Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
是非学びたい気になるテーマについて学んでいきます。

紳士のための恋する日本酒

Issue No.4「辛口ください!」やめましょ?

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男性のみならず、多くの人が日本酒を注文する時、もしくは好みを聞かれた時に最もよく使う言葉。
それは「辛口」
「日本酒はやっぱり辛口がいいよね〜」
「辛口のお酒ありますか?」
このフレーズを何度耳にしたことだろう。
お酒好きの男性がとりわけ好む辛口。
これはもはや一般常識化していると言っても過言ではない。
そんな定番の言い回しだが、実はそもそも日本酒に辛口というものは存在しない
日本酒はお米と水からできていて辛味成分は一つもないので、甘みしかないのである。
日本酒には醸造アルコールや添加物が入っているため、ミントのガムを食べた時にスースーするみたいな感じがすることがあるのだが、これは痛点、つまり「辛味」ではなく「刺激」によるものなのだ。

■メニューに表記されてある「辛口+ / 甘口−の数値とは?

ここで使われている辛口、甘口の数値は日本酒度と言って、飲み手が見るものではなく醸造のために作り手が使うもの。
+の数値が高いほど糖分が少なく辛口で、逆に−で表記されているものは糖分が多く甘口とされている。
この日本酒度の数値によって甘辛度の目安と、解説されることが多い。
この糖分の度数は日本種度計という器具で測定され、糖分がアルコールに変わる過程に異常がないか確認したり、絞りの作業の目安にしたりするために用いられたきた。
糖分の目安にだからと言って味の目安になるわけではなく、糖分が多くてもアルコール度数が高いと、甘くも辛くもないように感じたり、酸の種類によっても味の感じ方は大きく変わってくるのだ。

結果、日本酒度の高さだけで味を比べてみると、辛口を飲んでも甘いと感じる人がいたり、同じ数値のものを飲み比べてみても甘いと感じたり、辛いと感じたり、バラバラなのだ。
つまり感じ方は十人十色。
日本酒度だけで「辛口」は測れないのである。

しかもこの「辛口ください!」という注文フレーズは、実は少しお店の人を困らせてしまうワードなのである。
決して悪意があるわけではない。。
「そもそも辛口というものはない上に、イメージで捉えてみてもザックリしすぎていてわかりづらい。」という人も少なくないのだ。
日本酒の味わいは、香りや酸味、旨み、まろやかさ、後味などが複雑に絡み合ったもので、それをひとくくりにするのには少々無理がある。

■なぜ「辛口」という言い方がこんなにも定着してしまったのか?

1つは、江戸時代の日本酒は兵庫と京都が二大名産地で、硬水を使う酒は糖分が少なく辛口=男酒、軟水でゆっくり発酵させるのは糖分多めの甘口=女酒と呼ばれていた。
戦中、戦後は甘いものが好まれ甘口全盛期を迎える。
そんな背景の中、菊正宗などの男酒は従来の造りを守り辛口酒として際立った存在に。
「甘口の酒が多いとお嘆きの貴兄に、、」のテレビCMコピーで女性よりも優位でありたいと思う男心を掴んで大ブーム。

2つ目は、80年代地酒ブーム。
新潟の淡麗酒が脚光を浴び、当時は今よりもより高級酒であった大吟醸などを冷やして飲むスタイルが人気となり、ウィスキーやビールなどでも「淡麗辛口」が大流行したのだ。

このような流れを受けて、「辛口」=美味い酒のイメージは人々に定着していった。
しかし、今は2016年!
時代も変わればお酒も変わる。
日本酒の種類も格段に増え、味わいも複雑化している現代において「辛口」という言葉はもうしっくりこない時代か到来したのだ。
現状では「辛口」の表記のラベルが多いのも事実である。
「辛口」がナンセンスな言い方だということは分かったけれど、
それじゃ一体どのように言えばいいのか?

ポイントはたったの3つ!

(1) フルーティーである?orそうでない?
リンゴやバナナなどフルーツのような香りの有無を伝える。
フルーティーな香りは吟醸香と呼ばれ、吟醸酒タイプが多い。
逆に純米酒はいかにも日本酒っぽい米の香り。

(2) 味がすっきり?orしっかり?
飲んだ時に軽やかに味が広がる「すっきり」、強めに旨みが感じられる「しっかり」。
アルコール添加や火入れがされているものは「すっきり」が多く、山廃や生原酒などは「しっかり」が多め。
ちなみに私は後者が好みかも。

(3) 余韻が短い?or長い?
飲んだ後口の中に味が残らずにスッと切れるのが「短い」、じんわり後を引くが「長い」。
「短い」ものは「キレがある」とかいう言い方をされることが多いけれど、アルコール添加がされているものが多く、純米酒は「長い」ものが多い。

私は、まずこの3つを伝えておけば、好みの日本酒をよりスマートにお店の人にイメージしてもらうことができる!と思っている。
難しいと感じる方は、まずは「味がすっきり?orしっかり?」かだけでも伝えてみても、甘辛より全然ズレが少なくなるのでオススメ!!

しかし最も肝心なのは、知識よりもコミュニケーション!
食事に合うものや、一杯飲んでみてそれを基準に次を選んでもいい。
「仕事の疲れが吹き飛ぶような一杯!」とか
「彼女がうっとりするような一杯!」なんて言ってオススメを出してもらうことで、お気に入りの日本酒に出会うことができるかも。
女の子は意外と、男性のそういう店員さんとのコミュニケーションを見て新鮮なトキメキを感じたりするものなのだ。

だからあなたも明日から「辛口ください!」やめましょ?   
そうしたらきっと「辛口」以上の楽しみ方を堪能できるはず。

野口 万紀子 /  Makiko Noguchi
株式会社  5 TOKYO 代表取締役
クリエイティブディレクター


【取得資格】
SSI認定 唎酒師                   (認定番号 No.042210)
SSI認定 日本酒ナビゲーター             (認定番号 No.9338 )
WSET LEVEL1 AWARD IN SAKE (認定番号 No.313766 )
日本野菜ソムリエ協会認定 パーティースタイリスト
食品衛生責任者


【プロフィール】
東京都目黒区生まれ。女子美術短期大学卒業。モデル、芸能活動後、外資系アパレルブランド、融資コンサル会社等での経験を経て、株式会社 5TOKYOを設立。『日本酒 × ファッション・アート』をテーマに、5感で感じる日本酒の楽しみ方を提案。ソーシャルメディア「SAKE美人」「HANA美人」キュレーター。「和酒フェス公認」 和酒アンバサダー。

【URL】
 5TOKYO
 http://5-tokyo.com
 SAKE美人
 http://sakebijin.com/author/bijin30/
 HANA美人
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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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