紳士のための焼酎入門
第11回「芋焼酎になるのはどんな芋?」
先月とは一転、寒い日が続いています。
毎年思うことですが、2月ってこんなに寒いもんなんですね~。
あと、2月といえばバレンタイン。
ワタクシがお酒と同じくらい大好きなチョコレートの季節でもあります。
焼酎のお湯割り片手にチョコっていうのもおつなもんですよ。
さて今回はお湯割りに最適な焼酎、芋焼酎について語っていきたいと思います。
芋焼酎とざっくり言っても、芋ってなんの芋だって人、実は結構います。
それはある意味、当然のこととも言えるでしょう。
日本人はいろんな芋を食べている人種なのに、それを単に芋と呼ぶことがとても多いからです。
例えば粉ふき芋はじゃがいも、大学芋はさつまいも、芋煮は里芋といった感じです。
そして芋焼酎は、…さつまいものお酒なんです。
それではどんな品種のさつまいもが焼酎の原料となるんでしょう。
私たちが普段食べている一般的なさつまいもは「紅東(べにあずま)」という品種がほとんどです。
焼き芋なんかにするとホクホクして甘みが強くなるのが特徴です。
それに対して芋焼酎の原料芋は今では40種類以上あると言われています。
確かに最近、原料芋別の同銘柄なんてものもよく聞きますよね。
その中でも最も多く使われているさつまいも、それが「黄金千貫(こがねせんがん)」ってやつです。
次にその黄金千貫について考えてみましょう。
この黄金千貫は何度もの品種改良の末に生まれた、焼酎造りに理想的なさつまいもです。
まず、デンプンの含有量が多いことが第一の特徴です。
酒造りで生まれるアルコールは、デンプン質の量に比例します。
だからこの芋は酒造りにはとても効率の良い原料だということになります。
第二に収穫量が多いこともこの芋の特質です。
一反(10アール)あたり千貫(3.75Kg)取れると言われています。
第三に芋焼酎のできあがりの風味のバランスの良さがあります。
最近では特に「芋焼酎らしい」という表現自体が黄金千貫由来の焼酎を指す言葉になっています。
それ以外のさつまいもについても解説していきましょうか。
…と思ったのですが、それは次回のテーマにとっておきましょう。
ちょっと丁寧に説明していくべきことかな~と考え直しましたので…。
興味のある方は是非、次回詳しめにやりますので乞うご期待!
ところで少し話は逸れますが、芋焼酎になるさつまいもはどんな状態なのか気になりませんか。
基本的にはふかしたものを使います。
芋の甘みも香りも最大限に引き出された状態だと言えるでしょう。
ただし最近では焼き芋を原料にしたものが結構出てきました。
少し焦がした感じと素朴な甘みが魅力の焼酎に仕上がります。
また干し芋で造った焼酎ってのも出てきていますよ。
独特の風味と深みのある味わいが他とは一線を画したものとなっています。
ざざざっと今回も駆け足気味に芋焼酎の原料について語ってきました。
次回は文中でも予告した通り、さまざまなさつまいもについて考えていきましょう。
芋焼酎を結構飲まれる方、またこれから飲みたいと思っている方にも面白い話にしたいと思います。
それでは今回もこの辺でおすすめ焼酎を紹介して〆にしましょう。
* 今回のおすすめ焼酎 *
「碧萬王」
芋焼酎・25度・宮崎県・寿海酒造
麹米にタイ米を使った、やわらかな風味と豊かな甘い香りが漂う焼酎です。
原料芋も赤芋と白芋を両方使って仕込んだ、贅沢な一本です。
山口 昌宏
焼酎・梅酒が日本一、GEN & MATERIALを経営。酒全般マニアの元バーテンダー。
株式会社GENコーポレーション社長。
バーテンダーをしている中で、2000年に焼酎と出会いマニアに。
焼酎ブームの火付け役ともされるEN-ICHIで修業後、独立。
現在、東京・渋谷に数店舗を持ち、大阪にプロデュース店有。
昨年、兵庫・高砂に焼酎日本一の店舗「セイエイカン」を開店。
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