紳士のための焼酎入門
第19回「焼酎とみりんの意外な関係」
少し肌寒くも感じ始めた今日この頃。
それでもお酒は美味いっっ!
この時期は外で飲むのがおすすめです。
ということで、またクラフトビアホリデーなるイベントに行ってきました。
1日中ビールを飲み過ぎて帰りの電車爆睡でしたよ~。
さて本題に入っていきましょう。
今回は焼酎からちょっとずれて、みりんについて語ってみようと思います。
なんでみりん?
そう思う人も割といると思います。
それは実は、みりんが焼酎を原料としているからです。
ワタクシのお店でも、焼酎専門店としてみりんも飲めるようになっています。
その辺について、少し深く掘り下げていきましょう。
それではみりんの製法について簡単に解説します。
みりんは日本酒の古酒と同じような造り方をします。
日本酒は米+米麹+仕込み水で造られる醸造酒です。
みりんがそれと違う部分は、主原料は米ではなくもち米であるということ。
それともうひとつ。
仕込み水は使わず焼酎で仕込むというところです。
ということで焼酎とみりんの意外な関係とはこういうことなんです。
ただしひとつ注意しておきたいことがあります。
ここでいう「みりん」が一体なんなのか?
え?どういうことでしょう?
ここまでお話してきた「みりん」は正確には「本みりん」のことです。
皆さんのご家庭にあるほとんどの「みりん」とはほぼ別物です。
普段よく使われているこの「みりん」は製法が全く違ったりします。
「みりん風調味料」とか「発酵調味料」などという品名になっていると思います。
これらにはほぼ焼酎は入っていません。
ほぼノンアルコールの完全なる調味料なんです。
逆に「本みりん」はお酒です。
ですから、以前に話題に上った酒税法の影響の及ぶ飲み物だということです。
そうです、飲み物なんです。
あんまりみりん自体を舐めることはないかと思いますが、すごく甘いです。
飴のような甘さがあります。
そのまま飲むにはどうかな~って感じの。
なので昔、江戸時代頃から飲用としてさまざまな工夫がされてきています。
そのひとつが「本直し」という飲み方です。
飲みにくい酒を手直しする「直し」という言葉に由来する呼び名です。
上方の方では「柳蔭(やなぎかげ)」とも呼ばれていたようです。
それはいわゆる焼酎のみりん割で、1:1くらいの比率で割っていたようです。
夏には、暑気払いとして井戸で冷やして飲んでいたということになっています。
他にもお屠蘇(とそ)が1つの例として挙げられます。
お正月に飲む風習のある酒の一種ですが、これもみりんが元です。
日本酒と本みりんを合わせたものの中に、屠蘇散(とそさん)を漬け込んだものがそれ。
屠蘇散は薬局などで手に入る漢方薬の一種なんです。
5~10種類の生薬が配合されたもので、血行を良くし胃腸を活発にする効能があるとされています。
食べ過ぎや飲み過ぎになりがちなお正月には確かにもってこいですね。
また意外なところでは、養命酒もみりんから作られているんです。
こちらもみりんに14種類の生薬を漬け込んだものです。
そしてれっきとした医薬品なんですね~。
しかも400年以上の歴史があるそうですよ。
人間本来の治癒力を正常化して、いろんな症状を改善する効能があるとのことです。
さてここまでみりんを中心に話を進めてきましたが、焼酎との関係もわかっていただけたでしょうか。
とても深い関係性がありますよね。
皆さんも是非「本直し」試してみてくださいね。
ワタクシも…やってみようかな~…。
ま、人それぞれ好みなんぞもありますので!
んじゃ今回もおすすめの焼酎を紹介しておきましょう。
樽による熟成のきいた、コクの深い黄金色の麦焼酎です。
* 今回のおすすめ焼酎 *
「極み勇者」
麦焼酎・25度・福岡県・研醸
焙煎麦で醸した麦焼酎「勇者」をオーク樽で5年熟成した逸品です。
麦と樫の強い香りと古酒のまろやかさが最大の魅力です。
山口 昌宏
焼酎・梅酒が日本一、GEN & MATERIALを経営。酒全般マニアの元バーテンダー。
株式会社GENコーポレーション社長。
バーテンダーをしている中で、2000年に焼酎と出会いマニアに。
焼酎ブームの火付け役ともされるEN-ICHIで修業後、独立。
現在、東京・渋谷に数店舗を持ち、大阪にプロデュース店有。
昨年、兵庫・高砂に焼酎日本一の店舗「セイエイカン」を開店。
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