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紳士のためのアートデート

☆紳士のためのアートニュース☆2016年10月☆               アート界のノーベル賞『第28回高松宮殿下記念世界文化賞』受賞者決定!

❖賞の概要❖

 高松宮殿下記念世界文化賞は、日本美術協会によって1988年に創設された賞で、絵画、彫刻、建築、音楽、演劇・映像の各分野で、世界的に顕著な業績をあげた芸術家に毎年授与されます。歴代受賞者が27カ国、144人となったこの世界文化賞受賞者の顔ぶれは、錚々たる方々。賞金はなんと、それぞれ1500万円!日本人の歴代受賞者としては、草間彌生氏、安藤忠雄氏、小澤征爾氏、黒澤明氏らが名を連ねています。

 2016年の受賞者は、絵画部門:シンディ・シャーマン氏、彫刻部門:アネット・メサジェ氏、建築部門:パウロ・メンデス・ダ・ホッシャ氏、音楽部門:ギドン・クレーメル氏、演劇・映像部門:マーティン・スコセッシ氏。その分野で知らない人はいない大御所達。受賞者同席で開催された記者会見、また、常陸宮、同妃両殿下をお迎えして東京・元赤坂の明治記念館で行われた授賞式典の取材内容をレポートします。

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受賞者推薦にあたった国際顧問の皆さん(前列)と受賞者の皆さん(後列)     受賞者の皆さん

【絵画部門受賞:シンディ・シャーマン氏】

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米・ニューヨーク州ロングアイランドの自邸にて、2016年

 1980年代、自らを被写体としてさまざまな人物に変身させ、映画のワン・シーンを思わせる白黒写真作品《アンタイトルド・フィルム・スティル》で一躍注目を浴びた。2012年にMoMAで大規模回顧展を開催。2015年にはマリア・カラスが使用した衣装をまとい、オペラ映画『プリマドンナ』に出演。2016年は5年振りの新作として、1920年代の女優に扮した写真20点を二カ月で制作、発表した。

受賞の感想として、「『ニューヨーク・タイムズ』でこの世界文化賞の広告を見たときに、これは芸術のノーベル賞だと非常に心を動かされたことを覚えております。ですから、本当に幸運だと感じておりますし、大変光栄に存じます」と発言。60代とは思えない若々しさとチャーミングさのある方でした。

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授賞式典のカクテルパーティーにて、現代美術家で写真家の杉本博司氏と談笑するシンディ・シャーマン氏

【彫刻部門受賞:アネット・メサジェ氏】

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パリ郊外のアトリエにて、2016年

【彫刻部門受賞:アネット・メサジェ氏】

 1970年代から身近な小物や雑誌、日用品などの日常の素材を使った作品を創作。1982年には、写真モンタージュとファンタジーを融合させた作品群《キマイラ》シリーズを発表した。2005年にヴェネツィア・ビエンナーレ金獅子賞を受賞。2008年に森美術館で日本初の大規模個展『アネット・メサジェ:聖と俗の使者たち』を開催。浮世絵師・歌川国芳の手法を参考にするなど日本文化にも造詣が深い。越後妻有トリエンナーレにても作品を制作したメサジェ氏は、「2015年、(新潟県)越後妻有で作品(つんねの家のスペクトル)をつくりました。非常に想像力を刺激する場所で、古い家全体がオブジェです。」とコメント。

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授賞式典のカクテルパーティーで、以前メサジェ氏の展覧会を企画した現横浜美術館館長の逢坂恵理子氏と談笑するアネット・メサジェ氏。

【建築部門受賞:パウロ・メンデス・ダ・ホッシャ氏】

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『サンパウロ州立美術館』(1993年改修設計)内にて、ブラジル・サンパウロ、2016年

 2004年に世界文化賞を受賞した、ブラジルを代表する建築家、オスカー・ニーマイヤーに次いでブラジル二人目の受賞。1970年の大阪万博で『ブラジル館』を設計した。2006年のプリツカー賞受賞もニーマイヤーに次いでブラジル二人目。今年のヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展で金獅子賞を受賞した。大阪万博の『ブラジル館』設計の際は、「頻発する地震に備えるため、強化されたプレストレスト・コンクリート(PC)でつくり、屋根を4点で支え、2つの交差するアーチから成り立たせました。」とのこと。日本の地震対策に苦心されたのかもしれませんね。

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受賞式典には、代理として出席した子息の建築家ペドロ・メンデス・ダ・ホッシャ氏が出席

【音楽部門受賞:ギドン・クレーメル氏】

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仙台にて、2016年5月

 ラトビア(旧ソ連)のリガ出身(ラトビア・ドイツ二重国籍)。両親と祖父がヴァイオリニストという音楽一家で育つ。16歳で国内の音楽コンクールで優勝。1969年パガニーニ国際、1970年チャイコフスキー国際の各コンクールで一位となる。1976年にヘルベルト・フォン・カラヤンに抜擢され、ベルリン・フィルと共演、世界のトップ・ヴァイオリニストの地位を確立する。1977年の初来日公演以降、日本各地で公演している。受賞式典では、受賞者を代表して「これまでにこの賞を受けた、卓越した芸術家の仲間入りができることを光栄に思う。」とスピーチ。終始笑顔で、ユーモラスな発言で笑いをとっていたのが印象的。

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受賞式典では、受賞者を代表し、ヴァイオリニストとして初の受賞となったギドン・クレーメル氏がスピーチ。

【演劇・映像部門受賞:マーティン・スコセッシ氏】

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ニューヨークの製作会社シケリア・プロダクションズ内のオフィスにて、2016年

  1970年代初めからアメリカ映画界の新進として注目された。生まれ育ったニューヨークを舞台に、暴力や裏社会を描く映画が多いが、信仰、誘惑、罪や贖罪など、道徳や宗教的なテーマを通じて、社会の暗部や人間精神の奥底をあぶり出していくのが特徴。1976年に『タクシードライバー』でカンヌ映画祭パルム・ドール、2006年に『ディパーテッド』でアカデミー賞を初受賞。1990年には映画の補修・保存のための非営利組織「映画財団」を設立。黒澤明監督の『夢』(1990)にゴッホ役で出演した。遠藤周作原作の映画『沈黙-サイレンス-』が201612月末にアメリカで公開(日本は2017年公開)。
記者会見では、遠藤周作の小説を原作にした最新監督作「沈黙-サイレンス-」について質問を受け、「27年以上撮りたいと思ってきたもので、やっと実現した」と回答。「2009年に長崎県を取材した際は、まるで17世紀の隠れキリシタンの人々と会っているようでした。」と感想を述べました。
マーティン・スコセッシ氏からの若いクリエーターへのメッセージとしては、「何を言いたいかを知ることが重要。それがわかったら、伝えるために燃えることだ!You have to burn! その言いたいことを発しなければ眠らないくらいにね!」とのこと。力強いお言葉ですね。

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受賞式典では、2016年の新作映画『沈黙-サイレンス-』に出演するイッセー尾形氏らと談笑する姿も見られたスコセッシ氏。
スコセッシ氏大ファンの筆者も思い切ってサインをリクエストしてみたところ、「名前は?」と言って書いてくれるなど、とても紳士な方でした!

 来年の高松宮殿下記念世界文化賞は、どなたが受賞されるのか、今から楽しみです!

菊池麻衣子 
【現代版アートサロン・パトロンプロジェクト代表、アートライター、美術コレクター】
東京大学卒:社会学専攻。 イギリスウォーリック大学大学院にてアートマネジメントを学ぶ。ギャラリー勤務、大手化粧品会社広報室を経て2014年にパトロンプロジェクトを設立。

【月刊誌連載】2019年から《月刊美術》「菊池麻衣子のワンデイアートトリップ」連載、《国際商業》アートビジネスコーナー連載
 資格:PRSJ認定PRプランナー
同時代のアーティスト達と私達が展覧会やお食事会、飲み会などを通して親しく交流する現代版アートサロンを主催しています。 美術館やギャラリーなどで「お洒落にデート!」も提唱しています。

パトロンプロジェクトHP:  http://patronproject.jimdo.com/
パトロンプロジェクトFacebook: https://www.facebook.com/patronproject/
菊池麻衣子Twitter: @cocomademoII

インスタグラム:https://www.instagram.com/cocomademois/

ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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