紳士のための焼酎入門
第15回「焼酎の銘柄と九州の方言」
梅雨入りした地域もチラホラある今時分。
気分もモヤモヤしちゃいますよね。
焼酎でも飲んでパーッと明るくやりましょう。
この後は暑い暑い夏がやってきますよ。
ロックが美味しい季節がもう目の前です~。
てなわけで、ここのところ硬い感じのテーマが多かったので、今回は緩めで行こうかなと。
焼酎の銘柄でよく使われている方言、特に九州弁について解説していこうと思います。
「この焼酎、美味しい!」と感動はしても、銘柄の意味が分からなかったりすることありません?
ワタクシメの焼酎バーでも、これよく聞かれるんですよ。
そんな時さらっと答えてあげたいものですよね。
焼酎で圧倒的に意味の分かりにくい銘柄が多いのは、鹿児島弁です。
同じ九州弁の中でも南に行けば行くほど、言葉も難解になっていくようです。
奄美地方になればさらに標準語から遠ざかっていきます。
同じ九州の人同士でも全く分からないこともあるくらいだそうですよ。
まずはその鹿児島弁から見ていきましょう。
ズラリと箇条書きにして注釈を足していってみます。
「方言…意味、その名前の焼酎を出している蔵(原料)、追記」のスタイルにしてみました。
あいうえお順でもなんでもありませんが、思いつくままにつれづれと書いていきます。
それではスタート!
おやっとさあ…おつかれさま、岩川醸造(芋)
わっぜ…すごい、白金酒造(芋)
きばいやんせ…がんばれ(女性的表現)、薩摩酒造(芋)、男性的表現は「きばれ」
かいもしょちゅ…芋焼酎、白金酒造(芋)、語源は「唐芋焼酎」
いっだましい…精魂込める、出水酒造(芋)、漢字で「生魂」
こいじゃが…これだ!、鹿児島酒造(芋)
がらるっど…怒られるぞ、国分酒造(芋)
たまがっど…びっくりするよ、国分酒造(麦)
じゃっど…その通り、鹿児島酒造(芋)
よくろぼ…酔っ払い、丸西酒造(芋)
すんくじら…隅っこ、杜氏の里笠沙(芋)、銘柄は「薩摩すんくじら」
おごじょ…女性、山元酒造(芋)、銘柄は「さつまおごじょ」
げんもん…本物、小鹿酒造(芋)
ぼっけもん…大胆な人、軸屋酒造(芋)
ぶにせ…不細工な男性、佐田宗二商店(芋)、漢字で「不二才」
せえごれ…酒呑み、西平本家(黒糖)、奄美の方言
あじゃ…おやじ、奄美大島にしかわ酒造(黒糖)、奄美の方言
まだあるんでしょうけど、割と知られているものでもこれだけあります。
さすが鹿児島!
ほとんど素のままでは意味がわかりませんでした。
それでは九州の他の地域のものも次に羅列してみましょう。
頭の部分に県名を入れていきます。
(大分)なしか…どうして?!、八鹿酒造(麦)
(大分)いいちこ…良いよ、三和酒類(麦)
(大分)しらしんけん…一生懸命、宝酒造(麦)、漢字で「知心剣」
(大分)ほげほっぽ…でたらめ、久家本店(麦)
(大分)やつがい…晩酌、三和酒類(麦)
(宮崎)だれやみ…晩酌、櫻乃峰酒造(芋)、「だれやめ」「だいやめ」も同義
(宮崎)ないな…なんでだろう?、明石酒造(芋)
(熊本)もっこす…頑固者、松の泉酒造(米)
(熊本)とっぺん…てっぺん、美少年酒造(麦)
(熊本)どぎゃん…どんなに、八代不知火蔵(麦)
さて、ここまでとにかく九州の方言の焼酎銘柄を並べてきました。
なんとなく九州の人の人格を表すような言葉が焼酎の銘柄として使われていますね。
少し自虐的な部分があるのも「らしさ」なのかもしれません。
そういう方たちが酒づくりに携わっている酒が焼酎だということですね。
そんなことに思いを馳せながら一杯飲るのもオツではないでしょうか。
それではなんとなくまとまったところで、今回もまたおすすめを紹介しておきます。
鹿児島の風土の詰まった1本です。
* 今回のおすすめ焼酎 *
「紫黄相良」
芋焼酎・25度・鹿児島県・相良酒造
南薩摩産の稀少紫芋「頴娃紫」を使用した、粗濾過仕上げの濃厚な一本。
黄金千貫の黄麹仕込みとのブレンドが、フルーティーというだけではない旨みを演出しています。。
山口 昌宏
焼酎・梅酒が日本一、GEN & MATERIALを経営。酒全般マニアの元バーテンダー。
株式会社GENコーポレーション社長。
バーテンダーをしている中で、2000年に焼酎と出会いマニアに。
焼酎ブームの火付け役ともされるEN-ICHIで修業後、独立。
現在、東京・渋谷に数店舗を持ち、大阪にプロデュース店有。
昨年、兵庫・高砂に焼酎日本一の店舗「セイエイカン」を開店。
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