Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
是非学びたい気になるテーマについて学んでいきます。

紳士のためのアートデート

Vol.5 東京都美術館(上野)の『ポンピドゥー・センター傑作展』          開催期間: 2016年9月22日(木・祝)まで

 今年2016年に開館90周年を迎える上野の東京都美術館ですが、2012年にリニューアルした建物はポップでモダン。カラフルな椅子や窓からの眺めもおしゃれですし、カフェやレストランも併設されていて、ステキなデート環境も整っていると言えるでしょう。

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東京都美術館外観 ©東京都美術館

 今回は、まさにこの建築空間にぴったりフィットした『ポンピドゥー・センター傑作展』にてのアートデートをご案内いたします。

 展覧会概要❖

 1977年にパリの中心部に開館したポンピドゥー・センターは、美術や音楽、ダンス、映画など、さまざまな芸術の拠点として多くの人々を惹きつけ、世界屈指の近現代美術コレクションが名高い美術館。本展は、1906年から1977年までのタイムラインにそって、1年ごとに1作家の1作品を紹介しているのが特徴。例えば1935年には、1935年ピカソ作の《ミューズ》を展示。同じ作家は2度と出てきません。ピカソ、マティス、デュシャン、クリストなどの巨匠の傑作もあれば、日本ではあまり知られていないアーティストの名品もあるのですが、とにかく一歩踏み出すごとに感嘆の声を上げてしまうような作品のオンパレード。次は何だろう?とワクワクしながら観ているうちにあっという間に出口という感覚です。様々な国籍のアーティスト達による多彩な作品なのですが、全員フランスにゆかりの有る人々であることも面白いポイント。ほぼ全ての作品の横に制作した作家のポートレートと粋な言葉が添えられているので合わせて鑑賞すると楽しいです。結構イケメンが多いことも特徴かも。本展担当学芸員の水田有子さんにご案内いただきました。

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水田有子学芸員

☆アートデートスタート☆

 まず最初に出迎えてくれるのがこのラウル・デュフィの作品。フランスのトリコロールが「いらっしゃい」と歓迎してくれているよう。家々も道行く人々もカラフルで陽気。1906年夏の1枚。7月14日、陽気なパリ祭のドラピエ通りです。楽しいデートになりそう!

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ラウル・デュフィ 《旗で飾られた通り》1906年 油彩、カンヴァス

☆ここでアートデートおすすめの会話例I☆

あなた 「パリでデートしてるみたいだな。○○さん(一緒にいる女性)、

     今日の装いパリジェンヌみたいでステキ」

女性  「そお?ありがとう」

あなた 「前から思ってたけど、○○さんて、女優のマリオン・コティヤー

     ルに似てるよね!」

女性  「ホント?うれしい!」

【ポイント】

 美人女優に似てると言われたら、女性は嬉しいもの。どことなく似てるなと思っていたら、良いタイミングで伝えてみましょう。「私ってそうかな~」と心の中で微笑むと思いますよ。

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 ほどなく登場するのが、こちら!マルセル・デュシャンの《自転車の車輪》。20世紀アートの発明「レディ・メイド」。男性小便器《泉》(1917)はご存じの方も多いのでは?既製品をオブジェとして提示したデュシャンの「レディ・メイド」作品は、1960年代にレプリカが制作され、世界中の美術館に所蔵されています。

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マルセル・デュシャン 《自転車の車輪》  1913/1964年 金属、塗装された木材

今話題のこの方の作品も出てきます。ル・コルビュジエの《静物》。

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ル・コルビュジエ 《静物》1922年 油彩、カンヴァス ©FLC / ADAGP,Paris & JASPAR,Tokyo,2016 E2181

 ル・コルビュジエが設計した国立西洋美術館が、今年、世界文化遺産に登録されたことで注目を浴びていますね。同じ上野ですので、是非国立西洋美術館とこの絵画作品と両方見比べてみてはいかがでしょうか。画家として活動していた時期もあったコルビュジエ。絵画から余分なものをすべて取り除きたいという願望を持ち、この作品も純粋で本質的な形で構成されています。建築のように注意深く組み立てられていると言えるでしょう。

  そして、パリ気分を一層盛り上げてくれるのが、ロベール・ドローネーの《エッフェル塔》!この見上げる角度が臨場感を与えてくれますね。色もリズムも楽しい作品。抽象画家としても知られるドローネーですが、エッフェル塔を主題にしたシリーズは、1910年代にはじまり、1926年まで続きます。

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ロベール・ドローネー《エッフェル塔》1926年 油彩、カンヴァス

 1935年の作品は、パブロ・ピカソの《ミューズ》です。チラシやポスターにもあり、今回初来日のピカソの代表作。想像以上に大きく色彩豊かで力強い筆致。このインパクトと華々しさに圧倒されました。この1枚を観るためだけに来場する価値があるといっても過言ではありません!

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チラシやポスターに採用されているパブロ・ピカソの《ミューズ》

 水田学芸員によると、この作品は《ゲルニカ》が描かれる2年前の作品。私生活においては激動の辛い時期にあったとか。「眠っている女性はピカソの愛人だったマリ=テレーズではないかと言われています。穏やかな寝顔ですね。実は、この後、マリ=テレーズの妊娠がきっかけとなり、妻オルガと別居することになります。手前でデッサンを描いている女性はオルガだとする説もあります」と教えてくれました。そう言われてみると、手前の女性はかなり怖い顔をしています。鮮やかで一見楽し気にも見える色彩と形のコンビネーションなのですが、背景にあるエピソードと合わせて鑑賞するとより深みが出てきますね。ピカソの言葉「私は他の人が自伝を書くように絵を描いている」も意味深!

  お隣には、ピカソと同じくスペイン出身パブロ・ガルガーリョのユニークな彫刻もあります。

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パブロ・ガルガーリョ《預言者》

 ヴァシリー・カンディンスキーの作品も見えてきますよ。カラフルでリズム感のある作品が多い印象のカンディンスキーの作品としては、モノトーンの油彩画は珍しいとのこと。ジョアン・ミロらの影響もあり厳格な幾何学的抽象から、生物に似たモティーフへと変化してきた時期。展示してある《30》では、30の四角いマスにそれぞれ異なるものが描かれていて、確かに生物的モティーフもいくつか見られます。水田学芸員に今展で好きな作品を尋ねると、この作品が最初に上がりました。

ヴァシリー・カンディンスキー《30》

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ヴァシリー・カンディンスキー《30》

 来場者の皆さんに大人気なのは、アンリ・マティスの《大きな赤い室内》!第二次世界大戦を生き抜いた79歳のマティス、1948年の作品です。南仏ヴァンスのアトリエを描き、赤い画面に陽気な色彩が踊っています。花瓶の花、動物の毛皮、テーブルや椅子の黒い曲線、それぞれユニークなのに調和して、それぞれの魅力も際立っています。平面的だけど中に入っていきたくなる不思議な絵。長年室内をモティーフに描き続けてきたマティスが室内を描いた最後の一点。

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アンリ・マティス 《大きな赤い室内》1948年 油彩、カンヴァス

 冒頭にもお伝えしましたが、イケメンアーティストが結構多いので、アーティストの顔写真も要チェックです。

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アレクサンダー・カルダー          ベルナール・ビュフェ 

 1960年からの作品が展示されている2階は、半円形のテーブルの中に入って手元にアーティストの写真や言葉を見ながら、その視線の先にある作品を観るという楽しい設え。2人で並んで立ち、遊び感覚で鑑賞できそうです。

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☆アートデートおすすめの会話例II☆

あなた 「楽しかったね。今度一緒にパリのポンピドゥーにも行きたい

     ね!」

女性  「いいね!」

【ポイント2】

アートデートのフィナーレに、さりげなく海外旅行を提案してみましょう!

ミュージアムグッズをプレゼントしてみては?❖

  今回、オリジナルミュージアムグッズが充実しています。中でもユニークなイチオシはこちら。水彩絵の具12色が入ったペイントボックスで、ドローネーのエッフェル塔の絵柄もポップ。

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コネクターペイントボックス 2,160円。 中身はこんな感じで、パズルのように色の順番を変えることもできます。

 リサとガスパールのグッズもかわいらしく充実!なんと、リサは、ポンピドゥー・センターに住んでいるのだそうです。ご存知でしたか?

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絵本『リサのおうち』 1,296円

それでは、みなさん、good luck! アートと共に楽しいひとときを!

 【展覧会基本情報】

展覧会タイトル:「ポンピドゥー・センター傑作展 ―ピカソ、マティス、デュシャンからクリストまで―」

会場:東京都美術館 (上野)

会期:2016年6月11日(土) ─ 2016年9月22日(木・祝)

開室時間:9:30~17:30

※金曜は20:00まで

※8/5[金]、6[土]、12[金]、13[土]、9/9[金]、10[土]は21:00まで

※入室は閉室の30分前まで

休室日:月曜日

※ただし9月19日[月・祝]は開室

観覧料:一般1600円、大学・専門学生1300円、65歳以上1000円、高校生800円

TEL: 03-5777-8600(ハローダイヤル)

URL: www.pompi.jp

 

菊池麻衣子 
【現代版アートサロン・パトロンプロジェクト代表、アートライター、美術コレクター】
東京大学卒:社会学専攻。 イギリスウォーリック大学大学院にてアートマネジメントを学ぶ。ギャラリー勤務、大手化粧品会社広報室を経て2014年にパトロンプロジェクトを設立。

【月刊誌連載】2019年から《月刊美術》「菊池麻衣子のワンデイアートトリップ」連載、《国際商業》アートビジネスコーナー連載
 資格:PRSJ認定PRプランナー
同時代のアーティスト達と私達が展覧会やお食事会、飲み会などを通して親しく交流する現代版アートサロンを主催しています。 美術館やギャラリーなどで「お洒落にデート!」も提唱しています。

パトロンプロジェクトHP:  http://patronproject.jimdo.com/
パトロンプロジェクトFacebook: https://www.facebook.com/patronproject/
菊池麻衣子Twitter: @cocomademoII

インスタグラム:https://www.instagram.com/cocomademois/

ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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