紳士のための焼酎入門
第28回「ビンの焼酎、紙パックの焼酎、ペットボトルの焼酎、それぞれの理由(わけ)~紙パック編~」
本格的に暑くなってきましたね。
夏です。
ビールがうまい夏です。
それでもこのコラムのメインテーマは焼酎からブレませんよ。
夏はロックで焼酎、いっちゃいましょう。
さて今月は先月の続きで紙パック編をお送りします。
紙パックの焼酎といえばスーパーなどでも必ず見る、比較的安価な焼酎が多いですよね。
そのお店のプライベートブランド焼酎や一般的に定番と呼ばれる焼酎がよく紙パックで売られています。
買う側に関しても家飲みなら、紙パックでいいかと思うことが多いですよね。
ビンよりも軽いし持ち帰るのにも便利ですしね。
ところでこの紙パックの焼酎についてよく聞かれることがあります。
それは「中身の味は同じですか?」という素朴な疑問です。
どうやら飲んでみて、どうも味が違う気がするという感想から生じているようです。
品質の変化なのか、はたまたハナから入っている焼酎が別物なのか。
どうなんでしょう?
とある蔵元さんにも聞いてみましたが、中身は全く同じものだそうです。
銘柄が同じであれば、ビンと紙パックに中身の違いはないと。
では紙パックの中身が変化している?
巷では紙パックの内側の防水加工が溶け出しているらしいとの噂がまことしやかに流れています。
本当でしょうか?
どうやらそれもないようです。
紙パックの内側はポリエチレンでコーティング加工されています。
そしてそれが溶け出す温度は約110度。
まず自然にその温度になることはないですよね。
では気のせいなんでしょうか?
どうやらそういうわけでもなく、味に違いがあるのは事実のようです。
どういう事かというと、これもまたある蔵元さんの解説を引用します。
先程出てきたポリエチレンは元々香味成分を吸着する特性があるとのこと。
それで中の焼酎の香りが抑えられてしまっているらしいのです。
私たちにとって味と香りはとても密接な関係にあり、香りによって味が変化したように感じるようです。
だから味が「薄い」と感じる人が多いという事です。
それではなぜ蔵元さんはそれでも紙パックに焼酎を詰めるのでしょうか?
それには2つの理由があるようです。
1つはコストが安いこと。
焼酎は値段の安さも魅力の1つです。
その為の手段として紙パックが採用されているようです。
理由のもう1つは軽くてコンパクトなので輸送コストが下げられること。
これも低価格実現のための方法であることに違いはありません。
焼酎を日常酒として定着させてもらう為の、蔵元の工夫が紙パックなんですね。
そして紙パックの焼酎を美味しく飲む為の工夫もここで提案しておきましょう。
それは買って帰ってすぐに他の容器(ビンや甕)に移し替えておくことです。
そうすると香りは少なくともそれ以降変化しません。
またそれでも不安な方は紙パックではなく、店頭での甕からの量り売りがおすすめです。
価格も安く抑えられているので、紙パックの代用としては最適です。
ここで少し話は逸れますが、紙パックについてのミニ知識を1つ。
前回、泡盛のビンの容量について本土とは少し違うよということに触れました。
それは実は沖縄の紙パックについても同様の違いがあるんです。
沖縄では紙パックと言えば1ℓではなく、946mlが定番となっているんです。
中途半端~。
その理由はやはり米軍占領下時代の名残でした。
アメリカの容量単位はガロン(=3785ml)が使われています。
当然、当時の沖縄でもガロンが単位になっていました。
しかし本土復帰の際に日本の単位であるリットルに合わせることを求められて今の数値が生まれました。
1ℓに最も近いものとして、クォーターガロン(≒946ml)が採用されたんです。
ちなみに500mlパックもなく、473mlとなっています。
さて今回は先月の「~ビン編~」の続きとして「~紙パック編~」と題してお話ししてきました。
実は実はペットボトルについても解説を入れたかったところだったんです。
ただやっぱり紙パックの話を綴っていたら、こんなに書いてしまいました。
またまた次回に「~ペットボトル編~」をお送りしたいと思います。
予告です!
最後に今回もオススメを紹介します。
昨年末に新発売されたばかりの限定焼酎です。
さつまいもだけでつくる風味豊かな全量芋焼酎の最新作!
期待を裏切らない品質の高さがこの酒造の魅力でもあります。
是非試してみてほしいです。
ウチの店にも早速入荷していますよ~。
* 今回のおすすめ焼酎 *
「一刻者(いっこもん) 茜」
芋焼酎・25度・鹿児島県・小牧醸造
稀少な橙芋のみを使用した、麹まで橙芋仕込みの100%芋焼酎。
果実のようなフレッシュな香りと軽やかな飲み口で、飲み飽きさせない1本。
山口 昌宏
焼酎・梅酒が日本一、GEN & MATERIALを経営。酒全般マニアの元バーテンダー。
株式会社GENコーポレーション社長。
バーテンダーをしている中で、2000年に焼酎と出会いマニアに。
焼酎ブームの火付け役ともされるEN-ICHIで修業後、独立。
現在、東京・渋谷に数店舗を持ち、大阪にプロデュース店有。
昨年、兵庫・高砂に焼酎日本一の店舗「セイエイカン」を開店。
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