Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
是非学びたい気になるテーマについて学んでいきます。

紳士のためのアートデート

福田美蘭の絵を入口に日本美術の中に入れるよ✨難しそうな昔の絵も、実は時空が動き、音も聞こえる映画のような世界だった!

アーティストの脳になって作品を鑑賞すると、いつもの作品が違ったように見えるのかな?と思ったことはありませんか?
今回の展覧会では、「全然違って見えてエキサイティングだ!」ということがはっきりとわかりました。

その展覧会とは、『福田美蘭展 千葉市美コレクション遊覧 』@千葉市美術館です☀

伝統的な日本美術 を、福田美蘭さんの作品を通して、彼女の脳になって見る体験がスムーズにできるのです。
見慣れた浮世絵からも、ちょっとよくわからなかった日本画からも、全く新しい世界が広がって「そうだったんだ!」とガッテンの嵐♪

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福田さんが解釈して描いた絵とその「もと絵」を隣り合わせで見ることで、
画中の登場人物の視点で周囲が見えてきたり、会話がわかってきたり、周囲の音が聞こえてきたり!!すごいでしょ?

でも、ここにはもう1つポイントがあって、実は、見ただけではちょっとよくわからないのです。。。作品の隣に書いてある福田さん自身の解説を読むと、スルスルスル~っと謎が解けて「あ~そうか~」となるのです。

例えば、この、世にも不思議な《慧可断臂図 折かわり絵 (4 枚組)》。
一番左が、雪舟筆の《慧可断臂図(えかだんぴず) 》を普通にプリントアウトしたものですが、続く3点は大胆に折ってあります。

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福田美蘭 《慧可断臂図 折かわり絵 (4 枚組)》インクジェット出力プリ
ント 2016年 高松市美術館蔵

一見、なんか変わった現代アート~。と思ってしまうのですが、福田さんの解説キャプションを読んでいくとみるみる凄さがわかってくる!

これは、4枚の絵を追っていくと、この絵が1枚で表そうとしていた場面、すなわち「禅宗の初祖・達磨が少林寺において面壁座禅中、慧可という僧が彼に参禅を請うたが許されず、自ら左腕を切り落として決意のほどを示したところ、ようやく入門を許された」というエピソードを紙芝居的に伝えてくれていることに気が付きます。

そして、更に驚愕するのは、その雪舟の絵を絶妙な箇所で折ることで、なんと、折った後の絵が、「振り返る達磨の顔」(2枚目)になっていたり、「感激のあまり頭が真っ白になる慧可」の後ろ姿になっていたりするのです。
折った後の図像もイメージできる福田さんの天才的図像認知力に感動~。

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右が「振り返る達磨の顔」

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右が「感激のあまり頭が真っ白になる慧可」

もう1つ感激した作品があったのでご紹介します。
こちらは福田さんの《虎渓三笑図(こけいさんしょうず) 》。
元ネタは、曾我蕭白の《虎渓三笑図》です。

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福田美蘭 《虎渓三笑図》 パネルにアクリル絵具 2020年

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曾我蕭白 《虎渓三笑図》 紙本墨画 1幅 安永期(1772-81)頃 千葉市美術館蔵

私は、少し前に曾我蕭白の《虎渓三笑図》を見た時に「虎」という字がタイトルにあったので、「虎はどこにいるのかな?」と思って一生懸命探したのですが、見つけられませんでした。
それもそのはずだったのです!!!なぜかというと、この場面で、「虎」は、「声」でしか登場しないのです!!!

ここでこの絵の場面の故事をご紹介。

虎渓三笑とは、廬山に住む慧遠法師を陶淵明と陸修静が訪れた帰り、慧遠法師が二人を送る途中、話に夢中になって「修行のため二度と超えない」ことにしていた虎渓を過ぎてしまい、数百歩過ぎてから「虎の吠える声を聞いて初めて」そのことに気づく。それで三人で大笑いしたというお話。

確かに橋の上に3人いるけど、大笑いしてるかわからないし、虎の声は見えないからわからない~!!!まあ、この絵を注文した知識人とその周辺は、わかったのでしょうけどねー。。。

ここで、福田さんの《虎渓三笑図》登場。

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クローズアップしてみると、大笑いしてる三人がいる!

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声だけしか聞こえない虎が、岩の形で表現されている!

今回、よくわかったのですが、伝統的な美術が難解でいやになってしまう理由の1つが、表そうとしている故事/エピソードを1場面だけで表現しようとしてるからなのですね。しかも、長い話の中から選び取った1場面には登場するはずのない前後の人や動植物を描くわけにはいかないから、余計にわかりづらい。
そこに表現されている限られた要素から故事や歴史をパッと思い出せる知識人だけがニンマリと楽しむ感じになってしまうのですねきっと。
そういう方は、自分の頭の中ではその前後の場面や言葉が映画のように鮮やかに浮かんでいるけど、それも私達には見えない。

でも、福田さんはそれをご自身の卓越した想像力とプロの画力で鮮やかに、そしてユーモラスに私達に披露してくれているのです。

ありがとう!!!

日本美術が好きな方、苦手な方、そしてもちろん福田美蘭さんのファンの方、みなさんにおすすめの展覧会です(^^♪

【展覧会概要】
会場:千葉市美術館(千葉県千葉市中央区中央3-10-8)
会期:2021年10月2日(土)〜12月19日(日)
入場料:一般=1,200円、大学生=700円

#日本美術 #福田美蘭 #千葉市美術館
#曾我蕭白 #虎渓三笑図 #慧可断臂図

菊池麻衣子 
【現代版アートサロン・パトロンプロジェクト代表、アートライター、美術コレクター】
東京大学卒:社会学専攻。 イギリスウォーリック大学大学院にてアートマネジメントを学ぶ。ギャラリー勤務、大手化粧品会社広報室を経て2014年にパトロンプロジェクトを設立。

【月刊誌連載】2019年から《月刊美術》「菊池麻衣子のワンデイアートトリップ」連載、《国際商業》アートビジネスコーナー連載
 資格:PRSJ認定PRプランナー
同時代のアーティスト達と私達が展覧会やお食事会、飲み会などを通して親しく交流する現代版アートサロンを主催しています。 美術館やギャラリーなどで「お洒落にデート!」も提唱しています。

パトロンプロジェクトHP:  http://patronproject.jimdo.com/
パトロンプロジェクトFacebook: https://www.facebook.com/patronproject/
菊池麻衣子Twitter: @cocomademoII

インスタグラム:https://www.instagram.com/cocomademois/

ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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