Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
是非学びたい気になるテーマについて学んでいきます。

紳士のための焼酎入門

第36回「焼酎と水について考える」

この6月18日。

大阪で地震がありまして、安否確認のメールをたくさんいただきました。

心配して頂いていた方々、ワタクシは元気にしております。

…というかワタクシのいる兵庫県も揺れましたが、どんっと短時間でした。

被害も特になし。

それと比べてホントに大阪方面ではかなりの被害が出ているようです。

大阪で亡くなられた方のご冥福をお祈りしつつ、ここからはコラムを進めていきます。

 

それでは今回は前回からの続きのようにもなりますが、焼酎と水についてお話ししていきます。

実に焼酎を構成する物質の8割程度を水が占めています。

それだけ焼酎にとって、水というのはとても大事な要素だと言えます。

焼酎に限らず、酒全般にとっても水は関係性のとても深いものですが、今回は特に焼酎。

焼酎と、その製造工程で入ってくる水について考えていこうと思います。

 

まず最初、焼酎の原料を洗うという作業で水を使います。

この工程がなくては何も始まりません。

いきなり製造のスタートから水は関わってくるんですね。

芋や米、麦など味の中心となるもの自体を洗浄します。

そしてそのまま米や麦などは「蒸し」の工程に入る前に、素材に対して適度な吸水をさせます。

一般的には浸漬と呼ばれます。

原料の味を左右する、最初の大事な作業と言えます。

 

次に仕込みという、キモとなる作業に入ります。

ここでも仕込み水と呼ばれる重要な役割を、水が担っています。

通常、焼酎は一次と二次の2回の仕込みを経て完成へと向かいますので、水の使用も2段階です。

1回目は麹に仕込み水と酵母を加えて一次モロミを造り出します。

そしてその一次モロミに主原料となる素材と更に仕込み水を加えて発酵を促すものが二次モロミです。

この二次モロミを蒸留して焼酎となっていくわけです。

 

ここで今出てきた蒸留という工程ですが、それはまたここまでの工程とは意味合いが変わります。

いままでは水を「加える」という足し算の作業でした。

それがこの蒸留という工程では引き算の作業に変わります。

水分を分離するという工程です。

モロミからアルコールの方を抽出し、水を抜きだそうという工程なんです。

ただし重要なのは、水の中のわずかな味覚成分はおうおうにして焼酎の方に移っていくということです。

 

さてここまでで焼酎が生み出されているわけですが、今度はこれを商品化します。

以前にお勉強して頂いた酒税法の関係で、主に25度まで和水されます。

またここでも水が登場するわけです。

仕込みに使われた水が使われることが一般的です。

これはそのまんま皆さんの喉元を通っていくものなので、味に影響すること必至ですよね。

 

このように、こんなにも焼酎には水の存在が大きいということがおわかり頂けたでしょうか。

もっというと焼酎のビンは基本的にリサイクルなので、その洗浄にも水が必須です。

また近年流行の兆しを見せていた前割りスタイルでも、水は更に味を決定づける要因となります。

よく仕込み水などが最近手に入るようになってきたのも、こうして焼酎の味を左右するからですね。

蔵元さんもできる限り自分たちの目指した味を味わってほしいでしょうからね。

さらには飲み方まで指示してくる蔵元さんがいるということも少し付け加えておきます。

ちなみにワタクシは「好きな飲み方で好きな焼酎を飲んでほしい」派ですっ(笑)。

 

そんな水自体の解説も少し付け加えておきましょう。

焼酎造りでは、仕込み水と呼ばれた水がほぼすべての工程で使われます。

蔵によってそれぞれ様々な水を使っていますが、大きく分類するなら以下の分類があります。

温泉水や河川の水、山からの伏流水、地下水、海洋深層水などなど…。

またpH値によってアルカリ水から中性の水まで、使われる蔵によっていろいろです。

ただし酸性は酒造りには不向きだと言われています。

 

水に含まれるミネラル分によっても味わいは大きく変わります。

有名どこで言うなら、神戸の宮水のような硬水を仕込み水で使う地域もあります。

反対に京都の伏水などは軟水だったりします。

その地域の酒類の味わいの基礎を作っているのは水だったりするわけです。

 

それでは最後に代表的な仕込み水と焼酎の蔵元の組み合わせを少し並べておきましょう。

焼酎を飲む時のチェイサーでも、前割り用の水にでも参考にしていただけるように…。

・温泉水寿鶴     … 大海酒造

・霧島裂罅水     … 霧島酒造

・こしき海洋深層水  … 吉永酒造 (最近、蛍水に変更)

・吉野山系の龍ヶ水  … 白金酒造

・球磨川の伏流水   … 八代不知火蔵 (割り水には白川水源水)

・じょうご川の水   … 奄美大島酒造

・霊峰冠嶽山の地下水 … 山元酒造

・屋久島宮之浦岳流水 … 三岳酒造

・綾川湧水群     … 雲海酒造

・人吉球磨の地下水  … 球磨地方の焼酎蔵

・竹田湧水群     … 大分の焼酎蔵

・温泉水財宝     … 財宝銘柄の焼酎

などなど…。

 

さて今回は焼酎と水について語ってきました。

いろいろ焼酎を飲む時の参考になっていただければ幸いです。

ちょっといつもより長くなってしまいましたね~。

まあそれだけテーマが深いということでもあります!

ちなみに今回のコラムからアップ日を毎月20日に変更いたしました。

月の後半になった分だけ力を注げれば、と思っております。

 

それでは今回もおすすめの焼酎を一本紹介しておきましょう。

仕込み水の最後に紹介している温泉水財宝のシリーズです。

飲料水としても人気の温泉水だけに、水の個性も感じられます。

またまた当店入荷済みです。

是非皆さんもお試しくださいませ~。

 

* 今回のおすすめ焼酎 *

「赤財宝 & 黒糖財宝ゴールド」

芋焼酎 & 黒糖焼酎・各25度・鹿児島県・本坊酒造 & 奄美大島酒造

温泉水財宝を使用した、綾紫芋で仕込んだ芋焼酎と樫樽熟成の黒糖焼酎。

どちらもほのかな甘みを含む味わいが特長で、香りも豊かなタイプの焼酎。

山口 昌宏
焼酎・梅酒が日本一、GEN & MATERIALを経営。酒全般マニアの元バーテンダー。

株式会社GENコーポレーション社長。
バーテンダーをしている中で、2000年に焼酎と出会いマニアに。
焼酎ブームの火付け役ともされるEN-ICHIで修業後、独立。
現在、東京・渋谷に数店舗を持ち、大阪にプロデュース店有。
昨年、兵庫・高砂に焼酎日本一の店舗「セイエイカン」を開店。

東京 焼酎&梅酒Bar GEN&MATERIAL

和歌山おでんと焼酎専門店セイエイカン

和歌山おでんと焼酎専門店セイエイカン インスタグラム

ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

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