紳士のための焼酎入門
第4回「焼酎をお湯割りで飲む理由」
ここのところ毎週のように酒蔵見学に回っている担当の山口です。
ただし焼酎の蔵ではなく、日本酒やビール・ワインを造っているところばかりなんですけど…。
ワタクシお酒全般が好きですんで、はい。
今回は九州で焼酎がお湯割りで飲まれているその理由について、考えていきましょう。
ちなみに首都圏を中心として本州では、焼酎はロックや水割りで飲まれる方が多いのが現状です。
それはやはりウイスキーやブランデーと同じ蒸留酒というくくりで考えられたからだと思われます。
もう10数年も前になりますが、乙類の焼酎ブームを牽引してきたのは間違いなくロックスタイルです。
新しい蒸留酒としての本格焼酎をロックでやるのが「かっこいい」…だったんですね。
さて話を本題に戻しますが、ではなぜあくまで本場九州ではお湯割りが主流なんでしょうか?
江戸時代の百科事典「和漢三才図会」に焼酎の記述があります。
それによると焼酎は暑気払いの酒とされているんです。
アルコール度数の高い焼酎を暑い夏に熱いお湯割りにして飲むことで、喉を潤すと同時に、夏バテ予防の効果があると考えられていたようです。
特に九州のような夏の暑さが一段と厳しい地域では大切な習慣として根付いていったようです。
また本格焼酎の良さはその味わいと風味にありますが、その良さを生み出しているのはお酒の成分の中のごくわずかな一部分だとも言われています。
つまり焼酎は他の飲み物と比べても、とてもデリケートだということなんです。
人によっては風土や天候、その日の感情によっても味が変わると言われるくらいです。
そんなほんのちょっとしか含まれていない本来の風味が、お湯で割ることで温められて際立ってきます。
そうしてふうわりと香りが漂うことを「焼酎の花」が咲くと表現するくらいです。
このように味と香りを増幅させる方法が、お湯割りということでもあるんです。
さらにもう一つの理由はこれは水割りにも共通して言えることですが、当然飲み口がやわらかくなるという部分です。
日本人はもともと蒸留酒を飲むという風習が古くからある人種ではありません。
そもそもアルコールを分解する酵素が西洋人に比べて少ないのも事実です。
だから25度というアルコールに対してもちょっとハードルの高さを感じるのです。
本能的に「割って飲む」という飲み方が定着していくのも納得ですよね。
さて今回は焼酎をお湯割りで飲むことについてつれづれと語ってきたわけですが、なんとなーくでも理解していただけましたでしょうか。
お酒はちょっとした知識を持って飲むだけでも、いいつまみにもなります。
またそれだけでも焼酎が美味しくなるというのは前述の通りですので、また次回も少しお勉強していきましょう。
それでは今回も一本、旬な焼酎をご紹介しておきますね。
* 今回のおすすめ焼酎 *
「日向木挽 紫芋仕込み」
芋焼酎・25度・宮崎県・雲海酒造
本来は宮崎県内限定であった銘柄です。
紫芋を使うことで上品な香りと優しい口当たりの芋焼酎に仕上がっています。
山口 昌宏
焼酎・梅酒が日本一、GEN & MATERIALを経営。酒全般マニアの元バーテンダー。
株式会社GENコーポレーション社長。
バーテンダーをしている中で、2000年に焼酎と出会いマニアに。
焼酎ブームの火付け役ともされるEN-ICHIで修業後、独立。
現在、東京・渋谷に数店舗を持ち、大阪にプロデュース店有。
昨年、兵庫・高砂に焼酎日本一の店舗「セイエイカン」を開店。
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