紳士が知るべき日本の逸品
【越前焼】素材を生かす司辻の極盃
両手を添える姿が絵になる女性にオススメの大サイズは口径12cm、重さ約50g(左)。
男呑みの小サイズ(口径9cm、重さ約25g)もある。
ろくろ成形には山下達郎の音楽が最適という司辻健司氏。
越前の上質な土と卓越した技術で、感度の高い盃が作られる。
********
北陸最大の産地であり、日本六古窯の一つに数えられる越前焼。野趣な様相が特徴だが、“越前薄作り極盃(きわめはい)” は手に取ると、先ずその繊細な薄さと軽さに驚く。
次に口に持っていくと、唇にあたるおさまりのよさに脱帽する盃だ。
越前の土の中でも選りすぐりのきめ細やかな陶土にこだわり、作家・司辻(かさつじ)健司氏が綿密な計算のもとに作っている。
通常、ろくろ成形では手に水をつけて粘土をなじませ、作る形に伸ばしていく。
が、越前の土は水で伸ばすと割れてしまう性質を持つため、粘土に近い泥を手につけ、指の腹を巧みに使い、研ぎ澄ました感覚でろくろをひく。
その後、何日もかけて徐々に水分を抜きながら、細心の注意をはらって口を薄く、高台を形作る削り仕上げを行う。
約1240度の高温にかけると、鉄分と共に含有量が多い石英がガラス質となり、かたく焼き締まる。釉薬も色付け程度に徹し、とことん薄さと軽さにこだわる作業の積み重ねだ。
炎に負けて形が歪むものもあり、全過程を経ると製品になるのは半分ほどだという。
ぐい呑みは、首を後ろに傾けて呑むスタイルで燗酒が合うが、手の傾きで呑みほす盃は戦国の武将に通じる現代の男呑みスタイル。
口が広いだけに酒の香りを存分に楽しめ、舌全体に広がる日本酒の甘さを感じることができる。上品な甘さの吟醸や大吟醸がふさわしく、これからの季節に最適な冷酒か常温で味わうのがオススメだ。
使うほどにつるつるになる経年変化で自分呑みの器を楽しみたい。
光窯
〒916-0273 福井県丹生郡越前町小曽原20-2-2
☎ 0778-32-2654
tsuji-oh.358ken@ezweb.ne.jp
■福井編
神に供え天皇に捧げる食物 〝 御贄(みにえ)“ を供する “ 御食國(みけつくに)” であったのをはじめ、江戸から明治にかけて活躍した北前船の寄港地(三国湊と敦賀港)があるなど、奈良京都に近い要衝であり、多くの文化や歴史を積み重ねてきた福井。
現在は幸福度N0.1の県として知られ、日本の原風景が残る当地では風土や歴史、人々が育んできた数々の逸品がある。
代々受け継がれてきた匠の技。職人気質が物語るこだわり。
伝統を守りながら、日々研鑽する男たちの逸品をご紹介。