紳士のための焼酎入門
第29回「ビンの焼酎、紙パックの焼酎、ペットボトルの焼酎、それぞれの理由(わけ)~ペットボトル編~」
セミの鳴き声が暑さを際立たせますよね~。
人間が五感で季節を感じ取るんだということを改めて実感します。
よくよく考えると不思議なことなんですよね。
ただそんなことを深く考えてられるほど、ワタクシ暑さに強くありません。
喉が渇いて、頭もぼーっとしてきました。
さあ早く原稿書きあげて一杯飲りたいです。
さて今月も引き続いてペットボトル編をお送りします。
3ヶ月にわたったテーマの最終章です。
まず「ペットボトルの焼酎」と聞いて、皆さんはどんな形を想像しますでしょうか?
たいていの方は、次の2つのうちのどちらかではないでしょうか。
2~5リットルの大容量タイプか、1合前後のカップ酒タイプか。
さあどちらを想像したでしょうか。
まずは大容量タイプのペットボトル焼酎について考察していくことにしましょう。
よく見るのは「大五郎」や「ジャイアント」のような甲類焼酎の大容量でしょう。
これらの焼酎は中身のお酒だけでも数キロの重さになります。
だからやはりビンで売ることになると輸送の効率が悪すぎますよね。
結局、紙パックかペットボトルに詰めることになってきます。
ではなぜ紙パックではなくペットボトルに大容量を詰めるのか?
コストだけでいうとペットボトルは紙パックの3倍高くつくと言われています。
ただし紙パックは強度に限界がある為、2リットル以上は容器に膨らみが生じてしまうようです。
また紙パックは再密封がきかないというのもデメリットの1つです。
焼酎のように消費期間の長いものは、やはり再密封が重要な要素になってきます。
以上の理由から、コストが高くてもペットボトルを採用しているということのようです。
でもそもそもお徳用で安価に販売するための手立てが大容量ペットボトルの存在価値のはず。
同じ容量なら4リットルのペットボトルより2リットルの紙パック2本の方が良いのでは?
素朴でまっとうな疑問ですよね。
お答えしましょう。
だから結果的に中身のより安い甲類の焼酎がペットボトルになりがちなんです。
実際、乙類の焼酎はコストの面から2リットルの紙パックを限度としているところが多いですよ。
乙類で大容量ペットボトルを採用しているのは、まさに企業努力の賜物といって過言ではないでしょう。
うんうん。
次はカップ酒タイプの焼酎についても考えてみましょう。
大容量については理由も前述の通りですが、カップ酒はその名の通りカップ(ビン)でも良いはず。
なぜペットボトルを使っているんでしょう。
それは単純に「軽い」からです。
せっかく小さいサイズにしたのだから軽い方が持ち運びにも便利なわけです。
逆に、ではなぜ日本酒などはビンのカップにこだわるのか、ですよね。
どうやらカップ酒は日本酒の「ワンカップ大関」が最初のようです。
その当時はまだペットボトルなるものがなかったのですよ。
そう言えばちなみに自販機なんかに売っていたのも250mlの缶ばかりでしたよね。
だからそのままコップとして飲めるようにビンが採用されたということのようです。
それに日本酒は燗をして飲むこともあるので、その点からもビンだったようです。
だからなぜペットボトルなのかというより、ペットボトルがベストということですよね。
200mlの容器に関しては少なくとも焼酎の方が進化の先を言っていると言っても良いでしょう。
日本酒も最近チラホラとペットボトルのものを見るようになりました。
ただ通の方々の意見は「美味しくない」というのが圧倒的です。
イメージ的にも日本酒はペットボトルが向かないのかもしれませんね。
今回は続編として最終の「~ペットボトル編~」についてお話ししてきました。
長々とつれづれと解説してきてようやくの決着です。
皆様ありがとうございました。
そしてここまで読んで頂いてお疲れ様でした。
それでは今回はここまでっ。
最後に今回のオススメ焼酎です。
今回も限定焼酎です。
そういえばなんとなくですけど、ここ最近、限定限定とつく商品が多くなりましたね~。
業界の苦しみを垣間見るシーンでもあります。
是非みんなで焼酎の業界を少しでも盛り上げていきましょう。
よく見る麦麹の焼酎の長期熟成品です。
* 今回のおすすめ焼酎 *
「知心剣 長期貯蔵」
麦麹焼酎・25度・京都府・宝酒造
2017年3月に限定販売された、麦の黒麹全量焼酎。
3年以上熟成させることで、従来品にまろやかな口当たりが加わっています。
山口 昌宏
焼酎・梅酒が日本一、GEN & MATERIALを経営。酒全般マニアの元バーテンダー。
株式会社GENコーポレーション社長。
バーテンダーをしている中で、2000年に焼酎と出会いマニアに。
焼酎ブームの火付け役ともされるEN-ICHIで修業後、独立。
現在、東京・渋谷に数店舗を持ち、大阪にプロデュース店有。
昨年、兵庫・高砂に焼酎日本一の店舗「セイエイカン」を開店。
紳士のための焼酎入門 その他の記事
- 山口 昌宏
- 第1回「焼酎とは一体何者か?」
- 第2回「焼酎の甲類と乙類って?」
- 第3回「焼酎はなぜ25度なのか?」
- 第4回「焼酎をお湯割りで飲む理由」
- 第5回「お湯割りの黄金比率?ロクヨンとは」
- 第6回「焼酎造りに必須の“麹”とは何か」
- 第7回「泡盛って一体何なのか?」
- 第8回「11月1日は焼酎の日!」
- 第9回「焼酎は日持ちするのか?」
- 第10回「お神酒と焼酎」
- 第11回「芋焼酎になるのはどんな芋?」
- 第12回「芋焼酎をより楽しむ為のさつまいも講座」
- 第13回「焼酎にオリが出てますけど飲めますか?」
- 第14回「どんなものから焼酎が造られるのか?」
- 第15回「焼酎の銘柄と九州の方言」
- 第16回「かすとり焼酎とは何なのか?」
- 第17回「焼酎と健康について考える」
- 第18回「続・焼酎と健康について考える」
- 第19回「焼酎とみりんの意外な関係」
- 第20回「芋焼酎にもヌーボーがありますっ!」
- 第21回「黒糖焼酎は他の焼酎とはいろいろ違うのだっ」
- 第22回「焼酎を飲む時の器あれこれ」
- 第23回「焼酎を選ぶ時のラベルの見方」
- 第24回「そば焼酎についていろいろ掘り下げてみよう」
- 第25回「焼酎をなにかしらで割って飲む楽しみ」
- 第26回「すだち酎は焼酎じゃない?!」
- 第27回「ビンの焼酎、紙パックの焼酎、ペットボトルの焼酎、それぞれの理由(わけ)~ビン編~」
- 第28回「ビンの焼酎、紙パックの焼酎、ペットボトルの焼酎、それぞれの理由(わけ)~紙パック編~」
- 第30回「痛風でも焼酎なら飲んでいいって本当?」
- 第31回「焼酎に音楽を聴かせるということ」
- 第32回「焼酎で渋柿の渋みが抜けるって本当?」
- 第33回「沖縄県民と泡盛 ~泡盛の真実と現状~」
- 第34回「竹焼酎とはどういうものなのか」
- 第35回「焼酎の味を決めている成分とは?」
- 第36回「焼酎と水について考える」
- 第37回「焼酎を造っていない都道府県はあるのか?」
- 第38回「焼酎をロックで飲むということ」
- 第39回「変わった原料というより、ちょっと面白い原料からできている焼酎を知ろう」
- 第40回「焼酎をベースとして使う飲み物各種」
- 第41回「実際に焼酎を作る人、杜氏とは」