Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
是非学びたい気になるテーマについて学んでいきます。

アメリカに印象派を広めた画家・ハッサムに注目👀「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」がより面白くなる~!

印象派がヨーロッパやアメリカへもたらした衝撃と影響をたどる展覧会が始まりました。
この展覧会では、本家本元パリで生まれた印象派の傑作とともに、アメリカ各地で独自に展開していった印象派の名作をたっぷり鑑賞できるのが醍醐味です。
東京都美術館にて4月7日まで。
展覧会公式サイトにもある通り、「海を越えて花開いた“アメリカ印象派”」が今展見どころの柱なのですが、あまりなじみがないのでとっかかりを探していると……。輝く陽光の中で白いドレスの女性が庭園で花を摘む絵が目に飛び込んできました。
描いたのはアメリカ人画家のチャイルド・ハッサム。

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チャイルド・ハッサム 花摘み 、《フランス式庭園にて》 1888 年 ウスター美術館

長い歴史があるからこそのフランス式庭園に対する素直な憧れと、新大陸ならではの新鮮な眼差しがミックスしているようで、モネたちが描く印象派とは違った魅力がジワリ。そしてハッサムこそが、サマースクールや芸術家コロニー(芸術家村)を通じて、印象派をアメリカ各地に広めた立役者の1人なのです。こちらのフランス式庭園の絵は、ハッサムが1886年からパリの名門アカデミー・ジュリアンに留学した際に描いたものなのですがその1年前にはこのような絵を描いています。パリ留学前にボストンに住んでいた頃の絵です。

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チャイルド・ハッサム 《コロンバス大通り、雨の日》 1885 年 ウスター美術館

都会だし、雨が降っているしで、先ほどのフランス庭園の絵とは全く雰囲気が違いますね。遠景に塔が見えるモヤのかかった建物の景色は、モネの「ロンドン連作」を思わせますが、雨で濡れた道路が光を反射する様子からは、都会的な新しさを感じます。この絵は、1883年にハッサムが初めてパリを訪れてフランス近代絵画に出会った経験の産物ですが、まだ「印象派とはなんぞや?」と探っているのかな~といった雰囲気。
そんなことを考えている私の目の前にドカ〜ンと現れたのがこの海景。

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チャイルド・ハッサム 《シルフズ・ロック、アップルドア島》 1907 年 ウスター美術館

「モネでしょ!」と叫びたくなった瞬間にキャプションを見ると、作者はハッサムではありませんか!パリに留学して先ほどのフランス式庭園の絵を描いてから約10年後。
なんとすばらしく印象派になりきったことでしょう!
そしてこちらの絵を見てください。

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クロード・モネ 《税関吏の小屋・荒れた海》 1882 年 日本テレビ放送網株式会社

こちらはハッサムではなく、モネの絵です。
なんだかひっかけ問題みたいになってしまい失礼しました!(笑)

これほどまでに特徴が近接したパリの「印象派」と「アメリカ印象派」ですが、モティーフには決定的な違いがあります。パリの印象派作品の中では、アメリカの風景を見ることがほとんどできないということです。ですので、印象派のような画風のアメリカの風景画をコレクションしたいという需要が高まれば、やはり「印象派の描き方をマスターしたアメリカの画家」が必要になるということなのでしょう。
ただ、「印象派の技術を完璧にマスターしましたよ」というだけでは、アメリカの印象派も芸がありません。アメリカらしい主題をうまく表現するために手を加えたり、抽象度を高めたりしながら独自の進化を続けていきます。ハッサムも1909年からは、「都会の環境にある家庭の室内に1人いる女性を描いた〈窓〉」という独特なシリーズを手がけています。

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チャイルド・ハッサム 《朝食室、冬の朝 、ニューヨーク》 1911 年 ウスター美術館

この絵の空気感は、印象派というよりはポスト印象派のボナールのよう。室内の女性は中上流階級の方と見えて、髪をきれいにアップにしたブルーのガウン姿で朝食の時間を過ごしています。華やかな黄色い花を隣に、積んである果物からオレンジを1つお皿にとって食べようとしているようです。ゆっくりとした休日の朝のようですが、ちょっと寒そうなのは、カーテン越しに都会の雪景色が見えるからでしょうか。室内はヨーロピアンな感じもしますが、窓の外の風景がアメリカ的!というのも、遠くに高くそびえる摩天楼のシルエットが見えるからです。このように、パリの印象派にはないモティーフを取り入れつつ、カーテン越しの風景はアメリカ独自の抽象化を予見させてくれます。

1877年の第3回印象派展に出品された、ベルト・モリゾの似たような構図の絵と比べてみましょう。バルコニーでくつろぐ前景の女性と、背景に広がる海と山の自然。約40年の時代を隔てて近代アメリカニューヨークで描かれたハッサムの絵に、印象派の進化系を見ることができると思いませんか?

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ベルト・モリゾ 《テラスにて》 1874 年 東京富士美術館

アメリカの印象派を代表する画家ハッサムの展示作品を軸に展覧会をご紹介してみましたがいかがでしたか?
そうそう、最後にこの展覧会の重要作品を1点お伝えしておきます。
モネの《睡蓮》です。今でこそ、世界中で知られているモネの《睡蓮》シリーズですが、ウスター美術館が世界で初めてモネの《睡蓮》を美術館として購入したのがこの作品なのです。私は今まで見てきた《睡蓮》シリーズの中でもとりわけ優しい空気をこの1点から感じました。「安心して!」と語りかけてくれているようなふんわりとした静けさを是非実物に対面して感じてみてください。

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クロード・モネ 《睡蓮》 1908 年 ウスター美術館

【展覧会基本情報】
タイトル:印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵
会期:2024年1月27日~4月7日
会場:東京都美術館
住所:東京都台東区上野公園8-36
開室時間:9:30〜17:30(金〜20:00) ※入室は閉室の30分前まで
休室日:月(ただし2月12日、3月11日、3月25日は開室)、2月13日
※土曜・日曜・祝日及び4月2日(火)以降は日時指定予約制(当日空きがあれば入場可)

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菊池麻衣子 
【現代版アートサロン・パトロンプロジェクト代表、アートライター、美術コレクター】
東京大学卒:社会学専攻。 イギリスウォーリック大学大学院にてアートマネジメントを学ぶ。ギャラリー勤務、大手化粧品会社広報室を経て2014年にパトロンプロジェクトを設立。

【月刊誌連載】2019年から《月刊美術》「菊池麻衣子のワンデイアートトリップ」連載、《国際商業》アートビジネスコーナー連載
 資格:PRSJ認定PRプランナー
同時代のアーティスト達と私達が展覧会やお食事会、飲み会などを通して親しく交流する現代版アートサロンを主催しています。 美術館やギャラリーなどで「お洒落にデート!」も提唱しています。

パトロンプロジェクトHP:  http://patronproject.jimdo.com/
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菊池麻衣子Twitter: @cocomademoII

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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