紳士のための焼酎入門
第22回「焼酎を飲む時の器あれこれ」
あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いします。
それにしても寒いお正月ですね~。
こんな時はやっぱり熱燗がいいですかね~。
なんにしてもこの時期に日本酒が飲みたくなるのはやっぱり日本人だから?
さてお正月の日本酒と言えばまずお屠蘇。
風情があっていいですよね。
厳かな感じが正月感を醸し出します。
あの器、なんていうか皆さんご存知でしょうか?
調べてみたところ、「屠蘇器」と呼ばれるものらしいです。
ところで焼酎にもいろんな器があります。
特に焼酎は地方によっても時代によっても楽しみ方が違います。
だからいろんな酒器が存在するんですね~。
今回はそんな焼酎を飲む時の器について、順番にお話ししていこうと思います。
まずは芋焼酎の本場、鹿児島の酒器です。
地元の伝統工芸である薩摩焼の器が「黒千代香(くろぢょか)」です。
これは焼酎の燗専用の酒器です。
焼酎を水で割って一日寝かせたものを注ぎ、直火で人肌に温めます。
それを猪口でちびちび飲むのです。
ちなみにこの器は使い終わっても洗ったりしません。
使い込むうちに焼酎が馴染んでいくという考え方をします。
また最近では少し高級な「白千代香(しろぢょか)」という白い器も登場しています。
次に我が国の最南西、亜熱帯の島々である沖縄の酒器を紹介します。
沖縄ではお茶を入れて持ち歩く器をもともと「茶家(ちゃか)」と呼んでいました。
そしてそれを沖縄の酒である泡盛用に小型化したものが「酎家(ちゅうか)」。
さきほどの鹿児島の「千代香(ぢょか)」の語源もこれであるとされています。
ただこの器は製造も難しく、かつ壊れやすかった為、本土復帰の頃にはほとんど姿を消してしまいました。
代わりに登場したのが現在も泡盛の酒器の主流である「カラカラ」です。
「カラカラ」は丸い餅を参考にして、絶対に倒れない酒器として開発されたとされています。
それが鹿児島に伝わり、北上するにしたがって首の部分の長さが長くなっていくという特徴があります。
またその語源にはいくつかの説があり、沖縄の方言で「貸せ」という意味の「カラ」が元という説や
酒の席でお酒が足りなくなった時の「空(から)」からきているという話もあります。
他にも、中に入っている陶器の玉がお酒を注ぐ度にカラカラと音を鳴らすことから名付けたとも言われます。
その「カラカラ」が熊本に伝わって進化したものが「ガラ」です。
この酒器は球磨地方で米焼酎を飲む際に使われています。
「カラカラ」と比べて首の部分が長く、注ぎ口の部分も細く長くなっています。
それは「チョク」と呼ばれる小さな猪口に注ぎやすく進化した形のようです。
また有田焼や多治見焼のようなしっかりした陶器で作られていることも特徴の1つです。
以上に挙げた他にも、焼酎を飲む器には変わったものもあります。
宮崎には鳩の形に変化した「千代香」である「鳩ジョカ」があります。
元々清酒用に使っていた「日向チロリ」という器が進化したとも言われているものです。
また熊本にはユニークな猪口として「ソラギュウ」という器があります。
これは円錐形で独楽のような形なので、飲み干さないと置くことができないというものです。
酒吞みの多い地方の粋な器ですよね。
さて今回はちょっといつもとは違う目線で真面目な解説をしてみました。
それぞれの器も各原料の焼酎を飲むのに進化を繰り返しているものなので、是非試してみてほしいですね。
飲み方もそれぞれ割ったり温めたりといろいろありますしね。
余談ですがワタクシのお店でもいくつか揃えていますので是非!
それでは今回もオススメを紹介しておきましょう。
少し入手困難な限定品の芋焼酎です。
どこかで偶然にでも見つけたら買っておいても良いというものですよ。
* 今回のおすすめ焼酎 *
「甕御前」
芋焼酎・25度・鹿児島県・大石酒造
麹米に幻の米と称される「亀の尾」を使って、黄麹で仕上げた年間1000本程度の限定品です。
すっきりとした味と香りの中にも、しっかりと旨みのきいた秀作です。
山口 昌宏
焼酎・梅酒が日本一、GEN & MATERIALを経営。酒全般マニアの元バーテンダー。
株式会社GENコーポレーション社長。
バーテンダーをしている中で、2000年に焼酎と出会いマニアに。
焼酎ブームの火付け役ともされるEN-ICHIで修業後、独立。
現在、東京・渋谷に数店舗を持ち、大阪にプロデュース店有。
昨年、兵庫・高砂に焼酎日本一の店舗「セイエイカン」を開店。
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