Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
是非学びたい気になるテーマについて学んでいきます。

魅力ある紳士達の出会い

第3回「紳士はネクタイを武器にする」

恋人でもない男性に、ネクタイを贈るのにはそれなりに度胸と覚悟が要るものだ。

女性が男性にネクタイを贈る心理の裏には「あなたに首ったけ」という思いが込められているのだと聞いたことがある。

そんなことを知ってしまうと、ネクタイをプレゼントする側としては一層身構えてしまう。

にもかかわらず、女の人生にはネクタイを贈りたくなる相手がごく稀にだが出現する。

勿論、相手の趣味や背景をまだよく知らない段階であるにもかかわらずだ。

贈ったネクタイを運よく締めてもらえたとしよう。

まだ互いに相手のことを深く知らない関係において、自分の贈った物がその男性(ひと)の首元で終日その存在を主張するわけだから、向こう見ずな行動に走ったことを恥じ入る気持ちが湧いてくることもある。

例えば彼が関わった莫大な額の商談の成功を自分の贈ったネクタイが見届けるかもしれないし、海外のVIPとの重要な交渉にネクタイが目立つ位置で立ち会うかもしれないのだ。

何かの御礼などで女性が男性に品物を贈らねばならない場合、通常はあたりさわりのない品物選びに終始する。返礼以上の余計な勘違いをして欲しくないからだ。    

たとえ装身具を選んだとしても、せいぜいハンカチか靴下が限度だろう。

つまり当人の意識からなるべく遠いところに置かれるものがふさわしいと大人の女は考える。

そう、ネクタイを贈るということはどこかに恋の萌芽を期待しているのかもしれない。

平たく言えば、もしかしたらこの男性(ひと)が好きなのかもしれないという予感を伴っているということなのだ。

 

 

 

まだ会って間もないというのに、私がその男性(ひと)への御礼の品として迷わずネクタイを選んだのは、上記のような理由による。

ある晩、初めて食事をご馳走になり、その1週間後、短い空き時間にお茶をすることになった時、私はリボンをかけたネクタイを持って出掛けた。

とは言え、ただネクタイの受け渡しだけで終わっていたら、もしかしたら何も起こらなかったかもしれない。

その包みがネクタイだと分かった彼は「付けてみていいかな?」と私に尋ねた。

「もちろん」と答えるや否や、彼はネクタイを取り出し、嬉しそうに礼を言ったかと思うと、自分のしていたネクタイを手早く外し、鏡も見ずに慣れた手つきで贈ったネクタイをしめた。

その早わざのような手の動かし方、そして鏡に映した時よりもはるかに完璧な締め方に私は目を見張るしかなかった。

これこそ男のプロだと心の中で感嘆の声をあげた。

年齢とは関係なく男性にはプロとアマチュアが存在するものだ。

彼がこれまでの人生でいかに男を張って生きてきたか。

そして仕事のデキる男であるか。

さらには、義理・人情・決断力・行動力・包容力など、そういったものをどれほど命がけで守りながら仕事に賭けてきたかを

その鮮やかなネクタイの締め方ひとつで見せられた思いがした。

 

恋とは、落ちるものなのだとその瞬間悟った。

 

南 美希子 Mikiko Minami

(元テレビ朝日アナウンサー・エッセイスト・司会者・コメンテーター)

東京生まれ

東京女学館から聖心女子大学国語国文学科へ

大学3年生の時にテレビ朝日アナウンサー試験に合格。

3年終了後、1977年テレビ朝日アナウンス部に入社。

198612月に独立。

以降テレビ・ラジオ・執筆・講演・司会などで活躍中。

日本抗加齢協会公認のアンチエイジングアンバサダー。

美容・抗加齢に関しての知識も豊富。

東京理科大学オープンカレッジで話し方の講座を持つ。

https://mikikominami.net

ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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