紳士のための焼酎入門
第13回「焼酎にオリが出てますけど飲めますか?」
春になりましたね。
花見の季節です。
さて焼酎とか日本酒・ワインを持って桜の下へGOしましょう。
…と言っても、もうすぐに終わってしまいますが…。
すぐに夏が来ますので、短い春を堪能しましょう。
さて今回はタイトルが質問調になっていますが、よくある疑問なんです。
オリとは何かというところから、じっくり解説していきたいと思います。
なんとなく不純物が浮いているという理由で中身を捨ててしまう人もいるようです。
日本酒やワインのような醸造酒のそれとはまた少し違うものなので、きちんと勉強していきましょう。
では改めてオリとは一体何なんでしょうか?
オリという言葉自体は、液体中に沈殿した不純物を言います。
酒類を扱う業界でも、その酒の中にふわふわ漂っていたり沈殿したりしている固形物を差します。
ここで問題になってくるのが、そういった酒の品質はどうかということです。
一番よくオリが出ると言われるワインについてまず考えてみましょう。
ワインでも特に熟成期間の長い赤ワインにオリがよく見られます。
なぜでしょう。
白ワインにもオリは出るのですが、それはミネラル分が多い場合に酒石酸と結晶化したものです。
また赤ワインに関しては渋み成分のタンニンや色素成分のアントシアニンが結晶化したものが出ているんです。
それらは赤ワインには必ずと言っていいほど多く含まれています。
その上熟成期間が長ければ長いほど成分が固まっていく傾向があります。
だから長期熟成の赤ワインにはオリが出やすいんです。
ただし酒質が低下しているというわけではありません。
ただ口当たりが良くないので、オリはグラスに入らないようにしています。
日本酒についてはどうでしょう。
ワインよりもう少し話がわかりやすいかもしれません。
日本酒は製造過程の途中で、醪(もろみ)という固形物を搾って酒と酒粕に分けるという工程があります。
その時の搾りの手法によって、オリの量が決まってきます。
極端にいうと、にごり酒やおりがらみなどという酒はあえてオリを残しているんです。
また透明な日本酒であっても時間が経つと、オリが出てきます。
それは旨みとして残っている酵素タンパクが少しずつ固まってできたものです。
こちらも品質劣化というわけではありません。
それでは本題の焼酎についてはどうでしょう。
焼酎には前述の醸造酒と違って、それほど多くのミネラル分などが含まれていません。
では今度こそ劣化なんでしょうか?
答えはやはりNOです。
焼酎にはごくわずかな旨み成分として高級脂肪酸エステルという成分が含まれています。
焼酎をよく知る人だとフーゼル油とよく呼んでいるものに、この成分も含まれています。
これは温度の影響を大きく受ける物質です。
一定以下の低温状況になると現れてきます。
要は焼酎の旨み成分の塊なので全く問題はありません。
焼酎通の間では「焼酎の華」と呼ばれて、ありがたがられているほどです。
瓶を振ってしまえばほぼ消滅してしまうことがほとんどですので、そのまま召し上がっていただけます。
結論としては、酒類に関していう限りオリというものは決して悪いものではないということです。
品質の劣化ではないので、廃棄する必要もありません。
ただ瓶詰から長期間経っていることがほとんどなので、そこは頭に入れておいていいでしょう。
そのぐらいのことだと考えておいて、まず問題ないですね。
さて今回も書いているうちに頭痛がしてしまい日をまたいでしまいました…。
季節の変わり目は体調管理が難しいですよね。
みなさんも気温の変化には充分に気を付けて、衣替え等するようにしてくださいね。
焼酎もロック、水割り、お湯割り、ストレートなど季節に応じた飲み方がいいかもしれませんね。
それではまた一本紹介しておきます。
* 今回のおすすめ焼酎 *
「麦冠 情け嶋」
麦焼酎・25度・東京都・八丈興発
日本のハワイとも言われる東京都・八丈島で造られている焼酎。
麦チョコのような、どこか懐かしさのある香ばしい香りが魅力です。
山口 昌宏
焼酎・梅酒が日本一、GEN & MATERIALを経営。酒全般マニアの元バーテンダー。
株式会社GENコーポレーション社長。
バーテンダーをしている中で、2000年に焼酎と出会いマニアに。
焼酎ブームの火付け役ともされるEN-ICHIで修業後、独立。
現在、東京・渋谷に数店舗を持ち、大阪にプロデュース店有。
昨年、兵庫・高砂に焼酎日本一の店舗「セイエイカン」を開店。
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