紳士のための焼酎入門
第27回「ビンの焼酎、紙パックの焼酎、ペットボトルの焼酎、それぞれの理由(わけ)~ビン編~」
6月…じわじわと暑くなってきましたね。
毎年気がついたらセミが鳴いているような気がします。
この季節はお酒なら何でも飲める方なら泡盛がおすすめです。
なぜか亜熱帯の酒は夏に飲むのがうまいんですよね~。
沖縄料理もこの時期ぴったりなんで是非お試しください。
さて今月は焼酎の入れ物について考えてみようと思います。
以前の回で焼酎の器についてはお話ししてきたんですが、今回は販売時の形態についてです。
よく見るのはビン詰めされて売っている焼酎だと思います。
でもスーパーとかでよく見てみるとありますよね、1升の紙パックや大きなペットボトルも。
そして価格も少し割安だったりします。
なぜこんな風に分かれているんでしょう。
素朴な疑問です。
まずは定番のビンから考えていきましょう。
ビンと言えば真っ先に思いつくのが1升ビンですよね。
1800mlの容量のビンで、日本酒やみりん・醤油なんかでよく使われています。
そして大体おんなじ形のものが多いですよね。
これには理由があり、それは輸送とリサイクルに最適に考えられているんです。
赤や黄色のプラケースで6本ずつ運んでいるのをよく見かけませんか?
あれです。
あとビンの色もいろいろあります。
特に茶色のビンが多いのですが、それにも理由があります。
元々1升ビンは日本酒用に作られました。
しかし日本酒は温度変化や日光に極端に弱いため、紫外線を防ぐ効果のある茶色のビンが採用されたのです。
緑色のビンも同様の効果が期待されるので、緑色のビンもよく見ます。
最近では青いビンや透明のビンもよく見ますが、これはデザイン重視で作られたようです。
また高級そうに見える黒いビンは日光はシャットアウトしますが、熱を吸収してしまいます。
それぞれにいろいろ特性があるんですね。
ただし焼酎はそれらの変化にめっぽう強いお酒です。
なので基本的には上記のようなビンをすべて使うことができるんです。
割と焼酎のビンがバラエティーに富んでいるのはそういう理由です。
同じ銘柄でも茶色と緑色と透明が混在していたりします。
そうは言っても中には例外として、新酒の芋焼酎のようにデリケートな酒質のものもあります。
そういった種類のものは別にルールがあったりします。
冷蔵だったり、何かで包まれていたり、早めの賞味期限が決められていたりしています。
またビンには他のサイズのものもあります。
よく見るのは720ml、いわゆる4合ビンですね。
あと100mlのミニチュアボトルも目にしたことがあると思います。
数は少ないですが、4500mlという2升半のボトルもあります。
縁起を担ぐ意味で、升升半升(ますますはんじょう)と呼ばれています。
泡盛によくあるビンとしては600mlのビンがあります。
これはよく3合ビンとも呼ばれますが、厳密には3合は540mlなので少し多いです。
ではなぜ600ml?
これには諸説あるんですが、太平洋戦争後のアメリカ占領下時代の名残というのが有力とされています。
当時は在留米軍兵が捨てたビールのビンに泡盛を詰めて販売していたようです。
それが約600mlだったというのが一説です。
だから沖縄だけに600mlのビンが定番で存在するんですね。
ビンについて長々と語ってきましたが、後の入れ物についてもまだまだお話があります。
ので、なんと他のものについては来月改めて考えていきましょう。
…というか実は全部比べていくつもりだったのが、意外と長くなってしまったというのが事実です(笑)。
なのでタイトルにしれっと「~ビン編~」と足しておきました。
今回タイトルがとても長~くなってしまってすいません!
それでは今回もオススメを紹介します。
ビンの色が光沢のあるピンクでとても目を引く商品です。
毎年季節限定で販売されるので、市場で見る機会もかなり限られています。
見つけたら買って試し飲みしてみても決して損しない、そんな1本です。
こちらも当店の新店舗にも置きま~す。
* 今回のおすすめ焼酎 *
「利右衛門 新蔵出し」
芋焼酎・25度・鹿児島県・指宿酒造
秋頃に新酒として限定販売される、荒濾過仕上げの紅芋焼酎です。
フルーティーな香りとフレッシュで力強い旨味が最大の特長です。
山口 昌宏
焼酎・梅酒が日本一、GEN & MATERIALを経営。酒全般マニアの元バーテンダー。
株式会社GENコーポレーション社長。
バーテンダーをしている中で、2000年に焼酎と出会いマニアに。
焼酎ブームの火付け役ともされるEN-ICHIで修業後、独立。
現在、東京・渋谷に数店舗を持ち、大阪にプロデュース店有。
昨年、兵庫・高砂に焼酎日本一の店舗「セイエイカン」を開店。
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