Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
是非学びたい気になるテーマについて学んでいきます。

紳士のためのアートデート

Vol.21「N・S・ハルシャ展:チャーミングな旅」@ 森美術館開催期間:2017年6月11日(日)まで☆

【展覧会開催概要】
 インド出身で世界的に活躍しているN・S・ハルシャによるアートと生(生きること)の壮大な旅。全て写真撮影可能というのも嬉しく、ハルシャの世界にすっかり入り込んでしまう感覚の展覧会です。
 
インドや世界のグローバル化(による搾取や貧富の差)に批判的な姿勢を感じる作品もありますが、主張が明確で色彩や描写が明るいのでむしろ爽快。「食べること」や「寝ること」など生きる根源にかかわるテーマも多く、思考が羽ばたきます。中でも、靴を脱いで入る体験型の作品《空を見つめる人びと》は、通常忘れていた空を見上げる行為をアートの中で体験でき、床や天井のアートと自分自身や同じ場に居るみなさんがブレンドして新しいアートが生まれてくるようです。鏡の効果もあってユニークな写真も撮れますので、いろいろトライしてみてください。思考も体も大きく解放される展覧会。アートデート向きです!


六本木ヒルズ森タワー53階にある森美術館へのエントランス


ハルシャ展の旅へ!

 【私たちは来て、私たちは食べ、私たちは眠る】
 展覧会場入ってほどなく出会うのが、大きな3点組の絵画《私たちは来て、私たちは食べ、私たちは眠る》です。この作品は、ハルシャが、人々を多数並列して描くスタイルを確立する契機となった作品であると同時に、出生から死まで、人生の多様な段階が、移動する、食べる、眠るといった日常的な行為を通して描かれていて、ハルシャの根源的なテーマが凝縮されているように感じます。


《私たちは来て、私たちは食べ、私たちは眠る》1999-2001年 合成樹脂絵具、キャンバス 172.1 x 289.3 cm、169.7 x 288.5 cm、172.2 x 289.2 cm
所蔵:クイーンズランド・アートギャラリー、ブリズベン


《私たちは来て、私たちは食べ、私たちは眠る》(部分) 1999-2001年 合成樹脂絵具、キャンバス
所蔵:クイーンズランド・アートギャラリー、ブリズベン


《私たちは来て、私たちは食べ、私たちは眠る》(部分) 1999-2001年 合成樹脂絵具、キャンバス
所蔵:クイーンズランド・アートギャラリー、ブリズベン


《私たちは来て、私たちは食べ、私たちは眠る》(部分) 1999-2001年 合成樹脂絵具、キャンバス
所蔵:クイーンズランド・アートギャラリー、ブリズベン 

 【世界各地のグローバル化の実態を時に辛口に表現する「チャーミングな国家」シリーズ】
  ハルシャの故郷マイスールを舞台にさまざまな物語が展開する、「チャーミングな国家」シリーズには、1990年代初頭の市場開放以降に起きたインドの社会的な変化が織り込まれ、グローバルに繋がる世界経済の影響を示唆しています。現在の私たちがまさに渦中にある、グローバル化、反グローバル化の世界状況を予見していたような場面を興味深く見ることができます。


《グリニッジ標準時》(「チャーミングな国家シリーズ」より)2006年 アクリル、キャンバス 97 × 97 cm ラヴニート・シン・ジル氏蔵
ハルシャは世界有数のアートフェアで知られるスイスのバーゼルで見た数かずの見本市に触発されて「アームズ・アンド・アートフェア(武器と美術の見本市)」を描いた。マイスールのスタジオにいてもつねに歴史や美術の中で闘わなくてはならないというアーティスト自身の葛藤や、インドの防衛政策の矛盾など複数の物語が組み合わされている。ダミアン・ハーストの作品と思われるホルマリン漬けされたサメが画中で異様な存在感を放っている!


《王様との食事においでよ》(「チャーミングな国家シリーズ」より)2006年 アクリル、キャンバス 97.5 × 97.5 cm アンジャリ&ゴラヴ・グローバー氏蔵
観光客向けに、マハラジャ(インドの王様)との食事会を開催した宮殿の商業的な運営に対して皮肉を込めた作品。


《マクロ経済は日給 30 ルピーか 60 ルピーかで 論争する》2004年 アクリル、キャンバス 168 × 290 cm マリニ・スリニヴァサン氏蔵
伝統的な農業が、外国資本によって侵されていくことを暗喩するような作品。

 【ハルシャの多彩なキャラクターを楽しめるコーナー。総数2000人?!】
 大作《ここに演説をしに来て》に登場するのは、ハルシャによるチャーミングなキャラクター約2000人!老若男女、映画のヒーロー(スーパーマンなど!)から現代のアートスター、インドの神々や動物まで多種多様です。近づいて発見したり、遠ざかって椅子に座ったりしながらゆっくりすごしてみてはいかがでしょうか。


《ここに演説をしに来て》2008年 アクリル、キャンバス182.9×182.9 cm(×6)


《ここに演説をしに来て》(部分)2008年 アクリル、キャンバス182.9×182.9 cm(×6)

 【アートと一体になり、思い思いの体験ができる《空を見つめる人びと》。心身ともに解放!】 
  ハルシャの絵画が描かれるのは、キャンバスだけではなく、床や壁、公園の地面や寺院の屋上まで様々です。ハルシャの思いもよらないユニークな発想から生まれた作品の中で、観客はその一部になって、すっかりハルシャの世界に取り込まれてしまいそう。
 《空を見つめる人びと》は、まさにそのような作品。「ちょっと寄ってみよう」と靴を脱いで入ったら。。。夢中になって想像以上に時間が過ぎているかもしれませんよ!


体験型作品《空を見つめる人びと》 に入り、撮影などを楽しむ人々。滞在時間は長い。


体験型作品《空を見つめる人びと》 の世界は上下に拡がる。靴を脱ぐので、思わず伸び伸びとくつろいでしまう。


《空を見つめる人びと》作品の画中の人々とコラボレーションするのもいいかも。

  インスタグラマー向けのイベント「#emptyMoriArtMuseum」にても多数の画像投稿で話題になった《空を見つめる人びと》。#Emptyは閉館日や閉館後の人けのない美術館に少数のインスタグラマーを招き、写真を撮影・発信させる試み。米国の写真家デイブ・クルーグマン氏が発案して2013年にニューヨークのメトロポリタン美術館で初開催されて以来、各地に広がっていますが、日本初の#Emptyは、森美術館が「N・S・ハルシャ展」にて開催したとのこと。ハルシャの自由なクリエイティビティに溢れた作品は、美術館が仕掛ける最先端の試みとも相性が良いのですね。

  それでは、みなさん、good luck! アートと共に楽しいひとときを!

 【開催概要】
展覧会名:N・S・ハルシャ展:チャーミングな旅
会期:2017年2月4日(土)―6月11日(日)
会場:森美術館(東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53階)
開館時間:10:00-22:00|火 10:00-17:00
*いずれも入館は閉館時間の30分前まで *会期中無休
入館料:一般1,800円、学生(高校・大学生)1,200円 、子 供(4歳―中学生)600円、シニア(65歳以上)1,500円*表示料金に消費税込 *本展のチケットで展望台東京シティビューにも入館可(スカイデッキを除く)*スカイデッキへは別途料金がかかります

菊池麻衣子 
【現代版アートサロン・パトロンプロジェクト代表、アートライター、美術コレクター】
東京大学卒:社会学専攻。 イギリスウォーリック大学大学院にてアートマネジメントを学ぶ。ギャラリー勤務、大手化粧品会社広報室を経て2014年にパトロンプロジェクトを設立。

【月刊誌連載】2019年から《月刊美術》「菊池麻衣子のワンデイアートトリップ」連載、《国際商業》アートビジネスコーナー連載
 資格:PRSJ認定PRプランナー
同時代のアーティスト達と私達が展覧会やお食事会、飲み会などを通して親しく交流する現代版アートサロンを主催しています。 美術館やギャラリーなどで「お洒落にデート!」も提唱しています。

パトロンプロジェクトHP:  http://patronproject.jimdo.com/
パトロンプロジェクトFacebook: https://www.facebook.com/patronproject/
菊池麻衣子Twitter: @cocomademoII

インスタグラム:https://www.instagram.com/cocomademois/

ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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