左)。
日本を代表するワインの産地山梨県。町をあげて本格的にワイン造りが始まったのは1870年代後半勝沼から。2人の青年が渡仏し、ぶどうの栽培から収穫、醸造を学んで帰国した。
今年で102年になる、くらむぼんワインの初代も自家ぶどうでワインを造り創業。「ワイン造りは農業」と話す四代目、野沢たかひこ氏もまた、自らぶどうを栽培する。
甲州ワインは1300年ほど前から、勝沼で栽培されてきた在来種〝甲州″ で造る白ワイン。先代から受け継ぐ棚栽培が見事な、地域特産の〝甲州″ と赤ワインとなるマスカット・ベリーAが主要品種だ。
水はけの良さ、少雨と日照時間の長さ、朝夕の寒暖差と正にぶどうにうってつけの土地柄。母屋から目と鼻の先の畑では、シャルドネとカベルネ・ソーヴィニヨンも育てられている。
垣根栽培の下を見ると雑草だらけで驚くが、病気や害虫には目を光らせるものの、あくまでも自然栽培。勝沼の気候風土からなる〝テノワール(土地の個性)″ を尊重する野沢氏は、ぶどうがワインに変わる手助けする職人だ。
甲州ワインは「控えめだが芯に力あり」と評されるが、野沢氏も揺るぎない信念を持つ。酵母をはじめ、樽やステンレスタンクを使い分け、ヴィンテージの中でも相性のいいものをブレンドし、ぶどうの風味が生きたワインを追求している。
柚子やかぼすのような香りが特徴の〝甲州″ は「甘ったるい白」の汚名が返上され辛口に。夏場は枝豆や鰻、寿司等と合わせ、10〜13度に冷やして飲むと格別。喉ごしが爽やかだ。
普段の食事で気取らずに楽しみたいワインが揃っている。
フレンチオークの樽や、熟成した風味を楽しむ時を待つ瓶が、静かに眠るワインセラー。ぶどうの貯蔵
庫として、大正時代に掘られたという地下(右)にも年月を経たワインが。タイムスリップしたような
空間と出会える。
くらむぼんワイン
〒409-1313 山梨県甲州市勝沼町下岩崎835
Tel 0553-44-0111
http://www.kurambon.com
■山梨編
世界文化遺産に登録された富士山をはじめ、全国的にも知られる八ヶ岳や南アルプスといった山々に囲まれ、県土の80%近くを森林が占める山梨県では、四季折々の大自然を満喫することができる。フルーツ王国としても有名だ。
「2014年ふるさと暮らし希望地域ランキング」では1位になった。
水に恵まれ、鉱物や石材等の原産地でもあるという土地柄を背景に、伝統工芸品も数多くあり、匠の技が伝承されている。伝統を守りながら、日々研鑽する男たちの逸品をご紹介。