Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
是非学びたい気になるテーマについて学んでいきます。

紳士のための恋する日本酒

Issue No.3 いま気になるのはKIMOTO〜生酛〜

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■お酒のトレンド

ファッション同様お酒にもトレンドっていうものはある。

1990年代に木村拓哉と山口智子の「ロングバケーション」ていうドラマが爆発的人気で年下彼氏とお洒落なアパートで同棲。
ピアノを弾き、ワインを箱買いして2人で家呑みするっていうシーンから自宅でのワイン呑みは大流行した。
OLが家にワイングラスを置く文化はここら辺から一般化。
キムタクファンだけでなく、スタイルでお酒を飲むっていうのが女子に浸透してきた走りで、私はこういう感覚好きで、いつかやってみたいな〜と憧れていたのを思い出す。

ここ数年は再び焼酎ブームを迎える一方、ウイスキーも注目され世界唯一のウイスキー専門誌『ウイスキーマガジン』主催のコンテストで”ニッカシングルカスク10年”がベストオブザベスト2001のトップに輝き、シングルモルトは世界的にも脚光をあびる。
巷では、新しいのにわざと疲れた新橋っぽいレトロな昭和の女性が描かれたポスターが貼ってあるような内装の串揚げ屋や焼き鳥屋が増えて、そこではオジサンのもの扱いで今まで見向きもしなかったハイボールを皆決まって注文してる。

その少し後にモヒートが流行。
ビーチに行って水着のままミントをザクザクしながら飲むのが私の定番だったけど、まさか流行するとは思ってもみなかった。
でも、デザートのアイスクリームの上に乗っかっているミントの葉っぱのように、気休め程度の量しか入っていないそれをモヒートと思い込んでいる若い女子も多数。
本物のモヒートと言えるものが飲めるバーは意外と少ないもの。
呑みの場に行けばチェーン系居酒屋ですらモヒートがメニューに並び、そもそもハイボールがウイスキー、モヒートがラムだということすら認識していない人もまた多数。

■日本酒  in  ヘルーシーライフ

ここで今、オリンピックを控え本物志向の日本文化を強く発信していこうという流れに則り日本酒は注目され、お酒だけでなくインテリアやライフスタイルまでも「健康」とか「ヘルシー」とかいう言葉を耳にするようになってきた。
バキバキの力が入ったキラキラ豪華な人工的仕様ではなく、自然と調和していて、だけどクオリティーのいいものに時代はシフトされてきたのだ。
タバコをやめて、オーガニックワインを愉しみ、翌朝にはスーパーフードとフルーツの朝ごはんを食べた後、30分はランしてジムに通う男子も珍しくない時代に。
そんな時代だからこそヘルシーな要素が受けて日本酒人気は高まってる。

1970年代の淡麗辛口本醸造酒人気、そして80年代は吟醸酒、90年代は大吟醸酒、2000年を過ぎて旨口純米酒、さらに最近よく見かけるのは無濾過生原酒など芳醇タイプ。
時代の味は「淡麗辛口」→「芳醇旨口」へと変化しつつある。
そしてその味は非常に幅広く、様々な味が作られる技術が発達してきたけれど、美味しいだけでなくどこか「自然」テイストのものが注目されてきたのだ。

■KIMOTO〜生酛〜というジャンル

数ある日本酒の中で、わたしが今一番気になるのがKIMOTO〜生酛〜。

生酛とは、蔵内の壁や空気中に生息する天然の乳酸菌を取り込んで、乳酸菌以外にもたくさん生息する微生物たちの自然摂理を活用しながら乳酸を繁殖させる方法で、江戸時代から行なわれている伝統技法。
昔ながらの自然な酒造りをしようということで、全量ではない生酛造りのお酒を作る蔵元が増えている。
顕微鏡もない時代に微生物の存在さえも認識できなかった頃から行われてきた、高度な技術を要する。
生酛系酒母に対して人工培養された乳酸を添加する速醸酛系酒母は、生酛の半分の2週間ほどで作ることができコストも抑えることができ、高度な技術がなくても比較的一定品質を得ることができるのだ。

■女子受け抜群のヨーグルト風味?

淡麗で爽やかな口当たりだが、自然の乳酸菌を取り込んでじっくり時間をかけて造られた生酛造りの日本酒は、間違いなく速醸元より深い味わいなのだ。
乳酸菌は乳酸菌以外にも色々な成分を生み出すので、それらのおかげで旨みや甘み、酸味が絡み合って複雑な風味を作り出ことができる。
乳酸菌というとヨーグルトのイメージを持つ人も多く、実際「自然の乳酸菌から作られた日本酒」と耳にするとヨーグルトみたいな柔らかな酸味の味わいがする、と感じる人も多い。
そこで乳酸菌つながりのチーズ料理と組み合わせて楽しむのが、最近わたしのお気に入りである。
女子受け抜群の組み合わせをここに発見!

自然の法則に従って昔ながらの方法で造る生酛は、大変な労力が必要であるために非常に希少価値のある日本酒と言えるだろう。
酒造りに適した乳酸菌を増やすためには、厳しい冬の寒気が必要で、蔵人は寒さの中木製の竿を使って「蒸したお米、麹、水」をすり潰さなくてはならない。
こうした深夜の作業を一晩中行うのだ。

自然な味わいの深さには、こうした職人の熱い努力が隠されていたのだ。

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「ひとしずく」
東京都港区六本木3-3-25

2015年9月にオープンした日本初の生酛専門店。
置いてあるお酒は全て生酛で、おつまみも化学調味料なしの手作り。

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■大笹屋竹鶴 (生酛純米原酒)
超個性派の竹鶴。酒米が持つ特徴を最大限に引き出すため管理しすぎず、温度管理もしないというユニークな造り。
純米、原酒、無濾過、木樽仕込み、酵母無添加、熟成酒、とハイスペック。
熟成した白ワインのような琥珀色で、酸っぱくて旨みがあるけれど後味すっきり。ブルーチーズやチョコレートとも相性抜群。

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■男山 (生酛純米)
これからの季節お燗でいただきたい日本酒。
北海道の銘柄で1977年日本初の海外酒類コンクールで金賞受賞。
発祥は、兵庫県伊丹市でかの赤穂浪士が討ち入りした後に「男山」を飲み交わしたとか。
北海道のお酒はイメージで超あっさりな淡麗を想像するが、男山 生酛純米はしっかりとしたコクと旨味で、後味は香ばしい。
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■玉川 (コウノトリラベル 自然仕込み生酛純米酒)
京丹後市久美浜にて11代目当主が守る伝統ある酒蔵で、イギリス人杜氏フィリップ・ハーパー氏が作る独創的な日本酒。
造り手は火傷しない程度のしっかりした熱燗での飲み方を推奨している。
酒米は「コウノトリ育む農法」で無農薬栽培された五百万石。
熟成感があってなめらかな口当たり。

野口 万紀子 /  Makiko Noguchi
株式会社  5 TOKYO 代表取締役
クリエイティブディレクター


【取得資格】
SSI認定 唎酒師                   (認定番号 No.042210)
SSI認定 日本酒ナビゲーター             (認定番号 No.9338 )
WSET LEVEL1 AWARD IN SAKE (認定番号 No.313766 )
日本野菜ソムリエ協会認定 パーティースタイリスト
食品衛生責任者


【プロフィール】
東京都目黒区生まれ。女子美術短期大学卒業。モデル、芸能活動後、外資系アパレルブランド、融資コンサル会社等での経験を経て、株式会社 5TOKYOを設立。『日本酒 × ファッション・アート』をテーマに、5感で感じる日本酒の楽しみ方を提案。ソーシャルメディア「SAKE美人」「HANA美人」キュレーター。「和酒フェス公認」 和酒アンバサダー。

【URL】
 5TOKYO
 http://5-tokyo.com
 SAKE美人
 http://sakebijin.com/author/bijin30/
 HANA美人
 http://hanabijin.flowers/archives/author/hana20


【SNS】
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 https://www.instagram.com/makiko_noguchi/

 

ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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