Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
是非学びたい気になるテーマについて学んでいきます。

魅力ある紳士達の出会い

第12回「男を張って生きる」

 

私がサラリーマンアナウンサーから独立し、

いわば一国一城の主になったのは30歳の時だった。

当時は女子アナの独立が大変珍しい上、日本経済も好調だったので、

収入もサラリーマン時代とは桁違いに増え、非常に順調な滑り出しだった。

そんな時私がいわゆる大人社会の所作をすすんで見習ったのは、

自分よりもはるかに年長で社会的地位があり成功を収めている男性からだった。

あの時から40年近くの歳月が過ぎたが、いまだに企業でも政界でも官界でも、

基本的に社会は「男の原理」で回っているように思う。

だからどうふるまえばいいのか迷った時、現在も所作を見習ったり、

相談したりするのはしかるべき地位にいる男性なのである。

卑近な例を挙げると、会費なしの誰かの祝賀会のようなものが某ホテルで開催されたとする。

あまり社会経験のない特に女性の場合、こんな時大抵は手ぶらで出かけてしまう。

「いいのよ、いいのよ。何にも書いていないんだから、当然でしょ。」

かなり年配の女性でもこんな解釈をする人が多い。

「女はちゃっかりしているからなあ」で殆どが笑ってすまされるが、

ちゃんとした大人の道理に従えば、これはかなり恥ずかしい事なのである。

懐具合や世話になった度合い、主催者への思い入れの多寡によって金額はまちまちだが、

中には2030万をポンと包む太っ腹の人も存在する。

常識的には3万は包んでいくべきだろうとさる男性から若い私は教えられたものだ。

勿論懐具合によって3万は厳しいこともある。

そんなときはせめて1万でも持参するようにはしている。

 

 

大人数で飲食をした時、特にそこにいる人々が自分より若輩者であった場合は,

迷わず全て持つのは年長の自分の役割だと心得、

当たり前のように清算書を掴んでレジに向かうのも大人の男のあるべき姿だと思う。

これも私自身ずっと見習ってきた。

同席者が同期や同級生の場合にかぎり、よほど目に見えた成功者ではない限り同等を重んじて割り勘にするのが自然かもしれない。

しかし、年下・学生・若い人・女性高齢者、さらにはお世話になった相手だったり、

何かものを頼む場合は会計は自分持ちと心得るべきだと私は思う。

しかしながら、昨今の経済状況でなかなかそうも言っていられなくなった。

医者仲間数人で居酒屋で飲食する場に同席させて頂いた。

かつては、お会計は当然年長の教授が持つと相場は決まっていたそうだが、

近頃は教授の収入もかなり厳しく、やすやすと大盤振る舞いできないのが現状らしい。

この時も、結局のところお会計は割り勘で済ませた。

当然ながら無い袖は振れないし、無理をして虚勢を張る必要はない。

ただ昔の映画スターと言われた人々、例えば亡くなられた梅宮辰夫さん。

梅宮さんとはその昔テレビ番組で共演したのをきっかけに彼の講演会の聞き手を依頼されよくお手伝いをさせて頂いた。

その際に行く先々で本当によくご馳走になったものである。

梅宮さんだけではない。山城新伍さん、松方弘樹さんといった昔のヤクザ映画のヒーローたちは、

実生活でも男を張って生きているようなところがあった。

勿論彼らも常に仕事に恵まれ使えるお金がいつも潤沢にあったとは限らない。

それでも男気と気前の良さを、どんな時も変わらず発揮したものである。

 

 

最近の若い男女のスタンダードは割り勘だろう。

女性も当たり前のように働いており、もしかしたら女性の方が収入が多いかもしれないので、割り勘は当然だと思う。

おまけに給料から多額の社会保障費が天引きされ、自分の外食費でさえ削っているのに、

人におごるなんてそんな発想すらも湧かない世の中になってしまったことは誠に寂しく残念に思う。

しかし、どんな社会情勢にあろうとも「男を張る」という発想を自分のどこかに息づかせて生きて欲しい。

テレビ朝日に入社したばかりの新入社員の頃、同期の男性アナウンサーとお茶を飲む際は当然ながら割り勘だった。

我々女性も当たり前のこととして受け入れていた。

ただ、同期でただ一人古舘伊知郎さんだけは同期女性にお茶代を払わせなかった。

収入は同等で彼だけが金持ちだったわけでは決してない。

陰で苦労していたのかもしれないが、その心意気は今更ながらさすがだと思う。

そして彼の一時期の大きな成功はご承知のとおりである。

成功者はやはりどこか違うのだ。

 

南 美希子 Mikiko Minami

(元テレビ朝日アナウンサー・エッセイスト・司会者・コメンテーター)

東京生まれ

東京女学館から聖心女子大学国語国文学科へ

大学3年生の時にテレビ朝日アナウンサー試験に合格。

3年終了後、1977年テレビ朝日アナウンス部に入社。

198612月に独立。

以降テレビ・ラジオ・執筆・講演・司会などで活躍中。

日本抗加齢協会公認のアンチエイジングアンバサダー。

美容・抗加齢に関しての知識も豊富。

東京理科大学オープンカレッジで話し方の講座を持つ。

https://mikikominami.net

ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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