Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
是非学びたい気になるテーマについて学んでいきます。

紳士が知るべき女性のもてなし方

ヴァレンタインはさりげなく、格別に・・・

贈り物のための贈り物はいらない? イイエ、案外悪くないかも。と思わせられる、

フランスのヴァレンタイン・デー。

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Photo© Kimiko Botti

 

フランスのヴァレンタイン・デーに限って言うなら、(私の周りでは)この日の男性たちのパートナーへの心遣いはちょっとしたもので、あちこちの通りでバラの花束片手の男性にすれ違うのは、前夜から始まります。当日には、朝1番から大通り沿いの花のマルシェには車で横付けして、手馴れた様子で頼んだ花束をサッと手にして出勤するビジネスマンたちの姿が、夕方、日が沈む前のショコラティエの前には二重駐車がズラリ。そして、動けなくなった車のクラクションが響き渡り・・・

そう、真紅のバラの花束とチョコレートが、フランスのヴァレンタインの贈り物の伝統スタイルなんです。大切な女性への。

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Photo© Kimiko Botti

 

 

花言葉だけでなく、本数によって持つ意味が異なるので、男性ごとに、自分のこだわりがあるようですね。意味を持たない本数でも、奇数であることがポイント。偶数だと割り切れるので、別れを暗示するそうです。以前、(普段の)花のマルシェでも、こんなシーンが。

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Photo© Kimiko Botti

 

すでに20本に束ねられているものを買おうとした男性が、「値段はこのままでいいから、1本抜き取ってくれます?僕は要らないので、誰かにあげて」。

スタンドのマダムが、「別に包みますから持って行かれたら?」と言うのに、眉を曇らせて、「縁起でもない!僕は、偶数はゼッタイ贈らないと決めてるんです」

こういうところが愛の国と揶揄される所以なんでしょうね。

「フランスの女性は、何歳(いくつ)になっても女でいることを忘れない」とよく耳にしますが、モデルやカメラを向けられる職業の女性たちがどんどん美しくなるのと同じで、こんな風に男性から大切にされること、「誰かの視線」を感じて生きているのが何よりのエッセンス、な気がします。

 « 大人たち»が愉しむ、フレンチ・スタイル

ところで、上の2枚の写真は、それぞれ、私が実際に贈られたもので、日本にもサロン・ド・ショコラでお馴染みのこの老舗ショコラティエのもの。本来のイメージはとてもシックなので、名前を書いたらたぶん驚かれるはず。

でも、この赤い包装紙が、ヴァレンタイン・デー用のトレードマーク的存在で、リボンの留め飾りがその年によって、ハートのモチーフだったり、バラの造花だったり・・・と、アソビゴコロたっぷり。他のショコラティエでも、この日のためには特別な(たとえばハート型の箱)パッケージを揃えているし、(ミシュランの星付きでもそうでなくても、)多くのレストランではヴァレンタイン・デーの特別メニューを用意していて、L’Amour愛のイメージを前面に押し出したテーブルセッティングになっています。もちろん多くが要予約。2週間前には、もう、キャンセル待ちになってしまう場合も。

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Photo© Kimiko Botti

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Photo© Kimiko Botti

すべてのテーブルが差し向かい、もしくは90度に隣り合うセッティングで、全員が同じ時間に同じコース料理をいただくなんて、個人主義で協調性のないといわれるフランス人のイメージではないでしょう?でも、ようく考えてみたら、だからこそ、隣席のことなんて気にならないで、2人だけの世界を楽しめるフレンチ・スタイルなのかもしれません。お店によっては、星をプレゼントしてくれるという企画もあって、食事の最後に、2人の名前のついた星の場所を示す証明書をくれたり。そう、ヴァレンタイン・デーを心から愉しんでいるのは、むしろ、時間にも心にもゆとりある《大人たち》、なんです。

すべての日が一期一会。そして、だからこそのヴァレンタイン・デー。

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Photo© Kimiko Botti

 

もちろん、すべての男性がそうではないのはどこの国でも同じこと。カトリックでは祝日だけれど、フランスでも休日ではないので、時間的に都合がつかない場合もあるし、あえて何もしないというカップルもいるでしょう。

でも、(意外と知られていないけれど) 元来、男尊女卑の強かったフランス。だからこそのフェミニズムで、機会あるごとに、いかに自分がパートナーを大切にしているかをアピールする習慣が根付いたのかもしれませんね。意外なくらいに、片手に真っ赤な花束を、もう片方の手で杖をついて歩く年配ムッシューの姿も目にします。

ずっとそうしてきていて、その姿を見て育った息子が、そして、そのまた息子へと、ごくごく自然に受け継がれていることなのかも、と。朝、大きな花束を持って笑顔で出てきた年配紳士とすれ違った同じお花屋さんの前で、閉店間際に飛び込んで1輪だけ頼んだらしい若いビジネスマンが、息を切らせながら、それを手にして出てくるのにぶつかりそうになったことがあって、ふと、そんなことを思いました。なんだかフィルムの巻き戻しを見たような気分になって・・・

ルールはないし、本当は、すでに信頼しあえている2人にとっては、改めて特別なことなんて必要ないし、お花もチョコレートもなくてもいいぐらいです。でも、せっかくのヴァレンタイン・デーだから、やっぱり、あったら素敵。人生は毎日が一期一会、愉しんだ者勝ち、ですから。

今年のヴァレンタイン・デーには、さらりと、後ろ手からサプライズ。いかがですか?

 

 

サロネーゼカフェ海外レポーターのご紹介

 

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第10回記事担当
海外レポーター ボッティ喜美子 Kimiko BOTTI
仏日通訳翻訳/ジャーナリストJournaliste et Traducteur

 

フランス在住。東京で長らく広告・PR業に携わり、1998年に渡仏。パリとニースで暮した後、2000年からパリジャンの夫の転勤で南米ブエノスアイレスへ3年、出産も現地で。パリに戻り、地中海の街マルセイユへ転勤して13年。南仏拠点で時々パリの実家へ。家庭優先で仕事しています。Framathch社主催の年2回の仏ビジネスマン対象のセミナー『日本人と仕事をするには?』講師も10年目。英語・スペイン語も少々・・・

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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