Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
是非学びたい気になるテーマについて学んでいきます。

魅力ある紳士達の出会い

第7回「ブランド品を身につける感覚で知識を身に纏おう」

結婚を意識し始めたカップルがいて、

彼女が自分の父親に彼を初めて引き合わせることになった。

その会食の場に、ひょんなことから同席させてもらった。

他でもない、友人である彼女の母親が急病のため

急遽ピンチヒッターとして駆り出されたためだった。

会食中、彼女の父親が彼に国際情勢についてある質問をした。

詳しくは忘れてしまったが、

国際情勢と言っても特に難しい質問ではなく、

現在でいえば「今度大統領に返り咲いたトランプについて、

君はどう思う?」程度のものだった。

緊張もしていたのだと思うが、彼はというと、

数分間沈黙した末にうつむいてしまった。

結局何ひとつ答えられず、小さな声で「すみません」とだけ言うだけだった。

部外者である私が助け船を出すわけにもいかず、

そこに流れる何とも気まずい空気に全員が耐えるしかなかった。

その時の父親の憮然としたような、がっかりしたような、何とも悲しそうな

表情だけは忘れられない。

親としては娘の結婚に賛成しかねていたのだが、

親の意見を聞き入れることなく、二人はまもなく入籍したのだった。

が、夫となった男性の信じ難い数々の行動により、

あっという間に二人は離婚をしてしまった。

離婚と、あの時彼が時事問題に疎かったことに関係があるはずもないが、

一人前の社会人として身につけておくべき知識も

見識も持ち合わせない若者を、彼女の父親がふがいなく不安に

思ったのは当然だと思う。

世界や社会の情勢を常に押さえアップデートしておくことと、

さらに重要なのはそれについて自分はどう思うかということを

言語化できる能力を身につけておくことは

紳士として最低限たしなみであることは言うまでもない。

欲を言えば、それに加えて文化・芸術の知識をさり気なく披歴できれば申し分なく、

そういう人こそまさに本物の紳士と言えるだろう。

まあ、一般的な日本社会においてそこまで求めらる機会は少ないだろう。

そんなわけで、最低限のたしなみとして、せめて新聞の一面に

躍り出るような世界情勢や社会情勢にはある程度精通し、

何よりも自分なりの意見を持ち合わせておくべきである。

それは決して、知識や頭の良さをひけらかすといった類いのものではない。

そう、品のいいブランド物のネクタイをさりげなく締めるのと同等の軽やかな

マインドなのである。

もっと言えば、ロレックスのオイスターパペチュアルを腕にまとうのと

全く同じ心性であり、自分が他者からよりよくみられるための小道具の

ようなものなのである。

そしてロレックスがスウォッチのように容易く手に入らないように、

情報と見識を身につけるには、

それなりの労力と手間と努力が必要なのである。

第一にニュースチェックは、ネットニュースで済ましているようではだめだ。

やはり新聞に目を通すのは必須条件だと思う。

玉石混淆のニュースが交じり合い、より派手なニュースに目が奪われがちな

SNSやネットニュースではごくごく表層的な出来事しかつかめない。

オールドメディアと揶揄されようと、やはり綿密な取材と熟達した

書き手によってしたためられた新聞の信ぴょう性は侮れず、

さらには論説から物事の背景を知り、社説から世間を代表する大筋の見解を知る。

そして、そういうものを吸収しながら自分なりの見識を醸成してゆくのだ。

分かりにくい事象はさらに調べてみるべきだ。

例えばパレスチナとイスラエルの長きにわたる紛争など、

新聞だけではつかみにくく、全容を知るには最低新書1冊を

読むべきだが、それでもなかなか分かりにくいこともある。

しかし、そこで努力することに賞賛が集まるのだ。一目置かれるのだ。

キラリと輝いているのだ。

改めて言うが、給料何か月分かの高価な腕時計を入手することと、

得難い知識を仕入れ、自分の頭の中で醸成することは等価なのである。

さらに言えば、ブランド品を纏うよりも己の価値を高められるのは、

情報に敏感であること、自分なりの考えをしっかり持っていることなのである。

仲間内で話している時でも、パレスチナ問題についてある程度

見解を語れたら単純にかっこいいではないか。

動機は格好つけでも全く構わない。

教養こそが紳士が身につけるべき最高の小道具であることを

忘れないで欲しい。

 

南 美希子 Mikiko Minami

(元テレビ朝日アナウンサー・エッセイスト・司会者・コメンテーター)

東京生まれ

東京女学館から聖心女子大学国語国文学科へ

大学3年生の時にテレビ朝日アナウンサー試験に合格。

3年終了後、1977年テレビ朝日アナウンス部に入社。

198612月に独立。

以降テレビ・ラジオ・執筆・講演・司会などで活躍中。

日本抗加齢協会公認のアンチエイジングアンバサダー。

美容・抗加齢に関しての知識も豊富。

東京理科大学オープンカレッジで話し方の講座を持つ。

https://mikikominami.net

ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

おすすめのたしなみ