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紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
是非学びたい気になるテーマについて学んでいきます。

紳士のための焼酎入門

第21回「黒糖焼酎は他の焼酎とはいろいろ違うのだっ」

さて年末です。

なんか今年もあっという間に過ぎていった気がします。

年々早くなっていくような…。

これが歳をとっていくってことなのかもしれません。

なんだか少し怖くなってきました。

 

さて今回は黒糖焼酎についてお話ししていこうと思います。

なぜ黒糖焼酎をピックアップするか?

それは他の焼酎と成り立ちや分類などがずいぶん違うからなんです。

生産地域も鹿児島県の奄美地方に限定されています。

その辺りについて書いていこうと思います。

 

まずは黒糖焼酎の歴史についてです。

時代を遡ること、約500年前。

江戸時代頃、奄美地方では泡盛を中心とした酒造りが行われていました。

そこに奄美大島出身の直川智(すなおかわち)によってサトウキビが持ち込まれます。

一説とされるそのストーリーは以下の通り。

 

『1605年。

琉球にわたる途中だった直は台風に遭い、中国の福建省に漂着しました。

当時中国では他国の人間に製糖技術を教えることは禁止されていました。

しかし直は1年半の滞在中にサトウキビの栽培法と黒糖の製法を習得。

帰国する際に密かにサトウキビの苗3本を持ち帰り、その技術を広めたとされています。

これが日本で最初の製糖とも言われています(諸説あり)。』

 

その後1609年に奄美は今の鹿児島、薩摩藩の支配下となります。

そうすると黒糖は特産品として藩の収入源となり、島民は黒糖生産を強要されました。

なので黒糖で焼酎を造る余裕などなかったのですが、どうやら密造酒として存在したようです。

文献には「留汁焼酎」や「砂糖せうちう」という酒が言い伝えられています。

島民のたくましさが感じられるこの酒が、黒糖焼酎の原型とされています。

 

明治・大正時代に入ると政府の管理下での製造が主となってきます。

密造に対する取り締まりも厳しくなり、共同の醸造所の設置が推進されました。

こうしてこの頃に現在でも操業中の蔵元がいくつも開業されました。

ただし幾度もの戦争によって物資不足となり、黒糖の酒だけを常に造るような状況ではなかったようです。

そしていよいよ第二次世界大戦が始まると、供給体制が崩れ、再び密造が横行していきました。

 

終戦を迎えて、奄美地方はアメリカの統治下に置かれます。

その中で改めて蒸留所が臨時政庁の税収源として推奨されました。

ただ米を原料に泡盛を造る蔵が多いにもかかわらず米の確保ができないのが実状でした。

そこで当時、特産品として移出規制がかかり島内に余ってきていた黒糖が再び米の代替品とされました。

 

1953年に奄美地方が日本に返還されると、また状況が一変します。

日本の税法に当てはめると、黒糖原料の蒸留酒は「ラム酒」に該当する酒でした。

他の焼酎に比べて3割近くも税率が高くなってしまうのです。

そこで島民たちは政府に対して陳情をし、その結果特例が設けられたのです。

それは奄美群島でのみ、米麹の使用を条件に特産の焼酎として認めるというものでした。

逆に宮古島や八重山諸島などは税務署の管轄が違う為、従来通りには造れなくなりました。

しかしこうしてようやく生まれたのが黒糖焼酎です。

なので現在の黒糖焼酎は必ず米麹を使うように義務付けられています。

 

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長々と歴史について考察してきましたが、黒糖焼酎の本質についても触れておきましょう。

現在では地域ブランドとして「奄美黒糖焼酎」という商標が登録されています。

それによって品質の保持と新たな発展が見込まれるようになってきました。

安定した流通網も近年は整備されていて、全国どこでも入手可能な焼酎となっています。

 

またよく言われるのが、黒糖焼酎が「糖質ゼロ」ということに対する疑問です。

いずれかの回でもお話ししましたが、焼酎は本来糖質ゼロの酒です。

それはたとえ原料が糖質そのものである黒糖であっても同じこと。

あくまで蒸留という過程で糖質は除去されるんです。

 

とはいっても甘いんではないかという疑問もよく聞きます。

飲んだことのある方はわかると思いますが、酒質は辛口です。

風味だけがほんのり甘みを帯びているというのが実感でしょうか。

味わいは何とも言えない黒糖独特の深みの部分が表出しています。

これがまさに黒糖焼酎なんです。

 

ここで黒糖焼酎の特殊性をまとめてみましょう。

本来は酒税法により糖質で造られるものは「焼酎」ではないとされています。

なぜなら麹を必要とせずアルコール醗酵ができてしまうからです。

そしてそれこそが「ラム酒」だからです。

ただし前述の歴史的背景から特例として、黒糖焼酎は認められています。

米麹を使用することを前程として。

また奄美地方に限って。

黒糖焼酎には他の焼酎と比べて随分と制約がありますよね。

 

今回は黒糖焼酎一点で話を進めてきました。

これを機に飲んだことのない方は是非一度飲んでみていただきたいですね。

好みはそれぞれにある嗜好品なんで、一度は試してみてほしいです。

ちなみにワタクシは10年近く前に黒糖焼酎にハマってましたよ。

 

それでは今回もオススメを紹介しておきます。

テーマに沿って、奄美特産の味わい深い黒糖焼酎です。

 

 

* 今回のおすすめ焼酎 *

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「奄美の結」

黒糖焼酎・25度・鹿児島県・奄美大島酒造

「結」というのは、奄美に根差す昔ながらの助け合いの心を示します。

奄美大島さんの黒糖と地下水を原料に仕上げた、香り高い黒糖焼酎です。

 

山口 昌宏
焼酎・梅酒が日本一、GEN & MATERIALを経営。酒全般マニアの元バーテンダー。

株式会社GENコーポレーション社長。
バーテンダーをしている中で、2000年に焼酎と出会いマニアに。
焼酎ブームの火付け役ともされるEN-ICHIで修業後、独立。
現在、東京・渋谷に数店舗を持ち、大阪にプロデュース店有。
昨年、兵庫・高砂に焼酎日本一の店舗「セイエイカン」を開店。

東京 焼酎&梅酒Bar GEN&MATERIAL

和歌山おでんと焼酎専門店セイエイカン

和歌山おでんと焼酎専門店セイエイカン インスタグラム

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