Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
是非学びたい気になるテーマについて学んでいきます。

紳士のための恋する日本酒

IssueNo.12 石川県 『やちや酒造 株式会社』 前田公御用達 加賀藩の酒蔵

世界的にも人気が高い金沢は、近江町市場や東茶屋街、兼六園などたくさんの文化的観光名所が存在する。金沢駅から車で10分程度の北国街道沿いにあるやちや酒造は、400年以上もの長い歴史のある金沢最古の酒蔵。国の登録有形文化財にも指定されており、ちょんな削りという荒くカンナをかけた独特の表面仕上げは典型的な商家の面影を残す。賑わっていた当時の風情を思い起こさせる造りに、思わず足を止めて見入ってしまった。

 

はじまりは1583年(天正11年)。創始者である神谷内屋 仁右衛門が殿様専用の酒造りをするため、加賀百万石の藩祖前田利家公のお供をして尾張の国から移り住んだ。参勤交代で往訪する江戸に繋がっている旧北陸道~旧北国街道がやちや酒造の前を通っていたことから、御用達であったことが伺える。

 

1628年(寛永5年)に殿様から屋号「やちや」と酒銘「加賀鶴(かがつる)」を拝命される。「加賀鶴」の読み方は「かがづる」ではなく「かがつる」と濁点が付かないのは、” 濁らず綺麗なお酒 ”という意味を込めてこのような読み方になったのだそう。

 

「酒造りは米作りから」という考えのもと、麹米、掛米ともに地元のJA金沢市・三谷やちや部会所属の14軒の農家との契約栽培による酒造好適米である五百万石を中心に、石川門や石川酒68号等も使用し酒造りを行っている。尚、大吟醸酒は兵庫県産の山田錦を使用している。また、能登杜氏四天王の1人と言われる山岸昭治杜氏は、前能登杜氏組合珠洲支部長。杜氏歴22年で全国新酒鑑評会9回金賞受賞した確かな酒造技術の持ち主である。

 

酒が出来上がるまでには原料や造り手の技術はもちろんのこと、その土地の風土も大きく影響している。同じ造り手が同じ原料で醸したものでも、それぞれ味わいが微妙に異なってくるのは、微生物の神秘性とその土地そのものが持ち合わせた個性が繊細に影響しているからだ。ワインと同じように日本酒にも「テロワール」は存在するのだ。気候や温度、土壌の特徴だけでなく、「テロワール」にはもっと他の大きな意味を含んでいると感じている。土地の歴史や継承されてきた文化、様々な人の思いである。

 

蔵見学の最後に、神谷社長はこんな驚きのエピソードを話してくれた。

「日本酒の飲み方の基本  ” 和らぎ水 ” の発案者は私なんです」

” 和らぎ水 ” とは日本酒を飲むときにお酒とお水を交互に飲むこと。アルコール度数の高い日本酒の正しい飲み方として、日頃から私自身も提唱している日本酒の飲み方の基本である。

 

きっかけは19年前。時は焼酎ブーム全盛期、金沢のホテルで開催されたあるパーティーでの出来事。皆で乾杯の後に、同じテーブルの人が社長以外全員焼酎を注文するという驚きの事態に。社長はひとりひとりにお酒を注ぎながら「なぜ日本酒を飲まないのですか?」と尋ねて回った。返ってきた答えは

「日本酒は美味しいけど度数が高いからすぐ酔っ払ってしまう」

「ついつい飲みすぎて翌日に残る」

この二つだった。この意見を元に、苦手意識のある日本酒を何とか気持ちよく飲んでもらえないか?女性も乱れずに安心して飲んでもらう方法はないか?と考案されたのが、お酒とお水を交互に飲む ” 和らぎ水 ” のスタイルだったのだそう。

 

実際に自分自身で人体実験を行ってみた結果、お腹いっぱいになることもなく二日酔いや悪酔いもなく体調も良好。最初のうちは宴会の最中に水を飲むことに抵抗を感じると言っていた人も、その効果を体感してからは自ら進んで ” 和らぎ水 ”を飲む様になったそうだ。酔いの速度を穏やかにしてくれるだけでなく、お口の中をリフレッシュできて舌の感覚を鈍らせないので、飲食店での料理の注文も増えるという検証結果も出ている。今では日本酒造組合中央会でも採用になり、健康的に美味しく飲む日本酒の飲み方の基本ともなり、全国に広く認知されているのだ。

 

日本酒における「テロワール」という概念は、そういった物質的なものだけではない、人々が受け継いでいきたいと願い何かを変えていこうと踏み出してきた一歩一歩が全て繋がっている。その情念こそが日本酒に込められた一番の隠し味なのではなかろうか。金沢最古の酒蔵は日本人の深い情念を感じさせる酒蔵である。

 

取材/文:野口万紀子

 

 

やちや酒造 株式会社
石川県金沢市大樋町8-32
076-252-7077
http://www.yachiya-sake.co.jp

<受賞歴>
・能登杜氏組合主催自醸酒品評会2013 吟醸酒部門 第一位
・能登杜氏名工賞 最優秀賞
・金沢国税局長賞 最優秀事業所表彰
・全国新酒鑑評会金賞受賞
 平成4年、9年、15年、18年、19年
・金沢国税局新酒鑑評会金賞受賞
 平成4年、5年、6年、8年、9年、10年、11年
・金沢国税局新酒鑑評会優等賞受賞
 平成14年、15年、16年、17年、18年、19年、20年、21年、22年、23年、24年、25年、26年、27年、28年、29年、31年
・ワイングラスで美味しい日本酒アワード金賞受賞
 平成31年

神谷昌利
やちや酒造株式会社 代表取締役社長
1955年生、一橋大学商学部卒、ニチメン株式会社勤務を経て1983年やちや酒造入社、1993年社長就任現在に至る。金沢酒造組合副理事長。


昔は電気がなかったので、ところどころに窓を造って自然の光が入るように工夫されている。


囲炉裏にはお燗用に鍋をかけるところが二つ。雛壇は前田家16代ご当主夫人が京都から嫁ぐ際にお持ちになったもの。そのご息女の酒井美意子様の形見分けで会長が頂いたもの。


140年前から動いている時計。長い年月、歴史を重ね、蔵を見守り続けている。


ひんやりとした蔵内はキリッとした緊張感と歴史を感じる空間。

通常は入室禁止の麹室。室内は3540ほどの室温で、作業は50時間以上にも及ぶ大変な重労働。

もろみを絞る機械。空気圧を加えて絞る構造になっている。


石川県独自の酒米「石川酒68号」はフルーティーな味と香りが特徴。「加賀鶴 純米大吟醸68号」は昨年9月全日空国際線ビジネスクラスに搭載されました。

タンクで貯蔵。冬場の寒い時期にはフルーティーな香りが漂う。三段仕込みでじっくりと仕込む伝統的な技法。


仕込み中の酒米。まだ米の形状が見て分かるほどの硬さ。ここから更に醗酵していく。


醗酵が進んでくると滑らかな質感に。耳を澄ますとふつふつと音が聴こえるのが非常に神秘的。


試飲もできる販売コーナー。試飲をしながらゆっくりお土産を選ぶことが出来る。

「前田利家公 特別純米酒」
人気No.1商品。ほのかな香りと酒米の旨味が口に入れた瞬間広がる。

「加賀鶴 大吟醸 特撰」
フルーティーな香りと味がバランスよくマッチしたまろやかな味わい。

「利家とまつ 吟醸純米」
フルーティーな香りが鼻に抜けて香りを長く楽しめるのが特徴。

「加賀鶴 辛口なのに旨い酒 本醸造辛口」
キリッとしたドライ感はしつこくなく、つい杯が進んでしまう辛口。

「加賀鶴 純金の舞 金箔入り純米酒」
金沢名物といえば金箔。お土産品としても大人気商品。

「加賀鶴 加賀の紅茶のお酒」
『平成25年度プレミアム石川ブランド製品認定証交付式』にてプレミアム石川ブランド製品に認定された紅茶のリキュール。女性にも人気のヒット商品。


「加賀鶴 梅酒 日本酒仕込み」
LONDON SAKE CHALLENGE 2018』の梅酒・その他のお酒部門にて金賞を受賞。

野口 万紀子 /  Makiko Noguchi
株式会社  5 TOKYO 代表取締役
クリエイティブディレクター


【取得資格】
SSI認定 唎酒師                   (認定番号 No.042210)
SSI認定 日本酒ナビゲーター             (認定番号 No.9338 )
WSET LEVEL1 AWARD IN SAKE (認定番号 No.313766 )
日本野菜ソムリエ協会認定 パーティースタイリスト
食品衛生責任者


【プロフィール】
東京都目黒区生まれ。女子美術短期大学卒業。モデル、芸能活動後、外資系アパレルブランド、融資コンサル会社等での経験を経て、株式会社 5TOKYOを設立。『日本酒 × ファッション・アート』をテーマに、5感で感じる日本酒の楽しみ方を提案。ソーシャルメディア「SAKE美人」「HANA美人」キュレーター。「和酒フェス公認」 和酒アンバサダー。

【URL】
 5TOKYO
 http://5-tokyo.com
 SAKE美人
 http://sakebijin.com/author/bijin30/
 HANA美人
 http://hanabijin.flowers/archives/author/hana20


【SNS】
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 https://www.instagram.com/makiko_noguchi/

 

ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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