紳士のための焼酎入門
第9回「焼酎は日持ちするのか?」
今年は今のところ暖冬だそうです。
洋服をどうすべきか毎日迷ってしまう、担当の近藤です。
最近、暑いと寒いの間の季節がなくなってきていませんか?
春物や秋物の服の登場シーンが少なくなってきています。
ちょっとその辺のものは買うの控えようかな…。
さて今回は焼酎の賞味期限について考えていきたいと思います。
ずっと焼酎バーを経営してきて案外多く聞かれる質問なんですよね。
その場で飲んでいる焼酎というよりも、家にある焼酎のことが気になるようです。
なので電話で「ちょっと聞きたいんだけど…」という感じでもよく聞かれますよ。
その辺を今日ははっきりさせておきたいですね。
まず最初にどかんと断言してしまいましょう。
安心してください。
焼酎に賞味期限はありません!
焼酎はまず腐らないんです。
基本的にアルコール度数が高いので、腐敗に関係する菌がほぼ繁殖できないんですね。
一般的に10度以上のアルコールなら大丈夫と言われています。
では風味や香りに変化はないんでしょうか。
保存方法に気を付けてさえいれば、未開封のものは一部のものを除けば問題ありません。
「一部のもの」というのは何か?
それは新酒や無濾過・荒濾過といわれるような雑味成分の多いものです。
蒸留酒はそういった成分がほとんど製造過程で除去されてしまうのですが、あえてその部分を多めに残しているものはそれだけ品質に変化が出るというわけです。
ですから蔵元さんなどもそういったものは3ヶ月以内の飲み切りをおすすめしています。
また未開封に限定するということは、開封後のものは風味や香りに変化が出るということですね。
それはそうですが安易に劣化と捉えるのは早合点です。
焼酎の一番おいしい飲み方は、実は開封して少し空気と触れてからなんです。
それもワインのように分単位ではなく、数日~数週間おいてからが一番酒質が落ち着いてきます。
それを注ぐ直前に少し振ってやるのが、焼酎の飲み方としては最高です。
アルコールが馴染んでからが焼酎の本領発揮の場面なんです。
その後は緩やかに熟成が進んでいきます。
蒸留酒としては劣化と呼ばず、熟成と呼ぶのが適当でしょう。
ウィスキーやブランデーと同じ考え方でいいのですが、熟成のピークはそれぞれのもので違ってきます。
ピークを越えたら初めて劣化が始まったと考えてあげればいいでしょう。
最後に保存方法についても少しだけ解説しておきましょう。
蒸留酒はあまり保存の仕方くらいで酒質は変わらないと思われがちですが、意外と影響を受けます。
直射日光は極力避けるようにして下さい。
また高温多湿なところもマイナスの効果を及ぼします。
冷蔵庫の野菜収納室が最適ではありますが、床下収納や押入れくらいが適当でしょう。
未開封であれば問題ないレベルで保たれます。
今回はダッシュで解説していきましたが、最後におすすめの焼酎を紹介しておきます。
あの芋焼酎「一刻者(いっこもん)」に新作が仲間入りしました。
* 今回のおすすめ焼酎 *
「一刻者 紫」
芋焼酎・25度・鹿児島県・小牧醸造
宮崎と鹿児島のみで育てられた紫芋だけで、麹まで100%の紫芋焼酎です。
希少な原料を使っているため、限定出荷となっています。
山口 昌宏
焼酎・梅酒が日本一、GEN & MATERIALを経営。酒全般マニアの元バーテンダー。
株式会社GENコーポレーション社長。
バーテンダーをしている中で、2000年に焼酎と出会いマニアに。
焼酎ブームの火付け役ともされるEN-ICHIで修業後、独立。
現在、東京・渋谷に数店舗を持ち、大阪にプロデュース店有。
昨年、兵庫・高砂に焼酎日本一の店舗「セイエイカン」を開店。
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