Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

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是非学びたい気になるテーマについて学んでいきます。

キュビスムの全体像をつかめるぞ!ピカソ&ブラック発、ダイバーシティに満ちたキュビスムの物語が国立西洋美術館にて展開

キュビスムと言えば?ピカソ!
ピカソと言えば?キュビスム!
このように、お互いがお互いの代名詞になるほどこの2者は切っても切り離せない関係にあります。ということで、2023年10月3日から国立西洋美術館で始まった50年ぶりの大型「キュビズム展―美の革命」の見どころの一つは、ピカソによるキュビスム作品12点です。中でも、パリポンピドゥーセンターから来日した「輪を持つ少女」は、マル・サンカク・シカクを巧みに組み合わせたカラフルなキュビスム少女が浮かび上がってきて、イチオシです 

おっと、ピカソばかりハイライトしてしまいましたが、実はピカソとともにキュビスムを生み出した芸術家がいます。それがジョルジュ・ブラック。今回、ブラックの作品も充実していて、15点展示されています。そして、ブラックの作品は、次のように説明されるキュビスムの特徴がとても読み取りやすいのです!
 
キュビスムとは「複数の視点を用いたり、幾何学的形態に単純化された図形によってグリッド(格子)状に画面を構成することで、描かれる対象を再現的、模倣的、写実的に描写する役割から絵画を解放し、より自律的な絵画を作り出した美術運動」(「パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展―美の革命」公式図録:田中正之氏の論考より)

「キュビスム展一美の革命」展示風景、国立西洋美術館、2023-2024年

例えば写真 右の作品<ギターを持つ女性>を見ていると、女性の体やギターを、マル・サンカク・シカクなどの幾何学的形態を組み合わせて 形作り、グリッド状にしていることが分かりますし、 正面からだけでなく 横や斜め下 など複数の視点から見たパーツを組み合わせていることも分かります。

「キュビスム展一美の革命」展示風景、国立西洋美術館、2023-2024年

色が塗っていない版画は、線がよく見えて、より一層 キュビスム的な構成がくっきりとしていますので見てみてください。

また、「セザンヌの作品にしか見えない!」とつぶやいてしまうような ブラックによる作品も展示してあり 興味深いところです。

「キュビスム展一美の革命」展示風景、国立西洋美術館、2023-2024年

特に写真左側の作品」<レスタックの高架橋>は、隅々まで セザンヌスタイルが 貫かれていて、画家の松浦寿夫氏も次のように指摘しています。

「限定的な数の色彩の使用、方向性を備えた構築的な筆触の並置、色面とその境界線とのずれ、塗り残された画布の余白の散乱といった共通の特徴を見出すことができるが、いずれもセザンヌの作品に顕在化する特徴であり、この段階で、ブラックはセザンヌの絵画の原理的な理解を深化させえたといえる」 (「パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展―美の革命」公式図録より) 

そして、当のセザンヌ 本人の原画も展示されているので、ブラックの作品と見比べることができるのも この展覧会の素晴らしいところです。

「キュビスム展一美の革命」展示風景、国立西洋美術館、2023-2024年

キュビスムを直接産んだのは ピカソとブラックですが、 それでも セザンヌが「キュビスムの父」と呼ばれている理由が今回はっきりと分かりました。

ここまで 前半がオーソドックスなキュビスム史。
後半は、ピカソやブラック以後におけるキュビスムの展開と影響に着目した展示になっています。フェルナン・レジェやフアン・グリスといったキュビスムの中核をなす作家はもちろんのこと、詩的なキュビスムとも評されたドローネー夫妻や、シャガールなど、キュビスムを吸収しつつ独自の理論と感性でそれを発展させた作家たちの作品が賑やかに登場します。立体を2次元の絵画で表現するプロセスで生まれたキュビスムが、また立体として「再出現」した過程も見られ、キュビスム も やはり「ダイバーシティ」を受け入れつつ発展してきたのだな~と現代社会と重ね合わせて妙に納得。 

輝く色彩が魅力のグリスのキュビスムはこちら。 「セクション・ドール(黄金分割)」にこだわり、詩人であり美術批評家のギヨーム・アポリネールに「ロジックの悪魔」とも評されたグリスならではの美意識が響いてきます。 

「キュビスム展一美の革命」展示風景、国立西洋美術館、2023-2024年

同じく「セクション・ドール(黄金分割)」を唱えたレジェによるこの作品は、整然として なんだかメカニカルです。

フェルナン・レジェ<タグボートの甲板>1920年 ポンピドゥーセンター所蔵

ピカソ、ブラックとは異なるアプローチでキュビスム旋風を巻き起こした「サロン・キュビスト」であったロベール・ドローネーの《パリ市》も初来日。さわやかな色彩であふれる幅4メートルの大作の中には、様々な形をした幾何学片で構成された三美神や、エッフェル塔などのモチーフに溢れています。写真撮影 OK なのも嬉しい! 

「キュビスム展 ― 美の革命」展示風景より、ロベール・ドローネー《パリ市》(1911)ポンピドゥーセンター所蔵

シャガール はド直球に「キュビスムの風景」という作品を残しています。ピンクが基調でラブリー。

「キュビスム展一美の革命」展示風景、国立西洋美術館、2023-2024年

立体としての キュビスム作品としては、ブランクーシによるつややかな彫刻が登場。そもそもキュビズムの誕生に、「アフリカの彫像」が影響を及ぼしたことを思い出させてくれる作品です。

「キュビスム展一美の革命」展示風景、国立西洋美術館、2023-2024年

「キュビスム」を知ってしまった人類が生み出す美術には、これからも何かしら キュビスムのエッセンスがちりばめられていくことでしょう。進化し、さらに多様化していく中で、また世界を驚かせるような「美の革命」が起こるのかもしれません!なんだか 待ち遠しい! 

【展覧会 基本情報】
タイトル:「パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展―美の革命
ピカソ、ブラックからドローネー、シャガールへ」
会期:2023年10月3日~2024年1月28日
会場:国立西洋美術館
住所:東京都台東区上野公園7-7
電話番号:050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間:9:30〜17:30(金土〜20:00)※入室は閉室の30分前まで
休館日:月(ただし10月9日、2024年1月8日は開館)、10月10日、12月28日~2024年1月1日(月・祝)、1月9日
料金:一般 2200円 / 大学生 1400円 / 高校生 1000円 / 中学生以下無料
※京都市京セラ美術館に2024年3月20日~7月7日に巡回

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菊池麻衣子 
【現代版アートサロン・パトロンプロジェクト代表、アートライター、美術コレクター】
東京大学卒:社会学専攻。 イギリスウォーリック大学大学院にてアートマネジメントを学ぶ。ギャラリー勤務、大手化粧品会社広報室を経て2014年にパトロンプロジェクトを設立。

【月刊誌連載】2019年から《月刊美術》「菊池麻衣子のワンデイアートトリップ」連載、《国際商業》アートビジネスコーナー連載
 資格:PRSJ認定PRプランナー
同時代のアーティスト達と私達が展覧会やお食事会、飲み会などを通して親しく交流する現代版アートサロンを主催しています。 美術館やギャラリーなどで「お洒落にデート!」も提唱しています。

パトロンプロジェクトHP:  http://patronproject.jimdo.com/
パトロンプロジェクトFacebook: https://www.facebook.com/patronproject/
菊池麻衣子Twitter: @cocomademoII

インスタグラム:https://www.instagram.com/cocomademois/

ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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